2006年9月1日(金)「しんぶん赤旗」

労政審分科会再開

厚労省が素案撤回

使用者側 残業代不払い制に固執

労働者側 長時間労働助長と批判


 雇用のルールを定める労働契約法の制定や労働時間法の改定をめぐって中断していた労働政策審議会(厚生労働相の諮問機関)の労働条件分科会が八月三十一日、二カ月ぶりに再開されました。


 審議中断の原因となった中間とりまとめ素案について厚労省は、「意見を踏まえて議事を進行してほしい」とのべ撤回する考えを表明。今後は重要事項について審議をすすめていくこととし、厚労省が両者と調整したうえで次回会合に審議すべき重要事項について提案することになりました。

 素案は撤回されたものの、厚労省は来年の通常国会で法案提出できるよう議論をすすめていく姿勢を変えていません。

 素案にふくまれていた何時間働いても残業代が一円も払われない制度(自律的労働時間)や、金銭を払えば解雇が自由にできる制度(解雇の金銭解決)などの議論は続けられる見込みです。

 この日の会合では、厚労省が労使の代表から聞き取りした意見が報告されました。

 雇用のルールを定める契約法について、労働者側は「職場でおこっている問題に対応できる法律とすべき」だとして、労働者の同意もなしに労働条件の引き下げを認めないことや、解雇の金銭解決反対、有期労働の規制などを求めています。

 使用者側は、「労使自治を基本とすべき」だとして有期労働など法規制に反対。労働者の同意がなくても会社の決める就業規則で労働条件の引き下げができるようにすることや、解雇の金銭解決の導入を求めています。

 残業代不払いの自律的労働制度については労働者側が「長時間労働を助長するので反対」としているのにたいし、使用者側は「早期に導入すべきである」としています。

 時間外割増率について労働者側は労働時間削減のため50%に引き上げるよう求めていますが、使用者側は「コスト競争力が落ちることになる」として反対しています。

 議論のなかでは、労働契約法制について使用者側が「法規制で一律に規制するのは無理。基本的なことは労使自治にまかせるべき」だとのべたのにたいし、労働者側は「労使紛争が増加している現実を見るべきで、法規制が必要だ。労使自治にまかせれば、多くの職場は労組もなく使用者に従わざるをえないのが現実だ」と指摘しました。

 労働時間規制を取り払い、際限なく働かせることができる自律的労働時間制度について、使用者側は「労働時間ではかれない仕事が増え、労働時間にかかわりない働き方が広がっている」と必要性を強調しました。

 これにたいし労働者側は「奇弁だ。長時間労働による過労死や過労自殺、若い人のなかにひどい長時間労働が広がっているのが現実だ。そこにそんな制度を入れたらどうなるのか考えるべきだ」と批判しました。


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