2006年12月6日(水)「しんぶん赤旗」

暴行米兵に終身刑

現地位協定下で初

主権論議の高まりが背景に

フィリピン


 フィリピン人女性をレイプしたとして起訴されていた米海兵隊兵長ダニエル・スミス被告(21)にフィリピンの裁判所は四日、終身刑を言い渡しました。フィリピン国内での米兵の犯罪で有罪判決が出されたのは、上院が一九九九年に「訪問米軍の地位に関する協定(VFA)」を批准して以来、初めてです。

 今回の判決の背景には、事件をきっかけに、米国との軍事協定のもとでの「主権とは何か」をめぐる国民的な論議の高まりがあります。

 事件は昨年十一月一日、ルソン島中部オロンガポ市の旧スビック米海軍基地跡地、スビック自由貿易港内で起こりました。

 被害女性(23)の告発で地元の地方裁判所が、当時、米比合同軍事演習に参加するためフィリピンに来ていた沖縄駐留米海兵隊員六人に召喚状を発行。昨年末、そのうち四人を暴行罪で起訴しました。

 しかし、米国側が四人の身柄引き渡しを拒否したため、国民のなかに米国の「フィリピンの主権無視」への怒りと抗議が広がりました。今年一月、上下両院の外交・国防の合同委員会でつくるVFA監視委員会は、政府に協定破棄を米国に通告し、見直し交渉開始を求める決議案を採択。その審議が現在も上下両院で続いています。

 こうしたなかで米兵四人はマニラの米大使館で身柄を保護されたまま、裁判がおこなわれました。

 裁判でスミス被告は、「自分の行為は相手の合意のもとにした」と主張しました。しかし、マニラ首都圏マカティ地方裁判所は、被害女性の訴えを全面的に認め、被告に最高刑の終身刑(最長四十年の禁固刑)と賠償金十万ペソ(約二十三万円)の支払いを言い渡し、他の三人は「証拠不十分」を理由に無罪としました。

 判決後、被告は、マカティ市内の拘置所に送られました。

 VFAは、一九九二年の米軍全面撤退後にフィリピンでの大規模な合同軍事演習を再開するために結ばれ、演習参加の米兵の地位保護が目的です。

 被告側の弁護団は控訴する方針で、米大使館での被告の保護継続を求めており、米比両国が協議するといわれます。

 今後の両国政府の対応や議会での論議、国民の運動が注目されます。(宮崎清明)


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