2006年12月4日(月)「しんぶん赤旗」

ゆうPress

どう付き合う? SNS

ソーシャル・ネットワーキング・サービス


 最近なにかと話題の「SNS」や「ミクシィ」。利用者が増える一方で、トラブルも増えています。「どの程度かかわったらよいものか」と、一度は悩んだ人も多いのでは…。上手な付き合い方を考えてみました。(塚越あゆみ)


 SNSは、ソーシャル・ネットワーキング・サービスの略。友人の輪を広げるために便利な機能を備えたサイトの総称です。米国発で、二〇〇四年に日本でも「ミクシィ」(別項)や「グリー」などが次々スタート。有料のビジネス特化型や不登校者向け、医療従事者限定、ジョギング愛好家向け、育児関係など形態はさまざまです。

 日本のSNS人口は三月に七百万人を突破(総務省調べ)。前年度の六・五倍です。会員制という「安心感」から特に若者の間に一気に広がりました。

 ほぼ毎日、多い時は一日六回「日常で思ったこと」を日記に書くという女性(21)は、「面識のない同じ年の子が今どんなことを考えているか聞けるし、自分が知らないことを学べる」と言います。


トラブル増加 「依存症」も

 「ミクシィをやらないと仲間はずれ感がある」と言う人たちも少なくありません。ミクシィ上の友人を、登録限度の千人つくろうとめざす女性(21)は、友人を増やす理由を「さみしがり屋だから」とも語ります。

 「普段の友達と別に、ミクシィで友達がたくさんできれば楽しい。本音を出さずに、ふざけて日記を書いてもみんなコメントしてくれるんです。自分の存在をバラさずに、別の自分をつくって楽しんでいる面もあるのかも。夜はPC(パソコン)、昼は仕事中にケータイで。一日三時間は見てるかな」

 依存症も問題になっています。「日記」や「コミュニティ」内でのやりとりに没頭し、毎日何度も書きこみをしないと落ち着かず、やがて中毒や依存症という状態になる―。ミクシィ経験者の女性はあるサイトでそう証言しています。

 利用者が増えるにしたがって、トラブルも増えています。詐欺事件やプライベート写真の流出。書き込んだコメントが災いして物議をかもすこともしばしば。海外ではすでに、SNSを悪用した脅迫事件や女性への暴行事件が起きています。

 日本でも最近、アダルト版や有料の高級サイトも登場しました。

市民運動広げる活用例

 SNSをうまく活用している例もあります。市民運動や就職活動、離れた友人との再会。中にはSNSで出会って結婚したカップルもあります。

 「ネットは好きじゃないし、ネット上のコミュニケーションは信用していない」という東京のリサイクルショップ店長(32)。中古家電の販売が禁止になるPSE法問題に関心があって参加していたミクシィの同法反対“コミュ”でデモを呼びかけたり、議論もしました。

 今年の三月、コミュニティ内で同法に対し、やり場のない不満が渦巻いているのを見るうち、「じゃあ何かやろうかな」とデモを計画。コミュニティの参加メンバーに呼びかけました。

 「SNSはビラがわり。五千枚以上の“ビラ”を、関心のある人に絞って一瞬でまけるということです。ある程度『顔』が見えるから、発言に説得力もあります。せっかくのコミュニケーションの場があるのだから、一人で先走らずに、みんなで話し合いながら作り上げればうまくいくのでは」とアドバイスします。

 就職活動でも役立ちます。大学にある企業別の「OB名簿」をもとに目当ての企業で働く先輩を訪ね、仕事内容や職場の雰囲気を聞くことができるOB訪問は、企業が名簿の提供を渋るようになり年々困難になっています。

 そこで無数にあるSNSの就職関連コミュニティでOB訪問を受け付けてくれる人を探すのです。


 ミクシィ 二年前に始まったサービス。無料会員制で会員数約六百万人といわれています。十八歳未満は閲覧不可。友人からの「招待」で会員になれます。サイト内の自分のページには自己紹介欄や自分の友人を紹介する欄があります。お互いの「日記」を読んでコメントしたり、サークル的「コミュニティ」では、同じ趣味や考えを持つ人が議論や交流をします。


人間関係の難しさ 背景に

横浜市立大学教授中西新太郎さん

 分断社会や互いが見えない社会、集団づくりの苦手な世代の誕生…。若者の中にSNSが広まる背景には、現実社会の人間関係の難しさがあり、現代の社会構造も深く影響していると考えられます。

 昔の若者にはマンガや歌手などみんなで話せる話題がありました。流れが変わったのは消費文化が成熟した一九九〇年代。趣味や文化、生活や働き方までがバラバラに切り離され、「みんなで一緒に何かする」ことがなくなります。共通の話題が減り、話の合う者同士だけが携帯でネットワークをつくる。本音が言えない環境で、若者同士が共通の場をつくることは今まで以上に困難になりました。

 そこへ登場したのがSNSです。同じ趣味や考えの人が簡単に見つかり「友人」になれる。「日記」では遠慮なく本音が書ける。2ちゃんねる(匿名掲示板)と違い、SNSは「半分顔の見える安心感」もある。だからこそ離れられなくなるのです。

 便利な機能で友人づくりの“おぜん立て”をしてくれる半面、頼りすぎると現実社会で友人づくりが難しくなる恐れもあります。コミュニケーション力を養う上で大事なのは友人づくりの“過程”です。

 SNSにストレスを感じるのはかかわり方を考え直す時のサイン。なぜ夢中になるか、原因がわかれば解決策は見つかります。まず職場やサークルなどで本音を出せる場をつくることが大切です。

 とくに会員数の多いSNSは、「顔の見える安心感」が崩れ、ネット特有の事件も起こり始めています。自分の顔が数百万人の中に見えていることを考え、現実との間に誤解が生じないようネット上でもきちんとコミュニケーションを取ることが重要になっています。


お悩みHunter

英語を生かす仕事へ留学したいけど不安

  就職して四年になります。仕事は営業です。一日中、一人で営業先を回ることが多く、一緒に入社した同僚はみんな辞めてしまいました。いま、後輩から頼られる位置にいますが、仕事の相談をできる人がいません。最近は、英語を学ぶために英語圏に留学したいと思っているのですが、もどってきても英語を生かせる仕事がみつかるか不安です。(女性、神奈川県)

チャレンジしてみては

  いまのお仕事は、経験もあってこなせていると思いますが、自分ひとりで仕事を抱え込み、先が見えずにめいっているのではないでしょうか。しかし、自分で展望を切り開くために新しいことに挑戦しようとする姿勢は、とても前向きで共感できます。

 留学は語学以外にも、その国の生活や文化に触れることで大切な勉強になると思います。私も学生時代にドイツに二カ月ほど滞在しました。いろいろな国の人と交流し、外から日本を眺めることも、とても重要だと感じました。

 そして、いままでにない経験を積むことで、自分の将来についてもっと幅が広がると思います。留学する前から、戻ってきた後のことを考えて行動に移さないのはとてももったいないことです。

 留学するにはお金も必要だと思いますが、いま行く気になっているのでしたらすぐ行動に移してもいいと思います。こういう一大決心は、お金の問題よりもやる気の問題の方が大きいからです。

 いまは、就職が非常に困難な時代ですが、一生懸命に勉強すれば必ずいい機会にめぐりあえると思います。大変かもしれませんが、チャレンジしてみてはどうでしょうか。応援しています。


第41代日本ウエルター級チャンピオン 小林 秀一さん

 東京工業大学卒。家業の豆腐屋を継ぎながらボクシングでプロデビュー。99年新人王。03年第41代日本ウエルター級チャンピオン。


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