2006年9月6日(水)「しんぶん赤旗」
閣議決定 市場化テスト基本方針
公共サービス後退 コスト増お構いなし
五日閣議決定された市場化テストの基本方針は、公共サービスにたいする国の責任を投げ捨て、営利企業のもうけ口に提供しようというねらいが露骨に示されています。
営利企業任せ
今回、市場化テストの対象とされた事業は、国民生活や権利を守るために国が責任をもっておこなう事業ばかりです。
例えば、ハローワークの職業紹介事業は、憲法が定める国民の勤労権を保障するための公的な安全網です。法令違反企業への指導など労働条件向上の役割も担っており、民間任せにできません。
年金保険料の収納や登記所の証明書交付なども厳正・公正な立場から対応が必要なうえ、個人情報を扱うため民間まかせにできない業務です。
サラ金の強制取り立てやマンションの耐震偽装事件を見るまでもなく、これらの業務を営利企業まかせにすれば、人権侵害や不正行為が横行しかねない問題です。
見逃せないのは、ハローワークの関連事業である人材銀行など五事業で省庁側は「入札募集者と参加者が同じなので対策が必要だが、時間的に間に合わない」(厚労省)として、入札参加を見送ることです。
これでは民間に丸投げするに等しく、“官と民を競争させる”という市場化テストの建前さえ投げ捨てるものです。
しかも、ハローワークの事業では、民間より官の方がすぐれていることが実証されています。東京・足立区で二年半、リクルートとハローワークによる職業紹介がおこなわれました。ハローワークでは約四千六百人が就職したのにたいし、リクルートはわずか六十人にすぎませんでした。
もうけ提供へ
官の方がすぐれている事業を入札によってあえて民間に提供するのは、ビジネスチャンスの拡大をねらう財界の要求にこたえるためです。
例えば、年金保険料など公金徴収は、手数料と高金利で大もうけしようと信販・銀行業界が参入を求めてきました。
今回の閣議決定は手はじめで、聖域を設けず、必要な措置を講じるとしています。公共サービスが後退しようが、コストが高くつこうが企業がもうけさえすればよい――「サービス向上」や「効率化」を掲げたはずの「小さな政府」路線の破たんは、いよいよ明らかです。(深山直人)
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