2006年12月24日(日)「しんぶん赤旗」

「近未来通信」詐欺商法

悪徳業者見分けられない

事後検査名ばかり

人員削減で追いうち


 IP電話会社「近未来通信」事件は、電話という公益事業を舞台にした“巨額詐欺”へと発展しています。それとともにわき上がる「同社の詐欺商法は、なぜ放置されたのか」という疑問―。そこには、国の「規制緩和」と「構造改革」路線が生み出したひずみと矛盾がありました。(近未来通信取材班)

 出資者三千人、出資金四百億円―。近未来通信の被害は、北海道から九州まで全国に広がり、日を追うごとにその悪らつな手口が明らかになっています。

 同社は、「電話の利用料から配当する」と虚偽の説明をし、個人投資家などから出資を募りました。実際は、電話利用に伴う通信料は売り上げの2%足らず。配当は、ほかの投資家から得た資金でまかなう自転車操業でした。投資家が新たな投資家を開拓すると手数料を出すなど、「マルチ商法」まがいのことまで行っていました。

 “虚業”をつづけてきた同社の設立は一九九七年。名目は、電気通信事業者。総務省の監督下にあります。しかし、財務状況、ユーザー数などの運営実態について、国は参入時も参入後もノーチェック。何をやっているのか、どんな業者なのかも分からない、“野放し”の状態が最近までつづきました。

 こうした状況を許したのが通信分野の「規制緩和」です。国は八五年に電電公社を民営化。度重なる規制緩和で、参入時に国が業者を厳しくチェックし許可を出す「許可制」から、書面を届け出れば原則、誰でも参入できる「届け出制」へと制度を変更しました。事前チェックのかわりに、参入した業者を監視し、トラブルには対応するという「事後チェック」体制を強化するというのがうたい文句でした。

 しかし、「『事後チェック』にあたる業務は何か」という本紙の問い合わせに、総務省は「届け出を受け付けること。以上です」と回答。「問題があったら対応する」といいますが、検査に入ったのは近未来通信が初めてです。

 総務省の出先機関である総合通信局の職員も、「書類の書式がそろっていれば、受理せざるを得ません。いってしまえば、通信事業者になろうと思えば誰でもなれます。そのうち、どれが悪徳業者かを見分けることはできません」と率直に語ります。

 「規制緩和」による業者増加とあわせ、「構造改革」路線のもとでの公務員削減も監督体制のもろさに追いうちをかけています。総務省と総合通信局あわせて、この五年間で約百人の職員が減らされています。

 一方、インターネットや携帯電話などの情報通信分野は急速に拡大。職員不足と長時間・過密勤務が慢性化しています。「出会い系サイト」や「ワンクリック詐欺」などの問題業者も十分に監視できない状況と、総務省職員はいいます。

 総務省の職員などでつくる全情報通信労働組合(全通信)の大谷啓二委員長はこう訴えます。

 「規制緩和『万能論』の弊害です。人員を増やさないかぎり、監督機能は働かない。国民に責任がもてる監督機能を果たせる人員の確保は急務です」


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