2006年9月27日(水)「しんぶん赤旗」

日本共産党国会議員団総会での

志位委員長のあいさつ(大要)


 日本共産党の志位和夫委員長が、二十六日の国会議員団総会でおこなったあいさつ(大要)は次の通りです。


安倍新体制――
小泉内閣以上に日本をひどい方向に導く本音があらわに

写真

(写真)議員団総会であいさつする志位和夫委員長=26日、衆院第1議員会館

 臨時国会の開会にあたりまして、ごあいさつを申し上げます。

 この国会は、安倍新体制と対決する初めての国会となります。

 五年半の小泉政治を振り返ってみますと、自民党政治の三つの異常――過去の侵略戦争を正当化する異常、アメリカいいなりの異常、大企業中心主義の異常――を極端にまで肥大化させ、外交でも、内政でも、日本の前途を真っ暗にした五年半でした。

 安倍氏が自民党総裁選のなかでしめした政策は、このゆきづまりから抜け出す中身をなにひとつしめすことができませんでした。それどころか、小泉内閣以上に日本を危険な方向に導く本音があらわになっているのが、特徴だと思います。

 私たちは、安倍新体制と正面から対決し、平和、民主主義、暮らしの守り手として、「日本共産党ここにあり」という大奮闘をこの国会でやりぬきたい。この決意をまず冒頭に固めあいたいと思います。(拍手)

歴史問題――
侵略戦争、植民地支配への認識を正面からただす

 いくつかの国会の焦点についてのべます。

 第一は、歴史問題であります。

 この問題での、これまでの焦点は、首相の靖国参拝の是非ということにありました。この問題は、安倍氏が「参拝したか、しないかいわない」などと、この問題をあいまいにしようとしているわけですから、安倍氏にもきびしく問われてきます。

 しかし、安倍氏に問われる問題は、それにとどまるものではありません。すなわち過去の侵略戦争と植民地支配にたいする歴史認識そのものが、今度は重大な主題となってくることになります。

 小泉首相は、言葉で「反省」をいいながら、行動でそれを裏切りました。しかし、安倍氏は、言葉ですら「反省」をいおうとしません。昨年七月、私は安倍氏とテレビで対論して、過去の侵略戦争や植民地支配の誤りを認めるかと端的にただしましたが、「歴史が判断するだろう」という逃げの答えを繰り返しました。この姿勢はいまも続いています。これは、小泉首相にくらべても、歴史認識のうえでの重大な後退があります。「歴史が判断するだろう」というのは、いいかえれば、“自分は侵略戦争と植民地支配の誤りを認めない”ということです。これは、これまでの「村山談話」をはじめとする従来の政府の立場さえ認めないということにほかなりません。いったい過去の侵略戦争と植民地支配の誤りを認めるのかどうか。この歴史認識そのものを、私たちは、きびしくたださなければなりません。

 私は、先日、韓国を訪問しましたが、日本の政界の一部に台頭している歴史をゆがめる逆流にたいして、非常に深い憤りの声をどこでも耳にしました。同時に、日本がこの逆流を克服して、日韓の本当の友好の道をすすんでほしいという強い願いも感じました。歴史をゆがめる逆流を克服することなくして、アジア諸国との本当の友情は築けないということを、私は先日の訪韓を通じても痛感いたしました。日本共産党こそ、その役割を果たしうる歴史をもつ党であり、責任をもつ党だということを、心に刻んでがんばりぬこうではありませんか。(拍手)

憲法、教育基本法改定――
狙いがむき出しの形で明らかに

 第二は、憲法改定と教育基本法改定の問題です。

 安倍氏がそれを正面から押し出していることについて、その重大な危険性を、私たちはいささかも軽視するわけにはいきません。

 同時に、私は、安倍氏によって、その狙いが何かが、むき出しの形で明らかになってきた。つまり、事の真相が分かりやすくなってきた。これをとらえた論戦とたたかいが大切だと思います。

