2006年9月9日(土)「しんぶん赤旗」

「最年少」と豪腕

囲碁第31期新人王戦U−25

決勝3番勝負 13日から

「しんぶん赤旗」主催


 史上最年少の名人戦リーグ入りの実績を誇る黄翊祖(こう・いそ)七段(19)か、石がぶつかり合ったときの腕力はピカ一と評判の松本武久六段(26)か――ともに初出場の二人による、囲碁第31期新人王戦U―25決勝3番勝負が13日から始まります。見どころをさぐりました。


さっそうと黄翊祖七段

ことし絶好調、松本六段

 両者の手合いは、今年六月の碁聖戦予選での対局が初めてです。このときは松本六段が勝っていますが、プロとして、二人のたたかいは始まったばかりです。

 黄七段は昨年四段に昇段したあと、すぐに名人戦リーグ入り。規定により七段へ一挙三段跳びの昇段を果たしました。十八歳六カ月でのリーグ入りは史上最年少記録。さっそうとしたデビューでした。

 同リーグでは残留こそできなかったものの、今村俊也九段、坂井秀至七段相手に白星を挙げる活躍をしました。入段以来の通算成績は103勝48敗。今年一月以降の成績は20勝12敗(八月末現在)。地にからく、しっかりした碁風と見られています。

 今期トーナメントでは、最初から有力な優勝候補の一人でした。一回戦以降、三谷哲也三段、首藤瞬四段、山本賢太郎四段、山田晋次四段を連破して決勝の舞台に躍り出ました。

 一方の松本六段は、黄七段とは対照的に、ねじり合いの局面でもっとも力が出る碁風です。今期トーナメントでも、その碁風を存分に発揮しています。若きタイトル保持者・河野臨(こうの・りん)天元を破って勝ち上がってきた張豊猷(ちょう・りゆう)七段との準々決勝は、わずか89手の短手数。準決勝の安斎伸彰三段戦も164手で相手の大石を取っての勝利でした。

 入段以来の通算成績は277勝118敗1持碁、勝率7割。とくに今年は絶好調で、一昨年、昨年と17勝止まりだったのが、今年は八月末までにすでに17勝(6敗)を上げています。

見どころは? 観戦記者に聞く

楽しみな勝負

 佐藤伸さん プロ棋士の碁を「力が強い」と評するのはいささか気がさす。力だけで勝ち抜けるほどこの世界は単純ではないからだ。

 にもかかわらず、松本武久の豪腕は格別。名人リーグの経験で一回り大きくなっているに違いない黄翊祖にどこまで通用するかが見ものである。楽しみな三番勝負となった。読者といっしょに、たたかいの碁の醍醐味を心ゆくまで味わいたい。

棋風は好対照

 中村智佳子さん U―25が導入された今年、興味深い対戦が実現した。

 本戦出場三十三人中六番目の若さの黄翊祖七段(19)と、二十六歳になったばかりの松本武久六段の世代対決である。

 棋風も好対照。パワフルな松本にたいし、黄は地にからく、計算に自信を持っている。

 どちらが自分のペースに引きずり込むか、その点に注目したい。


借りを返します

 黄翊祖七段の話

 新人王戦には去年初めて出場し、準決勝で井山くん(裕太七段)に負けました。

 今期のトーナメントは、隣の山と比べたら楽だと思いましたが、それでも首藤四段との碁は危なかった。山田さん(晋次四段)との準決勝は、去年の借りを返そうと頑張りました。

 松本さんとは、一回、この六月に碁聖戦であたり、負けました。その借りを返したい。松本さんは手が見えて早打ち、力が強い碁です。私の碁は、張栩さん(ちょう・う、名人)の影響も受けていまして、地にからい碁です。地をとってうまく逃げ切れれば、それが理想です。

 三番勝負は、なんと言っても体力が大事なので体調を万全にし、あとは運を天にまかせようと思っています。

 【黄翊祖七段】 台湾出身、十九歳、鄭銘コウ九段門下。二〇〇二年入段、〇五年四段、同年名人リーグ入りにより七段へ昇段。


早いリードを

 松本武久六段の話

 今期の新人王戦は一回戦の大橋拓文三段に苦しい碁を勝ったのが大きかった。その後はだんだんと内容が良くなってきました。新人王戦では予選に出てもすぐ負けていたので、今回本戦に出てそのまま決勝に出れるとは思っていませんでした。

 今年は、おととしや去年と比べて気持ちの面で充実していて、調子はいいですね。

 黄さんはしっかりした碁です。細かい碁になると分が悪そうです。六月に一度勝っていますが、「まさか」という感じでした。珍しくうまく打てたかもしれません。

 三番勝負はきびしい勝負になるのは間違いありません。一局目が大事なので、いかに早くリードできるかが勝負です。悪くしてしまうと逆転するのは大変そうですから。

 【松本武久六段】 長崎出身、二十五歳、趙治勲十段門下。二〇〇七年入段、〇三年六段昇段。


 新人王戦 今期から出場資格を二十五歳以下(四月一日時点)に引き下げ、「新人王戦U―25」として再スタートしました。本戦・決勝の持ち時間も一時間短縮し、三時間としました。

 今期決勝三番勝負は、出場した日本棋院と関西棋院の棋士五十三人の頂点を争うたたかいです。


3番勝負の日程

 第1局    9月13日(水)

 第2局     同20日(水)

 第3局    10月4日(水)

 場所はいずれも東京・日本棋院

表

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