2006年9月7日(木)「しんぶん赤旗」

新解禁文書

日本への核兵器持ち込み

米国防総省が証明


 核問題研究者の新原昭治氏は八月末、ワシントンで、今回の日米核密約に関する新文書を公開した「ナショナル・セキュリティー・アーカイブ」のウィリアム・バー氏にインタビューしました。新原氏は、「この米政府内部文書は、一九六八年に核兵器政策に深くかかわっていたモートン・ハルペリン国防副次官補(当時)が作成を提案したものであり、解禁請求もハルペリン氏の示唆によるものだったと、バー氏は教えてくれた」と語り、新文書は日米核密約下の核持ち込みの事実を裏づける重要な証拠だと強調しています。

 日米間の核秘密取り決めの全文「討論記録」は、日本共産党が入手した米政府解禁文書「V 日本と琉球諸島における基地権の比較」(一九六六年作成)に記載されていたものです。二〇〇〇年四月の国会の党首討論で不破委員長(当時)が明るみに出しました。

 その後、この「討論記録」は、調印したばかりの日米安保条約について当時のハーター国務長官が米議会で答弁する際の資料として国務省が一九六〇年六月に作成した「議会説明資料集」に収録されていたことが判明しました。同資料集には、核密約を説明する別の国務省文書「日米安保条約のもとでの協議取り決めの解説」も収録されていました。

 今回の文書は、これに次いで核密約の存在を重ねて裏づけるものです。しかも密約にそって核兵器持ち込みが実際に行われていたことを国防総省が証明している点が重大です。

 今回の文書はまた、「遺憾なことに(核密約の)解釈は、そのまま後継政権に引き継がれるとは限らなかった」として、一九六八年一月のある事件の前に確認し直したと明記しています。これは、米原子力空母エンタープライズの佐世保寄港直前に核密約を日米両政府間で再確認したことを示唆しています。これも新しい点です。

 核密約の全文や米政府の関連文書、核密約に関する不破氏の国会質問などは、同氏の『日米核密約』(新日本出版社、二〇〇〇年刊)に収録されています。(坂口明)


核密約関連の新解禁文書 大要

 このほど一部解禁された米国防次官補室作成の一九六八年十月八日付機密文書「核兵器取り決め」(草案)の大要は、次の通りです。なお、〔…〕は削除された個所、( )内は訳注です。(日本)(日本の)は、文字数から、そのように推測される部分です。一九六〇年に署名された日米核密約を示す「記録」「討論記録」は大文字で始まっているため、「記録」「討論記録」と表記しました。

要約

 このような兵器(核兵器)を搭載する米海軍艦艇は実際に〔…〕(日本の)港湾に定期的に寄港している〔…〕。

 この「記録」は、実際には〔…〕を除外し、〔…〕政府との間で、〔…〕核兵器を「持ち込む」(イントロデューシング)前に、〔…〕

 〔…〕は、われわれの解釈に異議を唱えてこず、現政権の指導者たちはわれわれの慣行を承知していると想定することができる。

法的側面

 また段落2(c)は以下のように規定している(「討論記録」で核持ち込みが自由に行えると規定したのが段落2(c)。行数からみても、この部分は同段落を全文引用していると推察される)。

艦船寄港

 および、そのような兵器を搭載している艦船の通過(トランジッティング)の場合は除き、〔…〕。

 われわれの手順について誤解がないようにするため、(駐日アメリカ)大使は〔…〕に対して、この問題を提起した。事前協議なしの「持ち込み(イントロダクション)」の禁止とは、〔…〕(日本)の領土に核兵器を置くか設置するという狭い意味であり、米国艦船に搭載された核兵器が〔…〕(日本の)領海や港湾に進入(エンターリング)する場合には適用されないと米国が解釈していることについて、共通の理解が存在することを、米国のこの「討論記録」は確定している。〔…〕(日本の)港湾にいる米国の艦船が核兵器を搭載するか搭載するであろうことについて、外務大臣にはいかなる声明も示唆も行われなかったが、実際には米国艦船は定期的に、そうしてきた。

 われわれは、〔…〕(日本の)歴代政府がこの区別を受け入れ、従って、われわれの慣行について同じような認識をもっていると想定してきた。遺憾なことに、〔…〕(日本の)諸公式声明によれば、この「討論記録」の解釈は、そのまま後継政権に引き継がれるとは限らなかった。一九六八年一月の〔…〕(佐世保への空母エンタープライズ?)の寄港に先立って、〔…〕

航空機通過

 〔…〕の領空を飛ぶか通過する米航空機に搭載された核兵器に対応することを意図されていた。これも〔…〕(共通の?)理解であるかどうかを確かめる機会はなかった。しかしながら、われわれは以下の点を示した〔…〕

作戦運用

 A 核兵器の海外への空輸移動あるいは洋上配備

 ―戦域間空輸(高高度)のルートは、〔…〕標準的なルート設定に含まれていない。

 B 核兵器の海外への海上輸送あるいは洋上配備

 ―一九六七年一月以降、核兵器を搭載する米海軍補給艦船が以下の港湾に入港した。〔…〕

 ―一九六七年一月以降、核兵器を搭載する米海軍戦列艦船(戦闘艦)が以下の〔…〕の港湾に入港した。〔…〕


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