2006年9月18日(月)「しんぶん赤旗」

シリーズ 大企業応援政治を洗う

ここが知りたい特集

何のため?誰のため?

労働法制の規制緩和


 シリーズ「大企業応援政治を洗う」の四回目は、労働法制の規制緩和です。何のため、だれのための規制緩和だったのでしょうか。(吉川方人)


収入格差が深刻に

 派遣労働などの非正規労働者は、二十歳から二十四歳の若年層で、一九九二年の10・7%から二〇〇二年には31・8%と三倍化しました。これは在学者を除く数値で、およそ三人に一人が非正規雇用となっています。

 同じ十年間に、二十歳代の収入は、年収百五十万円未満の低所得層と五百万円から六百九十九万円の層の割合が増え、百五十万円から四百万円未満の層は減っています。とくに若い世代では、低所得の非正規労働者の増加による格差の拡大が大きな社会問題となっています。

 非正規雇用が増加する契機の一つとなったのが、派遣労働を解禁する労働者派遣法です。

 大きな反対があったにもかかわらず、自民党、公明党、民社党の賛成で一九八五年に成立し、八六年七月に施行されてから二十年がたちます。

 この間に労働者派遣事業所数は二万に達し、登録者を含めた派遣労働者数は二百二十七万人、売上高が二兆八千六百十五億円になるなど、派遣事業は急成長しています。

「人貸し業」が復活

 労働者派遣とは、労働者をまるでレンタル品のようにほかの会社に派遣して働かせ、料金をもらうものです。職業安定法では「労働者供給事業」として禁じられてきました。この規定は、戦前に「工場法」などのゆるい責任すら逃れるため、企業が「人夫供給業」から脱法的に請負契約し、労働者は「ピンハネ」でさらに劣悪な労働条件におかれたことの反省から設けられたものです。

 労働者派遣法は、職業安定法の「例外」としてつくられて改悪が重ねられた結果、ほとんどの業種で派遣労働が可能になり、「偽装請負」などの違法行為も常態化しました。戦前さながらの「人貸し業」が復活しています。

大企業の要求通り

 派遣など非正規雇用の増大は、生産のコンピューター化、デジタル製品などの生産期間の短縮を背景に、好きなときに安い賃金で雇用し、簡単に解雇できる「雇用の流動化」をすすめたい大企業の要求に沿ったものでした。

 一九八四年には、経済同友会が、「余剰」労働者を企業外の「中間市場」に追い出すことを内容とする「ME(マイクロエレクトロニクス)化の積極推進と労使関係―中間労働市場の提案」という意見書を発表し、労働者派遣業の解禁を要求しました。九五年には、日経連(現在は日本経団連に統合)が「新時代の『日本的経営』」という報告書を発表しました。そこでは、今後、長期雇用の正社員として採用するのは「長期蓄積能力活用型」とされる少数の幹部候補生だけで、それ以外は派遣などの非正規雇用に置き換えていく方針を露骨に打ち出しました。一部の企業幹部以外の多くの労働者を想定する「高度専門能力活用型」「雇用柔軟型」というグループは、いずれも有期雇用、昇給無し、退職金・年金無しなどという構想を描き、それを実現しようとしてきました。

若年失業 高止まり

 非正規雇用が増えるのは、企業側の態度に問題があります。非正社員の割合が上昇する理由として企業側があげているのは、「労務コスト削減のため」が80%で、圧倒的多数を占めています(労働政策研究・研修機構「多様化する就業形態の下での人事戦略と労働者の意識に関する調査」)。

 トヨタ自動車など大企業の多くは、バブル期を超える史上最高益をあげる一方で、労働者の報酬は急激に低下しています。大企業は「コスト削減」のために、下請けなど企業グループ全体で、賃金が低く、社会保険料などの負担が小さい非正規雇用を大幅に増やしました。

 若い世代では、失業率が二十四歳以下で7・8%(七月)と高止まりしています。その一方で、非正規雇用は急増しています。これに対して、フリーターなどの非正規雇用者を「正規従業員として採用するつもりがない」という企業は六割を超えています(労働政策研究・研修機構「人口減少社会における人事戦略と職業意識に関する調査」)。

 若い世代での低所得者層や失業者の増加に対し、政府は「再チャレンジ」などといって就業対策を示そうとしていますが、格差と貧困の原因となっている労働法制の規制緩和についての反省はありません。逆に、財界・大企業の強い要望をうけて、労働時間の規制を外す「ホワイトカラーエグゼンプション」の導入や、解雇規制の緩和などさらなる労働法制の規制緩和をすすめようとしています。

 こうした大企業応援政治を根本から転換する必要があります。

 (このシリーズおわり)

グラフ

グラフ

労働の規制緩和の流れ(年表)

▼1985年

 労働者派遣法制定

 違法だった労働者派遣が専門的な13業種だけとして可能に

 自民、公明、民社が賛成

 日本共産党、社会が反対

▼98年

 労働基準法改悪

 いくら働いてもみなし労働時間で賃金がきめられる「裁量労働制」を専門職からホワイトカラー全般に拡大

 自民、民主、公明、社民、自由が賛成

 日本共産党が反対

▼99年

 26の対象業務以外は原則禁止とされていた労働者派遣が、建設、警備、港湾、製造業などを除き原則自由に

 自民、民主、公明、自由、社民賛成

 日本共産党が反対

▼2003年

 「物」の製造業への労働者派遣の解禁

 派遣期間の制限を1年から3年に延長

 自民、公明、保守が賛成

 日本共産党、民主、自由、社民が反対

 労働基準法改悪でパート、契約社員など期限付き労働契約の期限を1年から3年に延長(専門職は3年から5年に)

 「裁量労働制」の導入要件を緩和

 自民、公明、民主、自由が賛成

 日本共産党、社民が反対

グラフ

86年 労働者派遣法施行 専門的な13業種に限定

95年 旧日経連が「新時代の『日本的経営』」を発表

99年 派遣労働が製造業などを除き原則自由化

04年 製造業への派遣解禁


図

請負と派遣の違い

 請負というのは、民法の「請負契約」を根拠に、あるものを完成させて、それを引き渡して報酬を受け取るもの。「請負」には監督官庁もなく、労働者保護のための法律もありません。

 戦後に「労働者供給業」として禁止されましたが、1985年の労働者派遣法の成立前にも「請負」という形態での脱法的な派遣業者が存在していました。

 厚生労働省は、派遣労働と請負の区別基準として、請負業者は、労働者を指揮命令し、労働時間などを指示管理すること、資金や必要な機械、設備、材料などを自ら調達して業務を行なうことなどをあげています。

 「偽装請負」は、実態は受け入れ企業が指揮命令する「派遣」なのに、派遣期間を超えた労働者の直接雇用義務など労働者派遣法の労働者保護を免れるため「請負」のように偽装するものです。

図

グループ別にみた処遇の主な内容

長期蓄積能力
活用型グループ
高度専門能力
活用型グループ
雇用柔軟型
グループ
雇用形態 期間の定めのない雇用契約 有期雇用契約 有期雇用契約
対象 管理職・総合職・技能部門の基幹職 専門部門(企画、営業、研究開発等) 一般職
技能部門
販売部門
賃金 月給制か年俸制
職能給
昇給制度
年俸制
業績給
昇給なし
時間給制
職務給
昇給なし
賞与 定率+業績スライド 成果配分 定率
退職金・年金 ポイント制 なし なし
昇進・昇格 役職昇進職能資格昇格 業績評価 上位職務への転換
福祉施策 生涯総合施策 生活援護施策 生活援護施策

旧日経連「新時代の『日本的経営』」から


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