2006年10月26日(木)「しんぶん赤旗」

主張

防衛「省」昇格法案

海外戦争への備えは許せない


 政府・与党は、衆議院本会議で、防衛庁を「省」に昇格させる防衛庁設置法「改正」案と海外派兵を自衛隊の「本来任務」に格上げする自衛隊法「改正」案を趣旨説明し、本格的な審議に入る構えです。今国会での成立をねらっています。

 両「改正」案は、「世界のなかの日米同盟」路線で、日本を海外で戦争をする国に変えていくための制度的大改悪です。憲法改悪によって防衛庁・自衛隊を憲法で認知するくわだてを先取りし、戦争態勢づくりを加速するのは許されません。

権力肥大化の危険

 防衛庁から防衛省になることは、たんなる名称変更ではありません。

 内閣府の一外局の「庁」から独立した「省」になれば、「防衛大臣」は内閣府の主務大臣である総理大臣を通さずとも、閣議開催要求、省令制定、予算要求が可能になるなど権限は拡大します。これは、憲法の制約を受けて防衛「庁」とし、防衛行政をいまの仕組みにとどめた政府の立場をくつがえす重大問題です。

 憲法九条は、軍部の暴走を許した侵略戦争の反省に立ち戦争放棄・戦力不保持・交戦権否認を明記しています。このため政府は、自衛隊を「自衛のための必要最小限度の実力組織」だといいつくろい、防衛庁を内閣府の一外局の組織にしました。

 戦前は軍部が幅を利かし、外務省などの他省庁をらち外において領土拡張政策を進める推進力になりました。歴代首相が防衛「省」化を否定してきたのは、こうした過去の苦い経験をふまえてのことです。

 一九六〇年の安保国会で、安倍首相の祖父であり、太平洋戦争開戦時の東条内閣で商工大臣をつとめた岸首相(当時)は、「戦後の新憲法のもとにおける防衛というものは、旧憲法のときの軍部、陸海軍とかその他のような立場を絶対にとらしてはならない。国防省という考え方が、(権力肥大化の)懸念を伴う」と答弁しています(六〇年五月十六日衆院内閣委員会)。また、中曽根首相も「憲法そのほかの関係から見て、総理大臣の直属の庁にしておいたほうが適切」といいました(八六年十二月九日参院内閣委員会)。

 侵略戦争の教訓に学びもせず従来の立場さえ投げ捨てて、戦争態勢をひたすら強化する政府に内外から懸念が強まっているのは当然です。

 防衛「省」昇格は「日本防衛」のためではなく、アメリカとともに海外で戦争するための措置です。「周辺事態法」にもとづく米軍支援と「国際平和協力活動」を自衛隊の「本来任務」とする自衛隊法「改正」案とセットであることからも明確です。イラク戦争などアメリカが進める戦争への加担・協力を指導できるようにするのがねらいです。

 日本を世界的規模で「戦争をする国」に変え、平和と安全を脅かす戦争指導体制づくりを認めるわけにはいきません。

軍事優先問い直す時

 政府はアメリカいいなりに、自衛隊に米軍と一体で戦争する英国軍並みの役割を果たさせることをめざしています。安倍首相が憲法の明文改定以前にも、海外で共同行動している米軍部隊を守るため武力行使することをねらうのもそのためです。しかし、北朝鮮の核実験問題での国際社会の対応をみても、軍事でなく平和的・外交的解決が世界の大勢です。軍事一本やりの態度は世界のなかでも異常です。これではアジアと世界の反発を強め、孤立を深めます。

 軍事優先を改め憲法九条を生かすためにも法案は廃案にすべきです。


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