2006年11月29日(水)「しんぶん赤旗」

「郵政選挙」は何だったのか

自民党 「復党」問題

国民よりカネと票


 安倍晋三首相は、郵政民営化「造反組」の衆院議員十一人について二十七日、復党を認めました。「郵政選挙」と銘打って、民営化の是非を唯一の争点として押し出して大勝した自民党が、わずか一年余で民営化反対の票までのみ込んだ形です。「政党にとっての倫理とはなにか」(日本共産党の市田忠義書記局長)が問われています。


有権者だましだった

 二十八日付の各紙は、十一人の復党了承を「昨年の選挙の意義を根本から覆すことになりかねない」(「日経」)、「郵政解散すら有権者向けに演出した芝居だったと言われかねない」(「毎日」)と批判しています。

 それもそのはず。昨年の総選挙で、自民党は「郵政解散」「郵政選挙」と称し、衆院本会議で反対票を投じた議員は公認せず、対立候補まで送りこみました。それを「刺客」と称し、当時の小泉首相を先頭にした「劇場型選挙」で二百九十六議席を得ました。今度の“復党劇”はこの議席が国民だましによるものだったことを示しています。

 小泉首相は「自民党公認候補すべて郵政民営化賛成だ」とアピール。首相の「偉大なるイエスマン」を自称した武部勤幹事長(当時)は「刺客」候補の応援に奔走し、「なぜ郵政民営化が改革の本丸か、明確に訴えることのできる候補者を選ばなければならない」と訴えました。

 当時、武部氏は「造反組」に対し、「国民からみれば、公約っていったいなんだろうと、それが国民の大きな不信になっている」と非難していました。これはそっくりそのまま今の自民党にはねかえってきます。

来年の参院選目当て

 民営化「反対」議員の復党は、来年の参院選をにらんだ「票とカネ」が狙いです。

 復党した十一人のうち八人までもが、自民党が最重点とする参院選での「一人区」と選挙区が重なります。しかも、復党議員は「刺客」を送りこまれてもなお、小選挙区で勝ちぬくなど固い支持基盤をもっているとされ、自民党としてのどから手がでるほど協力がほしいのです。

 また、十一人が復党することで、自民党への政党助成金が二億五千万円も増えることが明らかになっています。

 「選挙に有利なら理屈はいかようにもつく。なんとも旧来型の自民党らしい決着」(「朝日」二十八日付社説)です。

 昨年の総選挙で、小泉首相は「民営化賛成でなければ公認しないと、自民党は大きく変わった」(昨年八月二十日、神戸市内)とアピール。「古い自民党とたもとを分かった」(武部幹事長)とも訴えていました。これも国民をあざむくための方便だったといわれても仕方ありません。

問われる首相の責任

 安倍首相は、内閣支持率の低下などを受け、「決して古い自民党に戻ることはない」と弁明に必死です。しかし、昨年の総選挙では幹事長代理として「争点は郵政民営化に賛成か反対かだ」と叫び、「造反組」非公認を「改革の覚悟」を示すものだと強調していました。その「造反組」議員の復党をあっさり認めたのは有権者への背信そのものです。復党にいたる対応を中川秀直幹事長に丸投げしたことで、党総裁としての指導力も問われています。

 国民は「参院選で勝つためなら、“なんでもあり”の党だ」(市田氏)ということを見抜いています。だからこそ、各種世論調査で、復党反対が六割を占め、内閣支持率も「毎日」14ポイント減、「日経」9ポイント減と軒なみ低下しているのです。(藤田健)


昨年の総選挙で自民党は郵政民営化をどう訴えたか

 小泉純一郎首相(当時)

 自民党は変わった。変わりつつあるんです。…今度ははじめて自民党として「郵政民営化」賛成の候補者しか出していない。(2005年9月4日、東京都内)

 今回私はあえて自民党の支持基盤を壊してでも国民全体のことを考えればこれは避けられない改革だということで、自民党公認候補者すべて郵政民営化賛成だという人たちしか公認していない。(同8月30日、NHKインタビュー)

 民営化賛成でなければ公認しないと(自民党は)大きく変わった。…郵政民営化賛成の方、どうか自民党を支援いただきたい。(同8月20日、神戸市内)

 安倍晋三幹事長代理(当時)

 選挙の争点は明確だ。郵政民営化に賛成か反対か、民営化が代表する構造改革を前に進めるのか止めてしまうのかだ。(同9月5日、神戸市内)

 官から民へ大きな流れを作るためには、覚悟、決意を示さなければならない。長い間、自民党を支持していただいた郵政関連団体の支援を得られない。(それでも)改革をしなければならない私たちの断固たる決意を示したい。(同8月27日、名古屋市内)


安倍首相の「同志」 ゾロゾロ

 復党願を出した衆院議員には、安倍首相と政治行動をともにしてきた「同志」や「靖国」派がぞろぞろといます。(表参照)

 古屋圭司議員は、右翼改憲団体・日本会議と連携して教育基本法改悪を推進してきた「教育基本法改正促進委員会」の副委員長、古川禎久議員も同委員会の事務局次長を務めています。

 また、保利耕輔議員は昨年の総選挙まで、教基法改悪法案のとりまとめをしてきた「与党教育基本法改正検討会」の座長を務めてきました。

表

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