2006年10月30日(月)「しんぶん赤旗」

イラク戦争は失敗

“民主化”は実現しない

米元高官が結論


 イラク戦争の深刻な行き詰まりが十一月七日投票の米中間選挙の最大の争点となるなか、ブッシュ大統領はイラク情勢に「私も満足していない」(二十五日の記者会見)と述べるなど、一定の政策見直しに応じるそぶりを見せています。米国の有識者の間では、「イラク戦争は失敗した」との判定に立ち、中間選挙後に戦争の後始末を本格化させようとする動きが出ています。


 注目されているのが、米国の代表的なシンクタンク、外交問題評議会(CFR)のリチャード・ハース現会長が、同会発行の外交誌『フォーリン・アフェアーズ』十一―十二月号に発表した論文「新しい中東」です。

世界に大損害

 論文は十八世紀末以降の中東への欧米諸国の介入の歴史を振り返り、ソ連崩壊後に続いた「中東での米国の時代」が「終わってしまった」と結論づけます。米国が進めようとしてきた「民主的な、欧州のような地域」を中東に建設する展望は「実現しないだろう」といいます。

 「中東での米国の時代」が終わった要因の第一としてハース氏が挙げるのは、「イラクを攻撃するとの二〇〇三年のブッシュ政権の決定と、その後の占領」です。その結果として、▽イスラム教スンニ派が支配的だったイラクが壊され、中東全域でスンニ派とシーア派の緊張が表面化した▽テロリストがイラクに拠点を得た▽反米主義が強まった―と指摘します。

 同氏は、「米国の時代」の次に来る「新しい中東」では大きな混乱が予想され、「中東自身、米国、世界に大きな損害を与える」と予測。米国がそれを避けるには、「軍事力への過剰な依存」という誤りを繰り返さず、イラクの近隣諸国の地域会合を設けるなど「非軍事的手段」で中東に関与すべきだと提言しています。民主化を急ぐ過ちも避けるべきだと主張しています。

根本転換迫る

 ハース論文は、ブッシュ政権の中東・イラク政策への真正面からの批判という形こそとっていません。しかし、その実質的内容は、イラク戦争は破綻(はたん)したとの結論を下し、米国の中東政策の根本的転換を迫るものです。

 ハース氏は、一九八九―九三年にブッシュ父大統領の中東問題での特別補佐官を務め、ブッシュ現政権でも〇三年六月まで国務省政策企画局長でした。今回の論文の要点は英紙フィナンシャル・タイムズ十七日付にも掲載されました。米外交政策の形成にCFRがこれまで果たしてきた役割からみても、その意味は軽視できません。

 イラク政策をめぐっては、ブッシュ父政権時の国務長官で、「ブッシュ家の番頭」的な役割をしてきたベーカー氏を共同議長の一人とする「イラク研究グループ」(ISG)が活動を続け、予想される中間選挙での与党・共和党の敗北後にイラク政策の見直しを提言する予定となっています。

 ハドリー国家安全保障担当大統領補佐官も二十六日のインタビューで、大統領は「どんな建設的な考え方も歓迎する」「若干の新しい考え方を求めている」とし、「将来に若干の変更をする必要があることは明確だ」と述べています。

 いずれも、ブッシュ政権のイラク・中東政策が中間選挙後に大きく動く可能性を予感させる動きです。日本も無関係ではありえません。(坂口明)


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