2006年11月7日(火)「しんぶん赤旗」

チュニジア与党主催 国際シンポジウム

21世紀の国際関係と諸文明の対話と共存

緒方副委員長の発言


 チュニジアの首都チュニスで三、四の両日開かれた同国与党の立憲民主連合(RCD)主催の国際シンポジウムに参加した日本共産党の緒方靖夫副委員長・国際局長・参議院議員は四日、「文化の共存と諸国民の接近の要素としての文明的連帯」をテーマにした全体会議で発言しました。その大要を紹介します。


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(写真)国際シンポジウムに参加した緒方副委員長(松本眞志撮影)

 尊敬する議長ならびにゲストのみなさん

 立憲民主連合第十八回国際シンポジウムの開催を心から歓迎し、この歴史ある行事に参加できたことを大きな光栄とするものです。二十一世紀の国際関係を平和と公正の方向に前進させるために文明の次元に光をあて、政府、政党、市民レベルで可能な協力をすすめ、諸文明の平和的な共存を保証する努力を強めることは、いつにもまして大きな世界の要請となっています。日本共産党は綱領(二〇〇四年改定)のなかで、「社会制度の異なる諸国の平和共存および異なる価値観をもった諸文明間の対話と共存の関係の確立に力を尽くす」ことをうたっており、こうした立場を実践してきた党として、いっそうこの時宜にかなったテーマの設定を歓迎するものです。

イスラム諸国との交流

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(写真)チュニスで開かれた第18回立憲民主連合(RCD)主催国際シンポジウムの会場(松本眞志撮影)

 日本共産党は、創立以来八十四年にわたり、困難と試練のなかで、平和と社会進歩のために奮闘してきました。野党ではありますが、国民的な立場に立って、対外関係とりわけイスラム諸国との交流をすすめてきました。一九九九年のマレーシア訪問を皮切りに、イラク戦争開戦前には政治的解決を訴えて、サウジアラビア、ヨルダン、エジプト、カタール、アラブ首長国連邦などイスラム諸国を訪問し、戦争反対、外交的な解決が必要という点で、どの政府とも一致を見たことは印象深いことでした。

 私自身、マレーシアで開催された非同盟諸国首脳会議に、またイスラム諸国会議機構(OIC)首脳会議にゲストとして参加しました。

 とりわけ、二〇〇三年のRCD大会に不破哲三議長(当時)が参加して指導部と会談し、史跡を視察したことは、欧州、中東、アフリカの文明の十字路といわれるこの国の国際政治、歴史、文明についての認識を深める機会となりました。

 この九月には、志位和夫委員長がパキスタン政府の招待で同国を訪問しましたが、アジズ首相との会談を通じて、テロとのたたかいをすすめるうえでも、文明の次元の問題解明が重要であることを痛感したところです。同時にこの課題は、カトリックが多数をしめるラテンアメリカにおいても重要な課題となっており、昨年のベネズエラ訪問のなかでも、カトリックとイスラムの相互理解と共同が会談の大きなテーマとなったことは、印象深いことでした。

社会発展の論理の尊重

 友人のみなさん

 こうした実践のなかで、わが党綱領での先の定式化がおこなわれ、その重要性をさらに認識し、私たちは世界に働きかけているところです。そのなかで感じている文明的次元にかかわるいくつかの点について、のべたいと思います。

 第一に、国連憲章の原則を守ることが大前提だということです。この点ではとくに、イラク戦争の前夜に開戦反対のたたかいが、この一点でおこなわれたことがきわめて教訓的でした。政府、政党、市民が一緒になって戦争反対を訴え、そのさいの共通の旗印は国連憲章の擁護でした。

 第二に、異なる価値観の共存ということは、特定の価値観を押しつけないということであり、内政不干渉の原則を厳守することです。各国には歴史、国情などから、それぞれ社会発展の内部の論理があり、その形態やテンポには独自のものがあり、当然尊重されなければなりません。もし、一部の国際社会が到達した「自由や民主主義」を、普遍的な価値として他国に押しつけるならば、共存は成り立ちません。相互理解による平和共存こそが重要です。

 アジアには、この点で重要な経験があります。アジア政党国際会議が四回にわたり開催されてきました。今年九月のソウル(韓国)での会議を含めて、次の合意がおこなわれています。

 「自国の国情にもとづいて自らの発展の道と発展モデルを選択すること」「各国の歴史的伝統、文化的差異、多様な発展の道を十分に尊重することを基礎として、異なる文明間の対話を強め、相互交流のなかでともに発展をはかること」を確認し、「相手の選択と経験を尊重し、相手が自らの国情にもとづいて策定した内外政策を尊重しなければならず、相手の内部問題への干渉を控えなければならない」(二〇〇四年、北京宣言)とうたっています。これは、内政不干渉の原則を具体化した普遍性をもつ原則であると考えています。この原則によって、政治体制、思想、宗教を超えてあらゆる政党間の共同が可能になっているのです。

 各国で社会進歩の流れは共通しているものの、回路と時間が違うことは明白です。法の前にすべての市民の自由と平等という主権在民についていえば、日本ではその実現は、第二次世界大戦直後の六十年前でした。フランスでは大革命での人権宣言の公布は、二百十年あまり前でした。同時に、婦人参政権の実現では、両国は同時でした。他国からの「幸福」や「価値」の押しつけは、国際関係を損なうものであることを銘記しなければなりません。

 第三に、特定の宗教をテロと結びつけてはならないということです。一部には、イスラムをテロと結びつける主張が根強くありますが、これは断固として拒否されなければなりません。イスラムの本質は、平和、寛容、平等にあります。テロとのたたかいは、今日の世界における重要な共通の課題ですが、その根源には、貧困や教育の欠如があります。前回チュニジアを訪問したときに、ベンヤヒア外相(当時)がのべていた、テロ対策を視野に入れたチュニジア政府の貧困削減への取り組みを思い起こします。

 同時に高学歴、裕福な人々がテロリストに転じることも見うけられる現象であり、これは社会の現状や不正への不満と外部からの抑圧への反発、さらには戦争や紛争からの絶望、義憤から生まれています。テロを絶滅すると豪語して開始したイラク戦争がテロの温床となり、「新しい世代のテロ指導者と工作員をつくりだし、各地にテロをはびこらせている」ことは、米政府報告(〇六年九月二十六日、米国家情報評価報告)さえも、認めているところです。テロの根源は戦争や紛争、他民族への抑圧であり、これらが除去され、平和と公正が保証された世界を取り戻すことがテロリストを袋小路に追いつめ、テロを撲滅する道です。

政府・政党・NGOの連帯

 友人のみなさん

 今日、国連憲章にもとづく平和の国際秩序か、干渉と侵略、戦争と抑圧の国際秩序かの選択が問われています。国連憲章にもとづく平和の国際秩序をめざす流れが、二十一世紀の世界の構造変化を地球的規模ですすめています。このたたかいを促進するキーワードは、連帯です。その連帯は国連憲章と対話と共存により、広がりをつくります。各国の政府、自治体、政党、非政府組織(NGO)が国際機関や地域共同体と一緒になって、平和と社会進歩のために協力することを可能にする時代を迎えています。このシンポジウムも、世界の平和と公正とそれを支える文明次元の役割をいっそう大きく果たすであろうことを確信し、私たちもそのために力を尽くすことを表明して、発言とします。ご清聴に感謝します。


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