「海外で戦争する国」づくりの狙いを、安倍氏自らがかたっている

 憲法改定についていいますと、安倍氏は、解釈改憲で集団的自衛権の行使をできるようにする、同時に、五年以内に明文改憲をおこない憲法そのものを変えてしまう――二重の企てをすすめることを明言しています。憲法改定が実現する前でも、集団的自衛権の行使をすぐにでもできるようにするということが、安倍氏の主張ですが、「集団的自衛権の行使」ということを正面から押し出しているというところに、改憲策動の本音がむき出しになっています。「集団的自衛権の行使」とは、海外で武力行使をするということです。改憲の狙いは、まさに「海外で戦争をする国」づくりにあるということを、安倍氏ははっきりと語っているのであります。

 小泉首相の場合は、私が改憲の狙いについて「海外で戦争をする国」づくりにあるというと、小泉氏は「いやいや海外で戦争するなんて毛頭考えていません。自衛隊が存在しているのだから、それを憲法に書き込むだけです」と言って、本音を隠しました。

 しかし、安倍氏は、本音をむき出しにしている。これは、逆に言えば、分かりやすくなっているということです。私たちが、「憲法改定の本当の狙いは『海外で戦争をする国づくり』にある」と指摘したことを、安倍氏自身が語ってくれているのです。

 安倍新体制に正面から対決して、国会のたたかいでも、国民運動でも、その危険を正面から知らせ、このたくらみを必ず打ち破る、そのたたかいを前進させようではありませんか。(拍手)

反「教育」論を徹底的に追及する

 教育基本法改定の問題は、今国会の最大の焦点になるでしょう。

 前国会で私たちは、政府が提出した改定案の問題点について、二つの憲法上の大問題があるということを、明らかにしました。

 一つは、憲法一九条に保障された国民の内心の自由を侵害し、「愛国心」など徳目の強制をはかるという問題です。

 もう一つは、憲法の諸条項で保障された教育の自由、自主性を侵害して、教育への無制限の国家統制をはかるという問題です。

 この到達点にたって、この国会で、さらにどういうふうに政府の改定案を追い詰め、廃案に追い込んでいくのか。私は、いくつか新しい条件があると思います。

 第一は、二十一日、東京都で行われている「日の丸・君が代」の無法な強制について、東京地裁が、教育基本法一〇条違反、憲法一九条違反であり、違法行為をやめよという画期的な判決をだしたことです。これは非常に重要な判決で、判決文で指摘されている問題点は、わが党が国会で提起した法案の問題点そのものです。そのことを、司法が認めたということは、きわめて重要な意義をもっています。ですから、これも力にして、政府をおおいに追い詰めていく必要があります。

 第二は、安倍氏のとなえている「教育」論そのものの問題です。それは、いくつかのきわめて反動的な要素から成り立っています。

 一つは、「学校選択制を全国に広げる」というのです。しかし、これは私たちが批判してきたように、そういうやり方をとれば、競争とふるいわけが激化して、大変なことがおこります。新入生ゼロの学校もこの動きのなかでつくられました。

 二つ目は、「学校評価制の導入」ということです。これは、国が監査官を全国に配置して、学校、教師、子どもたちを監視するというものです。監視して「評価」するという。国が上から「評価」して、国が序列化・ランク化する。戦前、視学官というものがありましたが、まさにその復活です。上から徹底的に締め上げて、国家による監視と統制をおこなうというのです。

 三つ目は、予算で差別することです(「学校バウチャー制」)。「学校選択制」を広げ、「学校評価制」で国が上から一方的に「評価」し、学校を序列化して、国が「いい学校」と考えた学校には、予算を配分する。「悪い学校」はつぶしてしまう。

 安倍氏の「教育」論なるものは、こういう三つの要素で成り立っています。私たちが最も強く批判してきた、競争とふるいわけの教育、教育に対する無制限の国家統制を、まさにあからさまな形ですすめようというのです。このように、安倍氏は、教育基本法が改悪されたら何が起こるかを、あからさまな形で、わかりやすい形で語っているわけです。

