2007年1月12日(金)「しんぶん赤旗」

ブッシュ演説 イラク増派

軍事的「勝利」に固執 泥沼化の道つき進む


 「新戦略」としてブッシュ大統領が十日のテレビ演説で打ち出したイラク増派計画は、「イラク戦略の変更」ではなく、米軍の占領政策の継続表明にほかなりません。

 ブッシュ大統領は、宗派間対立が激化するバグダッドの治安安定に「失敗」した原因は「兵力不足」にあるとし、米軍増派を強行する構えです。

 しかし、日本共産党の志位委員長が本紙新春インタビューで指摘したように、米国は「宗派間対立をテコにして占領統治をすすめるという一番悪いやり方をやってしまった。これがイラクを『内戦状態』といわれるところまで引き込みました」。宗派間対立を引き起こしているのは米軍の占領そのものです。

 侵攻開始から四年近くのイラクの現実が、軍事的対応では何も解決しないことを示しています。イラク国民の犠牲は数十万人にのぼり、米兵の死者は三千人を超えました。戦争による混乱は、イラクにテロリストをひきつけています。軍事掃討作戦への固執は、米国とイラクをますます泥沼に引きずり込むだけです。

 昨年十一月の米中間選挙での与党・共和党の敗北以来、米国ではイラク政策の根本的見直しを求める声がいっそう高まりました。

 ベーカー元国務長官ら共和・民主両党の有識者からなるイラク研究グループ(ISG)が十二月に発表した報告は、軍事一辺倒ではなく政治解決に着手する必要性を指摘。二〇〇八年三月までの米戦闘部隊の段階的撤退や、イランやシリアとの対話開始を提唱しました。

 今回のブッシュ演説は、この政治解決路線を拒否。「失敗の余裕はなく勝利しかない」とし、この期に及んでも、あくまで軍事的勝利の達成に固執しようとするものです。しかも、増派によって「いっそうの犠牲が必要になる」と開き直っています。

 さらに、イランやシリアによる「テロリスト組織」支援への対処に言及し、中東地域に新たな空母打撃群を派遣したことを表明しました。イラクでの軍事作戦を「対テロ戦争」の主戦場として強化するにとどまらず、同「戦争」を中東全域でさらに拡大する危険な姿勢を見せています。

 米国内では、ブッシュ大統領の増派計画に対し、反対の声が上がっています。

 世論調査(九日)では六割が増派反対を表明。十日には、これまでブッシュ政権に異を唱えてこなかった共和党のコルマン上院議員まで「バグダッドへの増派は米兵を危険にさらすだけだ。軍事対応では問題解決にならない」と反対を表明しました。

 ますます危険な路線に突き進むブッシュ政権。米内外でのいっそうの孤立化は避けられません。(ワシントン=鎌塚由美)


日本政府 増派を歓迎

どこまでもブッシュ追随

 米軍増派というブッシュ米大統領の「イラク新戦略」について日本政府は十一日、「イラクの安定化に向けた大統領の強い決意表明を評価したい」(塩崎恭久官房長官)、「米政府のさらなる努力として評価する。わが国は引き続き米国と協議、協力していく」(麻生太郎外相)などと絶賛しました。

 安倍晋三首相もブッシュ大統領から「新戦略」について事前に電話説明を受けた際、「米国の努力が効果的に進められ、良い成果を上げることを強く期待する」と高く評価しました。

 これは、米国によるイラク戦争と占領支配の大破たんが誰の目にも明らかなのに、あくまで軍事的対応にしがみつくブッシュ政権にどこまでも付き従おうとする、極めて異常な態度です。

 米国内でも国民多数がイラクへの米軍増派に反対。米議会で多数派の民主党も増派に反対の姿勢を明確にしています。昨年十二月には、超党派の「イラク研究グループ」(ISG)が二〇〇八年までの戦闘部隊撤退という方向を打ち出した報告書を出しました。

 ところが、日本政府は同報告書に対し「アメリカ政府の決定でも何でもない」(塩崎官房長官)と冷ややかな反応を示し、航空自衛隊のイラク派兵の半年間延長や、防衛省発足に伴う自衛隊海外派兵の本来任務化を推し進めてきました。

 米議会の承認すら得られる保証のないブッシュ「新戦略」への異常な追随は、今でも「イラク戦争は正しかった」とする安倍政権が、事態打開に向けた戦略的展望をいっさい持っていないことを示すものです。

 政府はすでに、今年七月に期限が切れるイラク特措法を一年間延長し、空自による武装米兵などの空輸をさらに継続する方針を固めています。

 現在、空自はC130輸送機三機と二百人の隊員を派兵し、クウェート―バグダッド―イラク北部のアルビルを結ぶルートを、週に四往復前後、飛行しています。ブッシュ大統領が発表した「新戦略」の“目玉”の一つは、米陸軍五個旅団(約一万七千五百人)のバグダッドへの増派です。「新戦略」が実施されることになれば、バグダッドへの空輸を定期的に行っている空自の役割は米軍の軍事作戦上いっそう大きくなることは必至です。

 このことは、出口の見えない泥沼のイラク情勢にさらに深く足を踏み入れることを意味します。

 日本政府内からもすでに「(空自は)イラクでの(米軍の)活動を支援する目的で行っているのだから、それが終わってもいないのに(日本に)帰るわけにはいかない。増派になれば、日本は撤退しにくくなる」(高官)と、派兵長期化を懸念する声が上がっています。(竹下 岳)


もどる
日本共産党ホーム「しんぶん赤旗」ご利用にあたって
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 TEL 03-3403-6111  FAX 03-5474-8358 Mail info@jcp.or.jp