2006年10月1日(日)「しんぶん赤旗」

主張

最低賃金

これでは貧困なくせない


 青森県の卸売・小売業で働く十九歳の女性は、昨年六月、百五十八時間(一日八時間、月二十日にほぼ相当)仕事をしたのに、賃金は十万九千四百円でした。

 沖縄県のサービス業で働く二十代前半の男性は、月百八十五時間(一日八時間、月二十三日にほぼ相当)の所定内労働と二時間の時間外労働をしたのに、月給は十二万二千五百円(所定内給与は十二万円)でした。

地域で月2万円も違う

 いずれも、厚生労働省の「二〇〇五年賃金構造基本統計調査報告」から抜き出した、小規模(五―九人)事業所の常用労働者の賃金です。

 仮に、青森の女性と沖縄の男性が恋をして、飛行機と新幹線を使ってデートすることになったら、その往復の交通費だけでどちらか一方の一カ月分の給料がほぼ消えてしまいます。働いても、働いても、月に十万円を少し超えるほどの収入しか得られない、こんな低賃金の構造を放置するわけにはいきません。

 働く人の賃金の最低額を保障する最低賃金制が法律で決められ、国が都道府県ごとに最低賃金を定めています。しかし、最低賃金は、生活保護水準よりも低い上に、地域によって格差があります。

 この十月一日(一部は九月三十日)に改定される地域別最低賃金(時給)は、前年に比べ二―六円あがったものの、最高でも七百十九円(東京)、最低では六百十円(青森、岩手、秋田、沖縄)という低さです。東京と青森をフルタイム(一日八時間、月二十二日)で比べた場合、月二万円近い格差が生まれます。

 フルタイムで働いても暮らしがなりたたない低賃金の横行は、貧弱な最低賃金制度に原因があります。

 欧州では日本のような地域別最低賃金を認めず、全国一律最低賃金制を採用しています。また、最低賃金額も、欧州連合統計局によると、今年一月時点で、フランスやイギリス、オランダ、ベルギーが月額十七万円台、ルクセンブルクが約二十一万円です。日本のような十万―十二万円台という低さとは大きな違いです。

 その日本では、低すぎる最低賃金をさらに下回る、違法行為が後をたちません。とくに、一九九〇年代半ばから二〇〇二年までの間に、最低賃金未満で働かされる労働者の比率が増加したことは見過ごせません。労働者派遣法の改悪(一九九六年と九九年)で派遣対象の拡大、原則自由化が進められた時期です。非正規雇用の拡大は低すぎる最低賃金でさえ順守できない無法を広げました。

 監督を強化すべきなのに逆に政府は、監督する事業場と労働者の対象数をこの五年で二―三割減らしてきました。最低賃金の周知徹底も弱められ、最低賃金が適用されることを知らないという事業主が急増しています。

せめて時給千円以上に

 最低賃金制度は、雇用形態にかかわりなく、すべての労働者が対象です。最低賃金額には、一時金や残業手当、精皆勤手当、家族手当、通勤手当などは含まれません。月々の基本給だけが対象です。最低賃金の引き上げは安定した個人消費の拡大につながります。また、賃金の底上げは、日本社会の格差の拡大に歯止めをかけ、逆転させるうえでも、大きな意味をもちます。

 低すぎる最低賃金をこのままにしておいては格差と貧困の拡大を正すことはできません。“せめて時給千円以上は必要だ”とのとりくみも広がっています。全国一律最低賃金制の確立めざし力をあわせましょう。


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