2006年12月31日(日)「しんぶん赤旗」
欧州 ユーロ導入から5年
3億人が単一通貨圏に
物価上昇に不満も
スロベニアも参加へ
【パリ=浅田信幸】欧州連合(EU)の共通通貨ユーロは二〇〇七年一月一日、導入から五年が経過します。同日、二〇〇四年にEUに加盟した十カ国の中では初めてスロベニアがユーロ圏に加わり、計十三カ国、三億人が単一通貨圏で暮らすことになります。
ユーロは国際的な基軸通貨としての地位を高めています。欧州中央銀行(ECB)の発表によると、二十二日時点での流通額は、前週より2%増えて六千二百八十億ユーロ(約八千二百三十億ドル)となり、同時期の米ドルの八千百三十億ドルを初めて上回りました。
中国人民銀行は十一月、保有する外貨に占めるドルの割合を減らし、ユーロを増やすと表明。中東産油国のカタール、アラブ首長国連邦などの中央銀行も、ドル以外の比重を高めています。
一方、一般市民の生活面では、ユーロ圏内の旅行で通貨の交換が必要ないというありがたみを実感する半面、不満もあるのが実情のようです。
欧州の世論調査ユーロバロメーターが年末に公表したところでは、ユーロ圏十二カ国の市民のうち、共通通貨の導入が「全体として有益」と判断する人は48%にとどまり、導入初年(二〇〇二年)秋の調査の59%から大きく後退。他方で「物価の上昇を招いた」との不満は93%の高率に達しました。
仏フランなど旧自国通貨との関係で、日常生活上ユーロを使用することに「何の困難も感じない」人は59%と昨年比で6ポイントの上昇。着実にユーロが定着しつつあることをうかがわせますが、依然として41%が何らかの「困難を感じる」と回答しています。
欧州委員会のアルムニア経済・通貨担当委員は二十八日、ユーロ懐疑論に反論して「多くの国にとって、インフレと金利がこれほど低く、長期にわたることはかつてない」とユーロ導入の成果を絶賛しました。
ユーロ 欧州連合(EU)の共通通貨。日常的な使用の開始は二〇〇二年一月一日で、当時のEU十五カ国中十二カ国(アイルランド、イタリア、オーストリア、オランダ、ギリシャ、スペイン、ドイツ、フィンランド、フランス、ベルギー、ポルトガル、ルクセンブルク)が導入。ユーロの採用は累積債務、財政赤字、インフレ率の三つで基準があり、また通貨主権放棄への反発などからイギリス、スウェーデン、デンマークが未導入。三十日現在の為替レートは一ユーロ=約百五十七円。

