2006年12月1日(金)「しんぶん赤旗」

主張

防衛「省」法案衆院通過

憲法踏みにじる悪法は許さぬ


 今度の国会で、教育基本法改悪案と並ぶ重要法案とされてきた防衛「省」昇格法案が、わずか十七時間審議されただけで衆院安保委員会で自民、民主、公明などの賛成で可決、衆院本会議でも可決されて衆院を通過、参院に送られました。重大な法案の審議にもかかわらず、わずかな時間だけで採決を強行した自民・公明の与党と、徹底審議を求めるとの野党四党の合意にも背いて採決に応じ、法案に賛成した民主・国民新両党の責任は重大です。

海外派兵が本来任務に

 同法案は、防衛庁を「省」に昇格させる設置法「改正」案と、海外派兵を自衛隊の「本来任務」に格上げする自衛隊法「改正」案をセットにしたものです。日本共産党の志位和夫委員長は、「自衛隊の主たる任務に海外派兵活動を含めることが一番の眼目であり、そのために従来の『庁』を『省』にするというのが法改悪の核心部分だ」と批判しています。

 日本の憲法は、戦前日本がアジアの国々を侵略し、近隣諸国と日本国民に大きな被害を与えたことへの反省に立ち、第九条で戦争を放棄し、戦力は持たないと決めています。歴代政府はアメリカの求めに応じ、再軍備と軍拡を進めてきましたが、自衛隊が憲法違反の軍隊であることがあまりに明白なので、「最小限度の実力組織」だとか、「日本防衛」が任務だと批判をかわしてきました。

 海外での自衛隊の活動が自衛隊の「本来任務」とは切り離され、防衛庁が独立した「省」ではなく内閣府の外局のひとつとして権限が制約されてきたのも憲法上の制約を無視できなかったからです。

 今回の改悪は、そうした制約を踏みにじり、海外での活動を堂々と自衛隊の「本来任務」とし、そのためにも防衛庁を「省」に昇格させて、予算の要求や政省令の決定ができるようにしようというものです。自衛隊の性格そのものを「自衛隊」から「海外派兵隊」に転換し、防衛庁の権限を大幅に拡大することになります。まさに政府が説明してきた自衛隊についての憲法解釈を覆し、憲法そのものを踏みにじるものです。

 政府は国会で法案のこうした重大な問題を指摘されても、まともに答えることができません。三十日の衆院安保委員会では、日本共産党の赤嶺政賢議員が歴代政府は自衛隊の任務を「日本防衛」に限定してきたのではないかと質問したのに対し、久間防衛庁長官は「基本的にはそういうことだ」と答弁。法案が政府の憲法見解を逸脱しないのかと追及したのには説明ができませんでした。

 国民にまともな説明もできない法案は撤回し、廃案にするのが筋です。政府がそれを行わず、審議が不十分なまま成立を押し通そうとするのは、憲法と主権者の意思を二重三重に踏みにじるものです。

狙いは「戦争できる国」

 政府がそこまでして、しゃにむに同法案の成立を目指すのは、自衛隊が海外での活動を拡大し、アメリカの戦争を支援するのをアメリカが求めているためです。海外活動の「本来任務」化は、自衛隊がアメリカとともに海外での戦争に参加し、日本が海外で「戦争できる国」になるための危険な企てです。

 世界では、海外で軍事力を振り回すアメリカのやり方は孤立を深めています。日本が海外でアメリカとともに「戦争できる国」になることを、日本国民も、アジアの人々も望んではいません。憲法にもとづいて世界の平和に貢献するには、危険な法案を参院で廃案にすべきです。


もどる
日本共産党ホーム「しんぶん赤旗」ご利用にあたって
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 TEL 03-3403-6111  FAX 03-5474-8358 Mail info@jcp.or.jp