2006年9月20日(水)「しんぶん赤旗」

主張

情報収集衛星

宇宙の戦争利用に反対する


 日本が情報収集のための光学衛星二号を打ち上げ(十一日)、情報衛星は三基体制となりました。他国領土にたいする情報収集活動は二日に一回から一日一回に変わります。来年初め打ち上げ予定のレーダー衛星二号で計画の四基体制が確立します。

 日本でも安倍官房長官らが「敵基地攻撃」論やそのための能力保有論をふりまいているだけに、衛星による情報収集は重大問題です。

敵基地攻撃論を加速

 情報収集衛星は、地上の一メートルの物体を識別できる光学衛星と雲がかかっていても一―三メートルの物体を解析できるレーダー衛星を組み合わせて、他国領土内の部隊配備や装備の様子、変化を把握します。

 政府は、一九九八年の北朝鮮の弾道ミサイル発射を好機とばかりに情報収集衛星四基の保有・運用を決定し、小泉内閣が二〇〇三年三月に最初の二基を打ち上げました。〇四年に予定した残り二基の打ち上げは失敗しましたが、今回ようやく三基体制になりました。

 情報収集衛星といっても実態は軍事偵察衛星です。日本がアメリカの先制攻撃戦略にそった軍事的役割を果たすために、アメリカの情報に依拠しつつみずからも他国の軍事動向を把握できるようにすることがねらいです。単に動きを知るだけと思ったら大間違いです。アメリカとともにたたかうことに主眼がおかれているのです。

 憲法九条が、武力の行使を「国際紛争を解決する手段としては永久にこれを放棄する」と明記している以上、国際紛争に結びつくスパイ活動が許されるはずはありません。

 しかも、衛星による情報収集は、小泉内閣の「敵基地攻撃」論やそのための「能力保有」論を加速させることにもなります。

 小泉内閣の「敵基地攻撃」論は、相手が弾道ミサイルに燃料を注入しはじめれば日本への「武力攻撃の着手」だといって自衛権が行使できるというものです。日本への武力攻撃がないのに日本から先に武力攻撃するのは先制攻撃です。情報収集衛星が送ってくる情報はそのまま攻撃目標の決定に利用されかねません。また、そのための長距離攻撃兵器の開発にもつながりかねません。戦争を誘発するようなことはやるべきではありません。

 政府は、情報収集衛星保有の目的を安全保障と大規模災害への対処といっていましたが、大規模災害は方便にすぎないことは明白です。衛星の運用や利用省庁の選定にあたる情報収集衛星運営委員会が内閣官房、防衛庁、警察庁、公安調査庁、外務省で構成されていることや大規模災害の主務官庁である国土交通省が利用省庁にもされていない実態からも軍事中心はあきらかです。

 運用はいっさい秘密です。国会と国民に知らせもせず、説明もできないことをやるべきではありません。

 四基の衛星打ち上げに五千億円以上使っています。五年ごとに更新するたびに同額が必要となり国民生活予算を圧迫しつづけます。終わりのない無駄遣いはやめるべきです。

守るべき国会決議

 一九六九年の衆議院決議は宇宙利用について「平和の目的」に限るとうたっています。政府はこの「平和」の意味について「非軍事」と説明してきました。国会決議をくつがえし軍事利用を認める自民党の宇宙基本法案などとんでもありません。

 憲法九条と国会決議を守ってこそ、軍事大国による宇宙軍拡を批判もできるし、平和にも貢献できます。


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