2006年8月31日(木)「しんぶん赤旗」

主張

集団的自衛権発言

日米軍事介入への道開く危険


 自民党総裁選候補者が、日米同盟強化のため集団的自衛権の行使を認めよと発言しています。安倍官房長官は共同作戦している相手が攻撃されたとき「黙って見ていなければいけないのか」といいました。麻生外相は「自分が襲われたら助けてもらうのに(襲われた)同盟国の船は勝手にやってで国際社会に通用するか」とのべています。

 先の日米首脳会談は「世界の中の日米同盟」をうたい、アメリカの戦争支援の拡大・強化をうちだしました。両氏の発言は、そのために集団的自衛権の行使を主張して、対米忠誠心を競い合うものです。日本の平和と安全にとって重大です。

制約なしの参戦

 集団的自衛権の行使を、日本が外国から武力攻撃を受けたときの「自衛」の話だと思ったら大間違いです。日本が攻撃もされていないのに、同盟国アメリカが戦争をしかけたら、アメリカの指示で自衛隊を派兵し、自衛隊が米軍と一緒に戦争せざるをえなくなるものです。いやおうなしに日本を戦争にかりだす集団的自衛権の行使を、武力行使を禁止した憲法が許すはずはありません。

 集団的自衛権は、国連憲章五一条にもとづくと称して、侵略戦争を正当化するために使われてきました。アメリカは南ベトナムのかいらい政権からの要請を口実にベトナム全土を侵略しました。旧ソ連も同盟国政府の要請を口実にチェコスロバキアなどを侵略しました。集団的自衛権は侵略の論拠となってきたのです。「襲われたら助けてもらう」という言い分は歴史的事実と違います。国際社会がめざした戦争違法化を無にする集団的自衛権の行使などとんでもありません。

 ブッシュ米政権の国家方針は先制攻撃戦略です。大量破壊兵器があるとうそをついてはじめたイラク戦争は、まぎれもない国連憲章違反の先制攻撃戦争です。集団的自衛権の行使は、日本をこのアメリカの戦争に参加させ、イギリス軍並みの制約のない戦闘行為に道を開くものとなります。日本を海外で「戦争をする国」にさせるわけにはいきません。

 集団的自衛権行使の発言は、「周辺事態法」や「武力攻撃事態法」をもっと使い勝手のいいものにすることもねらっています。

 アメリカいいなりに一連の戦争法をつくったものの、集団的自衛権の行使が禁止されているため、武力を使ってアメリカを守ることはできません。「周辺事態法」では米軍を支援している「後方地域」に戦闘が波及すれば自衛隊は逃げるしかありません。「武力攻撃事態法」では、自衛隊は現場にふみとどまることはできても米軍を守ることはできません。安倍、麻生両氏の発言は、こうした制約を完全にとりはらい、米軍を守り、米軍と一緒にたたかう態勢をつくろうというものです。

 戦争法を使い勝手のいいものに変える集団的自衛権の行使は、亡国の主張です。絶対に認めることはできません。

アジアに新たな脅威

 アメリカいいなりに日本が海外で武力を行使する道をすすむことは、かつて日本が侵略したアジアにとりわけ大きな脅威となることはいうまでもありません。首相や官房長官ら閣僚が侵略戦争を正当化する靖国神社参拝をくりかえしているだけになおさらです。アジア諸国との関係をいっそう悪化させます。

 アジア外交の立て直しは急務です。憲法を守り、「戦争をする国」にさせないことがいよいよ重要です。


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