 小泉首相の場合は、あまり「教育」について語りませんでした。中身をもたなかったのかもしれません。安倍氏の場合は、教育基本法を改悪して、何をやるかを赤裸々に語っています。これは、非常に危険なことですが、教育基本法が改悪されたら何が起こるか、たいへん分かりやすく国民の前に明らかになってきつつあるわけです。私は、安倍氏の教育論とはいえない反「教育」論を徹底的に追及し、廃案に追い込むために全力をあげよう、みんなで力をあわせてがんばりぬこうということを、訴えたいのであります。(拍手)

 教育基本法の問題では、国会論戦とともに、政府の改悪案を阻止するという点では野党間の連携が確認されていますので、これも重視する必要があります。そして、十月十四日には、国民大集会も予定されておりますので、国民運動と連帯して、この悪法を葬る国会にしていきたいと思います。

「再チャレンジ」――
格差と貧困の広がりの実態、責任を無視した空論

 第三に、暮らしの問題では、この間、格差社会と貧困の広がりが、いよいよ重大な社会問題となりました。

 安倍氏は、「再チャレンジが可能な社会を」ということをうたい文句にしています。しかし、NHKの特集番組でも紹介された「ワーキングプア」ということが、いま大問題になっています。働いても働いてもまともな暮らしができない。だれ一人努力していない人はいないのに、努力しても報われない社会になっていることを鋭く告発したものでした。

 「再チャレンジ可能な社会を」というのは、この実態をまったくみない空論です。そして、いったいだれが「ワーキングプア」という状況をつくりだしたのか。安倍氏もその中枢にいた自民党政治がつくったわけです。人間らしい労働のルールを破壊し、社会保障を破壊し、庶民増税を押しつけて、この住みづらい社会をつくってきた。その反省抜きに「再チャレンジ」といっても、むなしいばかりではありませんか。

 今度の国会では、税金の問題が非常に重要になってきます。いま、お年寄りにたいする雪だるま式の増税と負担増が日本列島で大問題になっています。それにくわえて、消費税増税の不安が高まっています。これに対する正面からの論戦が必要です。

 この点では、税金のあり方を根本から問う論戦を、私たちはやっていきたいと思います。すなわち、いま大企業は、バブルの時期をはるかに上回る、営業利益でいえば一・五倍くらいの空前の利益をあげています。しかし、法人税の税収は、税率が大幅に軽減された結果、十九兆円から十三兆円に大幅に減っています。

 ところが安倍氏は、なんと大企業向けに六千億円の減税をおこなうという方針を固めたと伝えられました。驚くべきことです。空前のもうけをあげている大企業に、もうけにふさわしい負担を求めて当然なのに、もっと減税してやるとは、途方もないことです。その一方で、平気で庶民に増税を押しつけるなどということは、絶対に許すわけにはいきません。

 私たちは、税金のあり方を大本から問い、空前のもうけをあげている大企業に対する行き過ぎた減税こそ見直せということを強く求めて、この問題でも、正面からの論戦をしていきたいと思います。

変革の胎動をはらんだ激動期――
選挙勝利に道を開く国会に

 私は、韓国とパキスタンの訪問を、この間おこないました。双方の訪問をつうじて痛感したことは、わが党の歴史と綱領の生命力とともに、世界は変わりつつあるということであります。私は、日本も例外ではないと思います。この日本の政治も、大きな目でみれば、変革の胎動をはらんだ大きな激動期に入りつつあると思います。

 しかし、わが党にとって、どんな激動のもとでも、自動的な前進はありません。「風」頼みの前進はありません。みずからの力で党を強く大きくし、知恵と力を尽くして、国会論戦で「日本共産党、ここにあり」という論戦をし、みずからの力で「風」を起こし、来年の二つの全国的選挙戦――参院選といっせい地方選に勝利する。その勝利に道を開くような臨時国会にするために、お互いに力を合わせて、がんばりぬきましょう。以上をもって開会にあたっての私のあいさつといたします。(拍手)


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