2006年9月24日(日)「しんぶん赤旗」

イラク人死者6600人

7―8月 テロ頻発、米軍作戦下で


 国連イラク支援派遣団(UNAMI)は二十日、イラクで七―八月の二カ月に六千五百九十九人の民間人が殺され、五―六月の死者を約七百人上回ったとする報告書を発表し、イラク情勢が過去最悪の事態に至っていると警告しました。9・11米同時テロ五周年を前後して、ブッシュ米大統領が繰り返し強調してきた「イラクでの自由と民主主義の成果」は、現実によって否定されています。(居波保夫)

 特に月間としては七月の民間人の死者が三千五百九十人に上り、過去最悪を記録しました。その大部分は首都バグダッドに集中。七月には同市で米軍が「掃討作戦」と称する大規模な軍事作戦を強行していました。

 UNAMIの報告書は、イラク中央政府が「法に基づく統治」に向けた努力をしているにもかかわらず事態が悪化していると指摘。市場、モスク(イスラム教礼拝所)、巡礼者に対するテロ攻撃が頻発し、宗派抗争や報復攻撃が続いていると強調。民兵集団や組織犯罪が増大し、市民が無差別に殺りくされているとしています。

 ひどい拷問の跡のある遺体や処刑されたとみられる遺体が全国各地で何百と発見されていると述べています。その対象は軍・治安部隊要員のほか、判事や弁護士、ジャーナリストや出版関係者に及んでいます。

 特に女性の場合、社会進出はおろか、自由な外出、保健サービスや教育を受けることさえ困難です。治安の悪化に加え、「戦闘的集団」の不寛容さによって女性の権利がますます制限されていると報告書は指摘しています。

 報告書はさらに、米国主導の多国籍軍が過度の武力行使に出ており、市民の移動を制限している事例がいくつも聞かれると明記。また、イラク司法機関の能力不足もあって、何千人もの被拘束者が既存の法の枠外で拘束され続けていることにも注意を喚起しています。

 ブッシュ大統領は十九日の国連総会での演説で、「イラクは国民の願望を体現する民主的政府を持つに至った」とイラク戦争・占領の成果を改めて誇示し、「イラクで民主主義が成功を収めるよう援助し、イスラム世界の希望のかがり火にしたい」と述べました。

 しかし、その直前に演壇に立ったアナン国連事務総長は、「基本的人権をないがしろにしたテロとのたたかい」がテロ行為を生み出す結果となっていると指摘し、暗にブッシュ政権を批判しました。同氏は十一日に安保理に提出した報告書でも「イラクはいま、世界で最も暴力の激しい地域だ」「暴力が続けば、国の分裂の危険、内戦の可能性さえある」と厳しく警告しています。


 国連イラク支援派遣団(UNAMI) イラクで人道復興支援活動を実施する国連の各組織を統合する機関として、二〇〇三年八月十四日採択の安保理決議一五〇〇で創設されました。任期は一年。これまで毎年更新され、今日に至っています。復興と人道支援で国連の役割を拡大するものとして期待される一方、米軍主導の占領下で活動が制約されている面もあると指摘されています。


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