2006年11月4日(土)「しんぶん赤旗」

いま世界がおもしろい

3回目「科学の目」講座 不破哲三さん語る


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(写真)講演する不破哲三社会科学研究所所長=3日、東京・江東区

 赤旗まつりの呼び物として定番となった不破哲三さん(日本共産党社会科学研究所所長)の「科学の目」講座(第三回)。会場は三十分前に二階席まで満席になる盛況ぶりでした。

 前回の講座から四年のあいだに日本共産党の新しい綱領ができました。不破さんは、「綱領の目でいま世界をみたらどうみえるかお話ししたい」とのべ、いまの世界の構造、動きを縦横に語りました。

 いまの世界を「あらゆる国が活発に世界の動きに参加している時代」と描いた不破さんは、「そういう世界をまとまってとらえる“世界論”が確立していない」と指摘。「グローバル化」論も、「多極化」論もその動きをとらえていないとのべました。

 そして、(1)一九一七年のロシア社会主義革命で二つの体制の共存の時代に入ったこと(2)二十世紀後半の植民地体制の崩壊でこの地域が独立国家の大集団に変わったこと(3)ソ連・東欧の体制崩壊―という「二十世紀の世界の構造的な変化」にたっていまの世界をみる見方を提示。この結果生まれた四つのグループにわけて世界をみると「世界の成り立ちも、大きな動きとその流れも、たいへん見通しよくみえる」とのべ、それぞれの構造についても詳しく語りました。

四つのグループはどうなっているか

 不破さんが示した四つのグループの現状はどうなっているか。

 資本主義が高度に発達した国々(人口約九億人)では、「米ソ対決」が崩れたことで、無理して米国に従うこともなくなり米国中心の一致団結は過去の話になるとともに植民地のない世界に適応せざるをえなくなっています。

 社会主義をめざす国々(人口約十四億人)は市場経済を通じて社会主義に向かうなど、新しい道に立って前進しつつあります。購買力平価からみたGDP(国内総生産)比較で、中国が米国に迫る二位となり三位の日本にインドが迫り、在日米商工会議所の会頭が二〇五〇年には「経済力世界一は中国、次いで米国、三位がインド」と講演したことも語ると、驚きの声が。

 かつての植民地・従属国が独立国の巨大な集団に変わったアジア・アフリカ・ラテンアメリカ(人口約三十五億人)の国々は、「保守・革新政権を問わず、非同盟、自主、独立、世界平和をめざす流れが圧倒的」です。そのなかで、インドでは、日本の人口を超える地域でインド共産党(マルクス主義)を中心とした政権が奮闘していることを紹介。また、米国の裏庭といわれていた南米で、ベネズエラ革命以降、次々と選挙で革新政権が生まれ、世界でも「一番、前向きで、激動的な活力のある地域になっている」と語りました。

 旧体制が崩壊した旧ソ連・東欧の国々(人口約四億数千万人)でも、EU(ヨーロッパ連合)など西欧に向かう流れと、上海協力機構に集い、ロシアや中国と協力する流れがあることを示し、「資本主義」万歳とはいえない状況だと指摘しました。

 不破さんは、二十一世紀の地球がどんな超大国でも牛耳れない世界となり、国連加盟国百九十二カ国のうち圧倒的に強いのが自主独立の流れだと指摘。「社会主義をめざす国々でも、アジア・アフリカ・ラテンアメリカでも新しい国づくりの息吹があふれている」とまとめました。

ソ連の崩壊から15年―その影響を考える

 「なぜ今の世界がこんなに活気づいているのか」。不破さんは、十五年前のソ連崩壊が世界の活性化への重要な契機となったと指摘しました。

 日本共産党は当時、ソ連崩壊を「覇権主義の巨悪が世界からなくなった」ことと「歓迎」しました。不破さんは「その私たち(共産党)の予想よりもはるかに大きく世界を前向きに進める契機になった」とのべ、米ソ対決に世界中がしばりつけられていた状況から、四つのグループそれぞれが生き生きと変化している様子を語りました。

 また、「国連が変わった」ことも重要です。ベトナム、アフガンへの侵略戦争が安保理の議題にもならなかったのに、イラク戦争の是非は大議論になり、米国はお墨付きを得られませんでした。

 覇権主義が一つになり、世界の監視の目がきびしくなった米国にも大きな影響を与えました。“ソ連の侵略主義への対抗”という大義名分を失ったこと、圧倒的な軍事力だけでは目標を達成できず、外交戦略で補わざるをえないことなどです。

 不破さんは、「外交が本当に重要な役割をする時代になった」とのべ、そうした状況で日本国憲法が注目されていることに注意を促しました。

いま世界は日本にどんな外交戦略を求めているか

 不破さんは、「そういう世界が日本にどんな外交を求めているか」として、(1)世界平和をめざす自主的外交戦略、(2)侵略主義や覇権主義を絶対許さない大方針の確立、(3)軍事的対応優先でなく、外交に強い国になること――を提起しました。

 そのなかで、日本の歴史問題について、このこともいかなる覇権主義、侵略主義も許さない外交方針と不可分だとして、「一番野蛮で無法な覇権主義、侵略主義だった日本の戦争について、きちんとした見方ができないと今の世界でものをいえない」と指摘しました。

 また、外交を強くするうえで相手の国との相互理解の大切さを説いたうえで、反共主義について言及。反共主義とは、資本主義を乗り越える社会をめざそうという運動を「敵」とみなす考えだとのべ、世界ではそれが音をたてて崩れつつあることを指摘しました。そのときに日本でひときわ激しい反共主義が生き残っていることを、「自民党政治の三つの異常」に加え「四つ目の異常」と指摘し、国内政治のうえだけでなく外交のうえでもその克服が大切だとのべました。

 三つの提起とも自民党外交に欠けていることばかりだとして、日本共産党の野党外交の発展と対比。日本共産党がありのままの姿と国際政治でとっている道理ある立場、相手の国への相互理解で発展していることを語り、「もし日本が外交路線を転換するならどんなに素晴らしい前途が開かれるか、本当に楽しい希望がある」とのべ拍手に包まれました。

 感想では、「日本の国内だけをみていると意気消沈しがちだけど、世界のなかではそうではないことがよくわかった。不破さんの声に励まされた」(女性六十三歳)との声が圧倒的でした。

 千葉県流山市から来た、看護学生、女性(19)は、「社会保障改悪をみていると煮詰まってしまうけど、不破さんからいきいきした世界の変化を聞いて、日本の私たちもそういう世界の中に生きているんだということをつかむことが大事だと思いました」と語っていました。


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