2006年11月3日(金)「しんぶん赤旗」

岐阜・瑞浪 中2いじめ自殺

背景に何が…


 岐阜県瑞浪(みずなみ)市の市立中学校二年の女子生徒(14)が自殺した問題で当初「いじめ」との因果関係を認めなかった市教委と学校側は、二転三転しながらも「自殺の原因は100%いじめだ」との認識を示しました。いじめ件数が昨年度「ゼロ」だった瑞浪市で起きた事件の背景に何があったのか。(唐沢俊治)


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 「がんばる事に疲れました」との遺書を残した女子生徒の自殺から八日後の十月三十一日、市教育委員会と学校側は「いじめが自殺の原因だった」とようやく認めました。遺書には、いじめた側の四人の名前が記されていました。

 学校側の調査では、自殺した女子生徒が所属したバスケットボール部の活動中、シュートできるのにパスすると「そこ違う」と言われたり、「うざい」などと言われるなどのいじめを、遅くとも五月から受けていたことが明らかになりました。

 学校側は自殺した生徒宅を訪問した際、父母に対し自殺はいじめが原因とみられるなどと説明していました。しかし後日、「自殺につながるいじめは確認できない」と否定。いじめと自殺の関係について、学校側と市教委の認識が二転三転しました。

 校長は三十一日の会見で、「一般的にいじめイコール自殺ではなく、彼女の自殺がいじめと結びつかなかった」と弁明しました。しかし校長は二十八日の段階で、遺書に書かれた四人の女子生徒からいじめを受けていた事実を確認していました。三十一日夜に謝罪に訪れた校長らに対し、自殺した生徒の両親も、結論を先延ばしされたことに対し不快感を示したといいます。

昨年度「ゼロ」報告の市で

 同中に通う二年の女子生徒の母親は、「隠そうとしたのなら本当に悲しい。保護者会でも事務的な説明で、先生の本音が聞けなかった。教育委員会と学校の組織に問題があるんじゃないですか」と不満を口にします。

 現在、市教育長を務める尾石和正氏は二〇〇〇年四月から〇二年三月まで、同中学校の校長を務めていました。その校長在職中の〇一年、二年生の女子生徒が今回と同様のいじめを受けていたことがわかりました。

「命の危険」で転校 5年前にも

 この女子生徒は同年五月から、所属したバレーボール部の生徒から仲間はずれにされたり、休憩時間など校内ですれ違うと「あの子は皆から嫌われている」などと大声で言われるなどしました。精神的な重圧から身体への疾病が表れ、「命の危険」があったことから、女子生徒は同年二学期、市外の中学校に転校しました。

 女子生徒の母親(45)は、「娘は、中学校で“命”を失ったんです。あのとき、校長と教育委員会がもっと真剣に取り組んでいれば、今回の自殺は防げたはずです。こうした人たちが教育委員会にいるから、子どもたちを守れないのではないか」と怒ります。

 本紙の取材に対し尾石教育長は、当時いじめがあったことを認めた上で、「五年間のいじめ対策が不十分だったと言わざるをえない。今回も同じことが起きてしまったことを歴然たる事実として受け止めないといけない」と述べ謝罪しました。

教育長「対策不十分だった」

 当時教育委員会は、いじめ問題について「特定の教員が抱え込んだり、事実を隠したりすることなく、学校体制で対応する体制が確立しているか」などとする「いじめ問題の取り組みチェックポイント」を作成しました。今回それが生かされませんでした。

 岐阜県教育委員会は「いじめ根絶」という掛け声のもと、市町村教委に指導を強めてきました。岐阜県内の公立小中学校におけるいじめ件数は〇一年度、四百七十八件だったのに対し、昨年度は二百七十件と「右肩下がり」。瑞浪市内の小中学校でのいじめの件数は昨年度、ゼロ件でした。

 しかし、「いじめ根絶」は、「いじめを出してはいけない」という教員に対する圧力につながるとの指摘もあります。これを裏付けるようにいじめゼロ件だった昨年度、一年生の女子生徒が同じクラスの仲間から長期間にわたり無視されたり、仲間はずれにされるなど、いじめを受けていたことが分かりました。教員もいじめを認識していたものとみられますが、報告されませんでした。


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