2006年12月1日(金)「しんぶん赤旗」

いじめ克服 みんなの力で

“つらかったろう”息子抱いた

岩手・父親からの体験記

クラスに手紙 全員が返事 早く学校に出てきて…


 「学校へ行きたくない」と泣く息子。いじめられていることを初めて知った父親の驚きと悔しさ…。岩手県の四人の子どもを持つ父親(49)から、中学二年の長男と一緒にいじめを克服した体験記が赤旗編集局に寄せられました。「たった一家庭の出来事かもしれません。一人でも参考になる方がいたらと思いペンをとりました」と―。要旨を紹介します。


 私の息子は、今年の春(中一のとき)、いじめにあっていました。ある朝、息子は茶の間で涙をうかべ、腰を落としていました。「どうした?」と聞くと、下をむいたまま首を振るだけです。

 具合が悪いのか、朝ご飯を食べたくないのか、学校で何かあったのか、などと聞いても目から涙がポタポタと落ちるばかり。ねばって、聞き出した言葉が「学校に行きたくない」でした。

 理由も分からず、出勤時間も迫っている中で、父親としてどう対応すればよいか、分かりませんでした。涙を流すくらい傷心している状況を受けとめました。私は「行きたくないんだったら休みな。お父さんだって仕事に行きたくない日はときどきあるんだから」と話してやりました。

 そのうちに、息子は「みんなから“臭い”と言われている」と話しました。後で分かったのですが、数人から「臭い」と言われ、それがクラスを超え、隣のクラスまで広がったようです。男子も女子も、息子のお尻などに鼻を近づけ「臭っー、ゲロが出る」と言ったり、掃除当番は息子の机やいすに触らずにけって移動させていたようでした。

休ませます

 私は、息子を「休ませます」と、学校に電話しました。夕方、担任の先生が自宅を訪ねてくれ、息子と三人で話しました。先生は息子に「大変だと思うけど明日、学校に来てちょっと勇気を出して、みんなの前で話さないか」と言いました。

 私は先生を外に連れ出し、怒りを感じながら言いました。「そんな勇気があるんだったら、こんなふうにはならないでしょう。先生! それは先生からの『いじめ』だよ」。先生は「すいません」と言って謝り、その日は帰りました。

 次の日の夕方、先生が訪ねて来ました。クラスの生徒全員(約三十人)に、いじめの状況を書かせたようで、「迷いましたが、読んでほしいと思いました」と渡して帰りました。

 私は一枚一枚読んでは息子に渡しました。「私がやりました。本当は臭くないのについ」「私は何もしていません。“やめたら”と思ったけど言えない自分が情けなかった」「つらいかもしれないけど早く学校に出てきてください。クラス全員で二年生になろう」…

 クラス全員の文章を読むのに一時間以上かかりました。悔しさ、情けなさ、怒り―そんな思いでいる息子を知らなかった…。私は声を出さずに泣くのが精いっぱいでした。

 「こんなんでお前、今まで、よく学校に行っていたなぁ。偉い!」

 泣きながら、私は息子を抱きしめていました。その後、帰宅した共働きの妻も、読んで泣き崩れていました。

手紙を書いた

 夜、私は一年A組のみなさんへ手紙(別項)を書きました。十三―十四歳の子どもに「根っからのワルはいないはず」と考えたからです。翌日の朝一番、学校を訪ね、手紙を担任の先生に渡しました。

 その夜、先生が来てくれました。なんと、クラス全員からの「○○君のお父さんへ」の手紙を三十通も持ってです。「本当は怒りでいっぱいのはずなのに、私たちのことを思ってくれて…」などとありました。

 その手紙を読んでまた涙が出ました。そして、息子は学校に行くようになりました。

 いま騒がれているいじめ問題。「いじめられている君! もうちょっと勇気を出して…」と言う人もいます。(場合によってはそうかもしれませんが)いじめの中心人物に加担してしまう人にこそ“勇気”が必要ではないでしょうか。


父親の手紙「一年A組のみなさんへ」

 みなさんが書いた息子への思いを、すべて読ませてもらいました。驚いたことが三つあります。

 一つは、息子はつらかっただろうなという気持ち。一つは、それでも学校へ行っていたんだと立派に思ったこと。もう一つはA組っていい仲間じゃないか、とうれしくなった気持ち。読んでいる途中から涙が止まりませんでした。

 私は息子に謝りました。「そんなことを言われたくらいでくよくよするな」と思う気持ちがあったからです。私はみなさんを責める気持ちはまったくありません。

 集団は、間違えれば人を傷つけてしまいます。リーダー的な人間が言ったことは、「やらない」とはなかなか言えないものです。私はそれを「集団的法則」と言っています。A組のみなさん、その法則は友だちの良いところを発見する方向に使ってください。

教育ファクス

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