2006年11月22日(水)「しんぶん赤旗」

海自潜水艦 接触事故

ひとつ間違えば大惨事に

解説


 海上自衛隊の潜水艦がタンカーと接触事故を起こした宮崎県沖の現場は、外航船舶などとともに「漁船も多い海域」(海上保安庁)だけに、ひとつ間違えば大惨事につながりかねない事故です。

 二〇〇一年にハワイ沖で、愛媛県立宇和島水産高校の実習船「えひめ丸」が急浮上した米海軍の原子力潜水艦に衝突され沈没、九人が犠牲になった事故が想起されます。

 海上自衛隊は「潜望鏡で安全を確認中、接触した」としています。潜水艦は浮上する際、潜望鏡での確認とともにソナーで航行音を探り、海上の船舶を確認します。

 軍事評論家の岡部いさく氏は「潜水艦がソナーでの航行音を聞き漏らした可能性が強い。海上の船舶にとって、潜水艦が潜望鏡をあげても海面上一―二メートルしか出ず波間に隠れて見えないこともあり、回避できないことを考えれば海自側の不注意はまぬがれない」と指摘します。

 ある海難事故専門家も「現場は宮崎沖を南北に航行する貨客船やタンカー、漁船が往来する常用航路帯だ。潜水艦は、一般船が航行していることを予測した訓練が要求される。今回の事故は海自側が安全確認義務を怠って、漫然と浮上したことによるもので、えひめ丸を沈没させた米原子力潜水艦グリーンビルと同じだ」と強調します。

 「あさしお」は海自自慢の最新鋭艦です。練習艦ながら六年前に船体を九メートル延長、長時間の潜水を可能にするスターリング式AIPシステムや最新型の装備・武器を搭載。「合理的で高いレベルの教育・訓練が可能」(自衛隊装備年鑑)としています。

 「あさしおには練習潜水隊の司令官が乗船しており、検閲訓練中の事故の可能性も考えられる」というのは海自に詳しい関係者。検閲訓練は過酷な状況設定で操作が要求され、ときには艦内がパニックになることもあり、これにヒューマンエラー(人的ミス)が重なったのではないかといいます。そうでなければ浮上時には全員がソナー音が聞けるモードになっている状態で航行音を聞き逃すことは考えられないと指摘します。

 自衛隊はいま、アメリカの地球規模での軍事作戦にそって「戦争する自衛隊」づくりを強めているだけに、今回の接触事故についても再発防止に終わらせず、徹底した原因究明が求められます。(山本眞直)


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