2007年1月12日(金)「しんぶん赤旗」

米軍侵略が招いたイラク「内戦」と分裂


 アナン国連事務総長(当時)は昨年十二月四日、BBC放送で、イラクの現状は「内戦よりもひどい」と述べました。

 同氏は昨年九月に国連安保理に提出したイラク情勢報告で次のように指摘していました。「避難民が増大していることが引き続き懸念される。これは主として共同体内の暴力の結果だが、同時に軍事作戦によるものでもある」。軍事作戦とは米軍の作戦を指します。

 「内戦」化のきっかけは、昨年二月に中部サマラで起きたイスラム教シーア派聖廟(せいびょう)爆破以来の宗派間抗争の激化です。それは同時に、「テロ掃討」の名で米軍がイラク治安部隊を引き連れて軍事作戦を展開、その治安部隊に宗派の民兵組織を組み込んで宗派抗争をあおってきた結果でもあります。

 米兵の死者は昨年十二月、開戦以来三番目に多い百十六人に達しました。死者総数も三千人を超えました。

 それ以上に、イラク人の死者はイラク保健省の発表で十万―十五万人とされます。避難民の数について安保理報告は昨年九月時点で三万家族、二十万人を超すとしていました。十月半ばの国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の発表では、百五十万人以上に達しました。

 その結果生じているのはイラクの分裂への動きです。石油資源の豊かな北部のクルド人地域と南部のイスラム教シーア派地域、資源のない中部のスンニ派地域の三地域への分裂です。

 首都をはじめこれまでスンニ派、シーア派が混在していた中部・西部では、暴力が激化、避難民が激増し、「住み分け」が起きています。

 昨年九月の世論調査でバグダッドに住むシーア派の80%が一年以内の米軍撤退を求めました。昨年一月の時点でシーア派の大半が「治安状況の改善」を米軍削減の条件としていたのとは大きな違いです(米誌『ニューズウィーク』)。

 英BBC放送は昨年末のフセイン元大統領処刑後、こう論評しました。

 「イラクは今、『不安定』の主要な輸出国だ。米主導の(イラク)侵略は中東のプールに大きな岩を投げ入れた。それはサダム・フセインが死んだ後も長い間この地域を洗う波を引き起こしている」

 ブッシュ政権は、「フセイン政権の大量破壊兵器の脅威」といううそと、「独裁政権の打倒による民主化」という口実で国際法無視の戦争を始めました。そのうそと虚構が白日のもとにさらされても、ブッシュ政権はなお「増派」という道に固執しています。(伴安弘)

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