2006年9月29日(金)「しんぶん赤旗」

安倍内閣 危うい実像 (下)

「改革」加速のシフト


 「はっきり申し上げる。私は構造改革を加速させ補強していきたい」

 安倍晋三首相は二十六日、就任後最初の会見で強調しました。弱肉強食で格差を未曽有の規模に広げた小泉「構造改革」を今後もためらいなく推進する宣言です。

経済の“指南役”

 安倍首相は人事でも「改革」シフトを鮮明にしました。

 民間枠で経済財政相に就任した大田弘子氏。小泉前首相と二人三脚で「改革」を進めた竹中平蔵前総務相に請われ、二〇〇二年に大学教員から経済財政諮問会議のスタッフに転身した人物です。規制緩和路線をすすめた奥田碩日本経団連会長(当時)ら「民間議員」を支えました。

 「改革シフト」は首相官邸も同様です。塩崎恭久官房長官と、経済財政担当の首相補佐官に就いた根本匠衆院議員は、安倍首相や石原伸晃・自民党幹事長代理と政策活動をともにし、八年前に「NAIS」(ナイス、四氏の頭文字)と称されるグループを立ち上げました。そして大銀行に国民の血税を注ぎ込む不良債権処理の枠組みづくりを先導してきました。根本氏は補佐官就任をうけ、「経済財政政策の分野で安倍総理を徹底的に補佐」すると表明しました。

 さらに政府、官邸と一体で「改革」を推進するのが中川秀直・自民党幹事長です。安倍首相の経済政策の“指南役”とされる中川氏は、「構造改革」による経済成長こそ「格差是正の良薬」といってはばかりません。

 神戸女学院大学の石川康宏教授(経済学)は「新政権にはほとんど目新しさがなく、小泉政治のゆきづまりを無視して突っ走る布陣となっています。格差をさらに加速させ、国民生活のギリギリのところにさらに攻撃をかけてくるでしょう」と指摘します。早くも浮上しているのが大企業減税と消費税増税です。

 「読売」二十四日付は、安倍氏が来年度、税制「改正」をおこない、初年度だけで六千億円規模の法人税大幅減税に踏み切る意向を固めたと伝えました。これに符合するように、尾身幸次財務相は二十六日の就任会見で、「企業活動の活発化による財政再建のやり方もある」とし、大企業減税実施が持論であると表明。消費税増税問題では、来年秋以降に議論を本格化させると言明しました。

具体的政策なし

 厚労相に、自民党税調会長として福祉など歳出削減を推進してきた柳沢伯夫氏を任命したことも象徴的です。日本医師会は、この人事について「小泉政権での財政優先路線を踏襲するのではないか、と懸念を深めている」とする談話を発表しました。

 一方、安倍首相は、「構造改革の補強」の目玉としている「再チャレンジ推進」ではなんら具体的な政策を示していません。二十六日の会見でも、「単線から複線的な社会に」などと抽象論に終始しました。

 石川教授はいいます。

 「格差を是正するには、非正規雇用を正規雇用に変えるなど実効性ある具体的政策が不可欠ですが、安倍首相にあるのはスローガンだけです。日米大企業の利益にしか目を向けない『改革』路線推進の立場では、大企業が嫌がる具体策など出しようがありません。今後、矛盾が激化し、国民の怒りは高まらざるを得ません。この怒りが大きくまとまれば政治的激変が起きる可能性があります」

(おわり)


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