2007年1月11日(木)「しんぶん赤旗」

多重債務者標的 銀行「おまとめローン」

「灰色金利」も「元本」に

「過払いないか まず確認を」 弁護士


 多重債務者をターゲットに、サラ金など複数の借金を「低利で一本化」する「おまとめローン」を販売する銀行に対し、金融庁が口頭で“指導”を始めています。顧客が、本来は過払い金請求の対象となる「灰色金利」を知らないままに契約すると、灰色部分も銀行ローンの「元本」に化けてしまう場合があるためです。


金融庁“注意”

 「あっちこっちの借金、まとめて一気に返せないかな」「ローン返済が負担のサラリーマンに朗報」「総額約百八十四万円軽減も!」

 こんな宣伝文句で東京スター銀行(本社・東京都港区)は二〇〇三年五月、おまとめローン「バンク ベスト」の販売を始めました。銀行が一括で業者に残高を返済し、利用者は月々、銀行に元本と利息を返済します。

 年利は13・5%―14・5%。「一般的な消費者金融(サラ金)とくらべ低利なので、月々の返済額が減る」と同銀行はメリットを強調します。

 しかし同銀行は契約時、顧客に灰色金利などの説明はしていません。すでに過払いになった人が知らずに契約すると、取り戻せるはずの灰色部分も銀行ローンの「元本」に含まれることになります。

 この商品は同銀行の主力ローン商品。初年度に二十七億円だった貸出額は、〇六年九月期に四百九十億円に達しました。

 従来サラ金業者が扱ってきたこの種のローンを近年、銀行が相次いで発売しました。現在は、同銀行や関西アーバン銀行などが扱っています。オリックス信託銀行の場合、「命が担保」と批判を浴びた団体信用生命保険に加入することが契約条件です。

 昨年十一月、金融庁は全国の銀行との定例の意見交流会で「おまとめローンの契約時には、過払い金返還ができるかもしれないことを、顧客に説明する必要がある」と、各行頭取に求めました。開会中だった臨時国会には、灰色金利撤廃を盛り込んだ法案が提出されていました。

 参院財政金融委員会では日本共産党の大門実紀史議員がこの問題について質問。山本有二金融担当相は「与信取引の説明につき適切に対応するよう金融機関に要請している」と答えています。

 同庁監督局銀行第二課は「法改正や灰色金利問題についての一連の報道で、世論の関心が高まったのを受けて注意喚起した」と話します。

 これを受け各社は「顧客に説明する文言や掲示方法を検討中」(東京スター銀行)、「一月中には客への説明を実施する」(関西アーバン銀行)などの対応をしています。

 高金利引下げ全国連絡会代表の新里宏二弁護士は「過払いを知らないまま、おまとめローンで金利が下がって安心してしまう人が多いのでは。まず過払いがないか確認を。契約後でも、サラ金に対する過払い金返還請求はできるので、弁護士や被害者の会に相談を」と話しています。


 灰色金利と過払い金 灰色金利は、利息制限法の上限金利(元本額により年15%―20%)を超える、本来は無効な金利。出資法の上限金利(29.2%)以下なら罰則がないため、サラ金など多くの貸金業者がこの間の金利で営業しています。灰色金利を約6年間払い続けると、利息制限法で計算した場合に借金がゼロになるケースが多い。その後は「払い過ぎ」の状態になるため、過払い金返還を求める訴訟が全国で相次いでいます。


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