2006年10月26日(木)「しんぶん赤旗」

1年経た新憲法

イラク 治安悪化は深刻

軍事一辺倒の米に批判


 【カイロ=松本眞志】イラクの新憲法が国民投票で承認されてから、十五日で一年が経過しました。新生イラクづくりの節目として期待されましたが、この一年、テロと暴力はいっそう激化し、泥沼から抜け出せない状況に陥っています。治安悪化に対し軍事力一辺倒で対応しようとしている米軍への反発も強まっています。


 イラクでは、自動車爆弾などによるテロが激化し、首都バグダッドなどでは一日に数十人から百人の他殺死体が発見されるなど、治安の悪化がエスカレートしています。

 開戦からこれまでにイラク人の犠牲者が六十五万人を超えるとの指摘(英医学専門誌『ランセット』十一日付)もあります。イラク移民省は九月二十八日に、過去七カ月間で四万家族二十五万人が避難民になり、急増する傾向にあると指摘しています。

 イスラム教シーア派やスンニ派などの各宗派や政党は独自の武装組織を持ち、宗派間の意見の相違がこれらの組織間では凄惨(せいさん)な暴力抗争に発展しています。マリキ首相は二日に宗派抗争を停止する提案を行いましたが、国民議会では賛否両論に分かれました。

抗争やめさせる

 二十一日にはイラクのイスラム教シーア派とスンニ派の宗教指導者が、サウジアラビアのメッカに集い、「メッカ・アピール」に調印し、イスラム教徒同士の抗争をやめさせることを呼びかけています。

 宗派間の抗争の背景の一つに連邦制の問題があります。スンニ派は連邦制によって石油資源のない地域を割り当てられることになることに反発しています。

 新憲法はイラクの国家制度を連邦制にすると規定しましたが、一月の選挙で正式政府が樹立された後、国民議会で修正について話し合うこととされていました。国民議会は今月十一日、連邦制の導入に関する法案を賛成多数で可決。これによって、地方政府は立法、行政、司法の三権を与えられるなど強い自治権を得ることになります。

 ただし、実際の施行は先延ばしされることになりました。スンニ派各派が反対したためで、この日の採決でもスンニ派各派は採決をボイコットしました。

分断統治の結果

 しかし、宗派間抗争も、もとはといえば、米軍が占領後、石油の利権などコミュニティー間の利害関係を利用して、クルド人や特定の宗派に肩入れして、武力を背景にした分断統治をすすめた結果生じたものだとの見方もあります。

 ハリルザド駐イラク米大使は二十四日、首都バグダッドでのケーシー駐イラク米軍司令官との共同記者会見で、イランとシリアが背後で武装グループを支援しているとして、不安定の原因を外部に求めました。しかし、イラク国民議会各派は十八日に、国連イラク支援派遣団(UNAMI)の援助を受けて人権委員会を設立する意向を示し、占領軍の人権侵害を「目に余る」行為として告発しています。

 イラクのアブデルマハディ副大統領も、最近、「武装勢力の武装解除の課題は政治的解決によって実現するもので、軍事力によってではない」と米軍をけん制する発言をしています。


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