2006年10月2日(月)「しんぶん赤旗」

教育基本法 “審議は慎重に”

33市町村で意見書

長野


 教育基本法の改定には慎重な審議と国民的な議論を――。長野県の高等学校教職員組合(高村裕委員長)は五月以来、教育基本法の問題についての「意見書」可決を自治体に求める陳情を続けています。九月末現在、陳情した五十一自治体中、過半数の二十八市町村が採択、趣旨採択は五市町村にのぼっています。陳情採択の広がりには、立場の違いを超えて「子どもたちのよりよい未来を願う」広範な人々の思いがあります。(青野圭)


子どものより良い未来願い

 意見書は、政府の改定案が「国を愛する態度」などの「教育目標」を押しつけ、現行教育基本法の精神を大きく転換させるものとして、「慎重で国民的な議論」を呼びかけたものです。

 下諏訪町議会(定数十八、欠員二)では六月十五日、八対七で本会議採択されました。保守の強い同議会では異例の出来事でした。

公明のみ反対

 これに先立つ九日、日本共産党の藤森スマエ議員が委員長を務める社会文教委員会(委員長ほか五人)での審査は激しいものに。冒頭、「憲法改正と連動していることを注視すべきです」と「説明」に立った教育長は次のようにのべました。教育基本法を座右の銘としていること、教育基本法は理念が非常に高く、前文と一条は世界に誇れるものである、と。

 公明議員が血相を変え大声で遮りました。教育長の私見を聞く必要はない――。最古参議員の激高で、委員会は険悪な雰囲気になりました。

 保守系議員の手が挙がりました。「私は陳情に大枠賛成です。愛国心を文言として基本法の中へ入れることには賛成できない」。委員会の空気が変わりました。「もう少し国民的議論があっていい」「今の教育基本法でやれない問題ではない」。他の二議員が続き、賛成は四人、反対は公明のみとなりました。

 「なに! 採択しただかい。なんで採択になっただ」(保守議員)。委員会での採択は議会全体をゆるがしました。

 賛成の口火を切った議員(66)が振り返ります。「拙速に結論を急ぐべきではありません。愛国心は、教え込むものではなく、自然にわき出てくるもの。教え方一つで、なだれをうって一億火の玉で突き進む、なんてことにもなる。その意味で教育は恐ろしいですよね」

議論は大歓迎

 同県の市議会で最初に採択した安曇野市議会では、本会議は全会一致(六月二十二日)でしたが、福祉教育委員会(委員長ほか六人)は、賛成三、反対二、継続一の緊迫する展開となりました。

 十五日の同委員会。「慎重審議が大事」と賛成した日本共産党の松沢好哲議員に続いて、「私も同じ意見」と女性議員。「教育の荒廃がいわれるが、それは教育基本法の理念が理解されず、実現に向けた努力がされずにきた結果で、基本法を変えれば(いい)というふうには考えていません」

 これにたいして、「採択は国会にゆだねる」とする公明議員ら二人が反対。賛否が拮抗(きっこう)するなか、最大会派「五一会」の副幹事長を務める藤森康友議員(45)が「私は賛成です」と態度表明しました。「教育をめぐる困難や問題が、教育基本法を変えることで解決するということではない。現基本法のなかでやれることはまだまだたくさんあると思います。慎重審議を進めた方がいい」

 委員会採択後、本会議に向けて、反対討論の動きもありましたが、日本共産党議員団(四人)が「議論は大歓迎」(松沢議員)と賛成討論の準備を進めると、流れは全会一致の方向に広がっていきました。

 「正直にいうと、私は変えることに反対しているのではありません」と藤森議員。「法律を変えるというのは、慎重にすべきで、私たちが生きていくうえで、不整合な部分がでてくれば変えればいいと思うのです。国民的な議論がないなか、上の方でポンポン話が進んでいいものか、戦後六十年のなかで培ってきた法律を性急に変えていいものかと思うのです」

県内過半数を

 長野高教組の壇原毅也副委員長はいいます。「ぜひ県内自治体(八十一)の過半数で採択してほしい。子どもの身近にいる人は、ほとんどが反対、少なくとも慎重審議だという声をあげていきたいと思います。一日には上田市で、高教組も積極的にかかわる教育基本法を活かす県民ネットワーク主催の、全県学習会を開きました。これを契機に一刻も早く実現したい」


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