2007年1月5日(金)「しんぶん赤旗」
民主党多数の米新議会開会
コーランで宣誓へ
米初のイスラム教徒議員
米議会で初のイスラム教徒の議員となる民主党のキース・エリソン下院議員(ミネソタ州選出)は四日の就任式で、聖書の代わりにイスラム教の聖典である「コーラン」を用います。保守派は猛反発するものの、同氏が議会図書館から借り受けたのは、米独立宣言の起草者で第三代大統領のトマス・ジェファソンが所有していたコーランです。
議会の初めに行われる就任式は、全議員が議場で右手を挙げて宣誓する公の式典と、各議員が個別に行う式典があります。個別の式典のやり方に規定はなく、これまで多くの議員が聖書に手を置いて宣誓する方式をとってきました。エリソン氏は聖書の代わりにコーランを使う意向を表明していました。
それに猛反発した一人が共和党のバージル・グード下院議員(バージニア州選出)。先月、地元支持者に送った書簡で「移民に厳格な政策をとらなければ、次の世紀に米国はますますイスラム教徒が増える。そうした政策は、アメリカ合衆国の伝統的な価値観や信念を守るために必要だ」と述べていました。
ところが、エリソン氏の祖先は合衆国建国前の一七四一年には米大陸に移住しています。同氏がイスラム教徒になったのも大学生のときで、それまではキリスト教徒でした。
グード氏からの筋違いの批判にエリソン氏は「多様性こそがこの国の強さだ。あらゆる宗教と文化の人たちがいるのはすばらしいことだ」(CNNテレビでのインタビュー)とやんわり切り返しました。
三日付の米紙ワシントン・ポストによると、エリソン氏が使うコーランは一七五〇年代に出版された英訳版で、ジェファソンの蔵書の大半を失った一八五一年の火災でも焼失しなかったもの。同氏の報道担当者は「キースは、信教の自由という建国の父の信念だけでなく、憲法そのものも尊重している」と同紙にコメントしています。
一方、ジェファソンの生誕地アルベマール郡は偶然にもグード氏の選挙区。「史上最も偉大なバージニア州民の一人が所有していたコーランを使うことをどう思うか」との同紙の問い合わせに、グード氏からは「返答なし」とのことです。(ワシントン=山崎伸治)