2006年12月18日(月)「しんぶん赤旗」

英 情報操作でイラク参戦

外交官証言で疑惑浮き彫り


 【ロンドン=岡崎衆史】イラクの大量破壊兵器保有を理由に同国攻撃に加わった英国が、実際には保有していないことを知りながら参戦のための情報操作を行った―。英下院外交特別委員会が十五日に公表した英外交官の証言が、イラク参戦をめぐるブレア政権の情報操作疑惑を改めて浮き彫りにしました。与野党政治家からは徹底調査を求める声がでています。


 外交委が発表したのは、イラク開戦前の一九九七年十二月―二〇〇二年六月までニューヨークの国連本部で英外交団の一等書記官としてイラク大量破壊兵器問題や安保理決議交渉に加わったカーン・ロス氏の証言です。

深刻にとらえず

 ロス氏は、(1)イラクの生物・化学・核兵器保有(2)イラクとテロ組織のつながり(3)近隣諸国や米英両国を攻撃するイラクの意図―について、情報や証拠がなかったことを明らかにした上で、「私の任期中、イラクの大量破壊兵器が英国やその利益に脅威となると英政府が判断したことはなかった。担当者の間では、脅威は効果的に封じ込められてきたと広くみなされていた」と指摘。英政府自身がイラクの大量破壊兵器問題を深刻にはとらえていなかったことを示しました。

 同氏はまた、イラク政権に大量破壊兵器についての査察の受け入れを迫り、制裁を強化する提案がなされたにもかかわらず、「これらの提案は受け入れられなかった」と強調。米英両国が戦争以外の道を考えていなかったことを示唆しました。

 証言はもともと、イラク開戦をめぐる情報操作問題を調査する英独立調査委員会(バトラー委員長)で行われたものですが、公務員の守秘義務違反に問われる恐れがあるとして、非公開とされてきました。

理由が不明瞭に

 ロス氏は〇四年、違法なイラク戦争への英国の参戦を批判し、外務省を辞職しています。

 証言の公開を受け、与野党の政治家が英メディアに登場し、徹底調査を要求。与党・労働党のアラン・シンプソン議員は、「戦争の背後の不正を最も深刻に暴露したもの」と指摘。メージャー前首相(最大野党・保守党)は「開戦について知れば知るほど、理由が不明瞭(ふめいりょう)になる」として包括的な調査実施を求めました。

 英下院は来年一月、テーマをイラク問題に絞った全体会議を予定しています。


もどる
日本共産党ホーム「しんぶん赤旗」ご利用にあたって
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 TEL 03-3403-6111  FAX 03-5474-8358 Mail info@jcp.or.jp