2007年1月9日(火)「しんぶん赤旗」

主張

残業代ゼロ制度

企業犯罪の合法化を許すな


 一日八時間を超えて働いても残業代が出なくなる「ホワイトカラー・エグゼンプション」導入のための法制化をめぐり、柳沢伯夫厚生労働相は、今月二十五日開会予定の通常国会への「法案提出を変えるつもりはない」とのべました。

背景に財界の要求

 新たに導入が検討される制度は、事務・販売・技術・管理に従事する「ホワイトカラー」労働者が対象です。現行労働基準法で規制されている一日八時間、週四十時間の原則や、休日、休憩、深夜労働の規制から、完全に除外(エグゼンプション)するというものです。何時間働いても残業代がいっさい払われなくなるこの制度の導入に、労働組合をはじめ国民から強い反対の声があがっています。

 国民世論を反映して、与党の一部からも慎重論が出ているのに、柳沢厚労相は、残業代ゼロ制度の導入方針を変えないというのです。その背景には日本経団連など財界との抜き差しならない関係があります。

 昨年十二月十一日、経団連幹部との懇談で柳沢厚労相は、財界のホワイトカラー・エグゼンプション導入の求めにたいし、「対象範囲が問題になる。その場合、給与水準が裏打ちになる」とのべています(「日本経団連タイムス」一月一日号)。厚生労働省の労働政策審議会が報告書をまとめる(十二月二十七日)前に、すでに制度導入の条件まで約束しているのです。

 もともと、導入の条件に給与水準を持ち出したのは日本経団連です。二〇〇五年六月に年収四百万円以上を対象範囲とするよう要求していました。審議会の報告書は、金額こそ明示しませんでしたが、対象範囲を年収で定めるとしました。

 政府は、財界いいなりで事を運ぶ一方で、国民の批判の広がりを受けて、さまざまないいわけをしています。「超過勤務をただにするというねらいではありません」(柳沢厚労相の昨年十二月二十二日の記者会見)と言い出しました。しかし、この説明も財界仕込みです。日本経団連も「時間外割増賃金」つまり残業代の「抑制を意図したものではない」といっています(二〇〇七年版経営労働政策委員会報告)。

 これはホワイトカラー・エグゼンプション制度が「残業代ゼロ制度」であることが明らかになるにつれ、政府や財界が弁解せざるをえなくなっていることをしめしています。

 一方で、国民に“理解を得やすい”理由がいるとして持ち出してきたのが、「仕事と生活との調和」=「ワーク・ライフ・バランス」論です。

 仕事と生活の両立支援は、何よりも労働時間の短縮や休暇制度の充実が基本になるべきものです。ところが、財界は、「ワーク・ライフ・バランスの基本は…単に労働時間や休暇取得に関することではなく、企業労使の新しい自律的な働き方への挑戦である」というのです。

 長時間労働を規制する考えはまったくありません。

ご都合主義のごまかし

 もともと、「仕事と家庭の両立支援」は国民の強い要求であり、昨年の男女雇用機会均等法改正のさいにも明記することが論議されました。しかし、財界の反対に政府が屈して、改正均等法には盛り込まれませんでした。政府や財界の持ち出す「ワーク・ライフ・バランス」論は、ご都合主義のごまかしにすぎません。

 サービス残業という企業犯罪を合法化する残業代ゼロ制度の導入を撤回するよう、強く求めます。


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