2006年10月21日(土)「しんぶん赤旗」

国連安保理の制裁決議

北朝鮮核問題の平和解決めざす


 国連安全保障理事会は十四日、核実験実施を発表した北朝鮮に対する制裁決議一七一八を全会一致で採択しました(十七日付に全文)。日本では周辺事態法の発動など軍事的措置が論議されていますが、こうした方向は安保理決議そのものに反するものです。問題の解決のため安保理決議は何を決め、北朝鮮と国際社会に何を求めているかを決議にそってみてみました。


決議が採択された理由は

 今日の国連では、国際的な紛争が生じた時には、国連憲章第六章に基づき当事国に平和的解決を義務づけ、その問題が「平和に対する脅威」だと認定された場合には、憲章第七章に基づき、非軍事的措置か軍事的措置で対処するというルールになっています。これが、平和の国際秩序を確立するための国連の「集団的安全保障」の仕組みです。

 今回の決議一七一八は、「核・化学・生物兵器、ならびにその運搬手段の拡散は、国際の平和と安全への脅威となる」ことを一般的に再確認した上で、北朝鮮の核実験が、「この地域およびそれを越えてさらに緊張を高めた」とし、「国際の平和と安全への明白な脅威が存在する」と認定しました。

 これは、憲章第七章三九条に基づいて、北朝鮮の核実験を「平和に対する脅威」だと認定し、それにふさわしい措置をとることを決定したという意味です。安保理が「脅威」と認定したということは、極めて重い意味があります。

 その上で決議は、「兵力の使用を伴わない」と規定した「第四一条に基づいて措置」をとることを明記し、この「脅威」に対して非軍事的な措置で対処することを決めました。

北朝鮮への要求と制裁の中身

 安保理決議は、北朝鮮の核実験を非難(第1項)した上で、第2―7項で、北朝鮮にまず次の六点を要求しています。

 (1)核実験や弾道ミサイル発射実験をしない。

 (2)核不拡散条約(NPT)から脱退すると通知したことを撤回する。

 (3)NPTと国際原子力機関(IAEA)の保障措置に復帰する。

 (4)ミサイル計画の活動を中止する。

 (5)核兵器開発計画を「完全かつ検証可能で後戻りできないやり方で」放棄する。

 (6)大量破壊兵器と弾道ミサイルを放棄する。

 さらに、第14項で、六カ国協議に無条件に直ちに復帰するよう北朝鮮に求めています。

 その上で、これらの要求を実現するために、何を経済制裁の対象にし、何を制裁の対象にしないかを、第8―10項で定めています。

 制裁の対象となる物品は、(1)戦車や戦闘機、ミサイルなどの兵器(2)核・弾道ミサイル・大量破壊兵器に役立つ可能性のある物(3)ぜいたく品―と限定されています。

 これらの具体的な定義については、決議第12項に従って設置される制裁委員会で決定されます。同委は十九日に初会合を開き、活動を開始しました。

 これらの制裁対象物品に「関連する北朝鮮の政策に責任がある」と指定された人物や、その家族の移動も防止対象となっています。

 決議は、第9、10項で、食料や医療に関連する資産は制裁の対象とならないと明記しています。これは、イラクに対する制裁など、過去の安保理決議に基づく制裁が対象国の一般国民に大きな被害を及ぼしたことの教訓が反映されています。

非軍事的措置に限定

 決議一七一八は、制裁手段を非軍事的措置に限定し、六カ国協議の早期再開と昨年九月の共同声明の速やかな履行に向けた平和的・外交的解決の努力を求めています。

 決議は、「国連憲章第七章に基づいて行動し」と述べた後で、「第四一条に基づいて措置をとり」と明記しました。第七章第四一条は「兵力の使用を伴わない措置」の採用を定めたもので、文字通り非軍事的枠内に限定されています。

 当初の米国案は「国連憲章第七章に基づいて行動し」とのみ記されていました。この案では将来の軍事行動発動まで正当化されかねないと中国、ロシアが懸念を表明し、第四一条を明記する修正が施されました。この経緯からみても、軍事力使用が排除されていることは明らかです。

 その上で決議は第13項で、昨年九月十九日の六カ国協議の「共同声明の速やかな履行」を目指して、「外交努力を強め、緊張を激化させる可能性があるいかなる行動も慎み」「六カ国協議の早期再開を促進する」取り組みを促しています。

 決議が求めているのは何よりも交渉を通じた平和的・外交的解決です。そのための枠組みとして「六カ国協議」がすでに存在することも、決議は重視しています。

 制裁の実施にあたっての貨物検査、船舶検査についても、「必要に応じて」「自国の権限と法律に従い」「また国際法にそって」「検査を含む協調行動をとるよう」「要請される」と定めています(第8項f)。これは安保理で活発な議論がかわされた結果、合意されました。一律の義務付けではなく、非軍事的な措置で対処することを貫く非常に抑制的な規定になっています。

 決議はさらに、第16項で「追加措置が必要な場合はさらなる決定が必要となる」と明記し、決議一七一八を根拠に自動的に軍事行動に出ることを認めていません。このように、今回の決議は、北朝鮮制裁に名を借りた軍事行動に何重にも歯止めをかけています。

六カ国協議への復帰

 決議は、北朝鮮核問題の外交的解決のカギとして、六カ国協議を特別に重視しています。第13項で関係諸国の外交努力を奨励し、第14項で北朝鮮に対し、無条件で六カ国協議に直ちに復帰し、昨年九月の六カ国による共同声明の速やかな履行に向けた努力を要請しています。

 六カ国協議は、北朝鮮、中国、日本、韓国、ロシア、米国により、二〇〇三年八月に第一回会合を開きました。朝鮮半島の核危機を交渉で解決する協議の場として、周辺国の粘り強い努力で準備されたものです。

 協議は米朝の対立で難航する局面もありましたが、〇五年七―九月の第四回会合では、議長国中国の外交努力も実り、米朝協議も行われました。

 同会合は九月十九日、朝鮮半島の非核化の基本方向を明記した共同声明を採択しました。

 声明の要点は次の通りです。

 一、平和的な方法により朝鮮半島の検証可能な非核化を実現する。

 一、北朝鮮は、すべての核兵器計画を放棄し、NPTとIAEAの保障措置に早期に復帰することを約束する。

 一、米国は、朝鮮半島で核兵器をもたず、北朝鮮に対して核兵器または通常兵器による攻撃、侵略をする意図がないことを確認する。

 一、北朝鮮と米国は、国交を正常化するための措置をとる。

 一、北朝鮮と日本は、日朝平壌宣言に従って、不幸な過去を清算し、懸案事項を解決、国交を正常化する。

 一、中日韓ロ米は、北朝鮮に対するエネルギー支援の意向を表明した。

 一、朝鮮半島の恒久的な平和体制について協議する。

 一、北東アジア地域での安全保障協力を促進する方策を探求する。

 今回の決議は、前文も含めて、この共同声明に三度も言及し、そこに立ち戻る意義を重視しています。


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