2006年8月27日(日)「しんぶん赤旗」

政治の流れと共産党

参院比例候補の手記


 日本共産党の五人の参院比例候補が各地をとびまわっています。さまざまな方たちとの出会い、対話を通じて実感していることは―。手記を寄せてもらいました。(随時掲載)


何でも米のまねダメの声

井上哲士 参院議員

 「郵便の父」といわれる前島密(ひそか)。生家は新潟県上越市にあります。その上越商工会議所の田中弘邦会頭と先月、懇談しました。田中氏は元全国特定郵便局長会会長です。懇談に先立ち、同市にある前島密記念館に立ち寄りました。印象に残ったのは、前島密が最初から全国均一の郵便サービスが必要だと考え、そのためには国が責任を持って行うべきだとして郵政事業を始めたことでした。

 懇談の最初にこのことをお話しすると、田中さんもわが意を得たりの表情。特定郵便局が地域社会のために果たしてきた役割を強調され、「市場経済論理だけでやれば郵政事業はおかしくなる」「何でもアメリカのやり方のまねではだめ。日本にふさわしい品格ある社会が必要」と述べられました。

 郵政問題に限らず、地方や地域社会が切り捨てられる危機感が立場の違いを超えて広がっています。

切り捨て困る

 長野県下の最大規模の農協、JA佐久浅間での懇談では、新農業政策で支援の対象になる四ヘクタール以上の農家は佐久市ではわずか1%であることが話題になり、「一握りの人しか救われない。まったく農業の実情とかけ離れている」(岩下昭代表理事)との厳しい声がだされました。

 岐阜県下呂市の山田良司市長は、アナログ放送打ち切りによる中山間地の負担や医師不足問題を語り、「地方分権はいいが、地方切り捨ては困る」と強調されました。

 社会保障の切り捨てに対しても「もう黙ってはいられない」と怒りの声が広がっています。この間出席した長野県、三重県、名古屋市での障害者自立支援法についての懇談会は、いずれも用意した椅子も時間も足りなくなるほど多くの参加者がありました。浜松市では、ある授産施設の施設長さんに事前に連絡して訪問すると、関連する作業所の施設長さんを呼んでくださっていました。どこでも、四月施行以降の大変な実情とともに実態調査をして抜本改善に取り組む日本共産党への期待の声をいただきました。

「亡国の発想」

 また、ある県の歯科医師会の会長さんを訪問すると「医療の専門家を排除した経済財政諮問会議で、財界人や経済学者、官僚だけで医療改革が論議されてきた。所得の格差が医療の格差につながるアメリカのような医療にしてよいのか」と語られ、「医療に市場原理を持ち込むのは亡国の発想」との思いは私たちと共通のものでした。

 どの地域でも、長く保守の立場に身を置いたみなさんが、「九条の会」の運動に賛同されているのも特徴。石川県では九条の会・石川ネットの呼びかけ人で山中温泉観光協会会長の上口昌徳さんと懇談しました。上口さんは、元自民党県連幹事長で県議会議長もつとめられた人。「九条は憲法に埋め込まれたダイヤモンド」だとのべ、「野に直言なき国家は滅びる」という言葉を紹介して激励してくださいました。「奥深い流れの変化」を実感し、この流れをもっと大きくと駆け巡る日々です。

 いのうえ・さとし 48歳。活動地域=北陸信越(新潟、長野、富山、石川、福井)、東海(静岡、愛知、岐阜、三重)、京都


「社会保障主役へ」に共感

山下よしき 元参院議員

 先人たちの築いてきた地域社会が、国の政治によって壊されようとしています。そのことを懸念し、抗(あらが)う人々が、じわりじわりと広がっています。

地域から叫び

 奥深い山々と豊かな水に囲まれた奈良県吉野郡下北山村。合併ではなく自立の道を歩む上平一郎村長と懇談しました。人口千二百人の村で、赤ちゃんが毎年十人生まれる目標を立て、ほぼ達成しているとのこと。雇用創出の研究と実践、全世帯の一割に及ぶ村営住宅の建設、都会の小学生を長期間招く「やまびこ留学」など、この村で、住み、働き、教育が受けられるよう、こまやかな努力をしていました。もし下北山村から役場がなくなったら、こうした地域に密着した施策を誰が考え、誰が推進するのでしょう。

 同じく吉野郡の“日本一広い村”十津川村。藤沢豊助役は「いまでも役場に来るのは一日仕事。役場がなくなったら村民の声は届かなくなる」と話します。ここでも村営バスの運行や、温泉を生かした観光業の振興など、村民の生活を支える数々の取り組みがされていました。

 山あいの村で、営々と続けられてきた人々の暮らし。それを支えてきた自治体行政。その努力を一切評価せず、国の借金のツケ回しのために、ただ切り捨てるだけの政治は、必ず人々から見放されることでしょう。

 但馬牛の産地として知られる兵庫県但馬地方。公立八鹿病院の岩井宣健院長は、これまで四人いた小児科医が一人になるなど、診療が続けられないほどの窮状を訴えられ、「ぜひ動いてほしい。一病院でどうこうできる問題ではない」と懇願されました。公立和田山病院の野垣秀和病院長も、「放置すれば地域医療は崩壊する」といいます。地域で命を預かるお二人の痛切な叫びです。

 都市と地方で、お金のあるなしで、命の重みに格差が生まれつつあることは、世界第二の経済力をもつ国でとても恥ずかしいことです。“予算の主役を社会保障に”との日本共産党の日本改革の方針に、病院長は深くうなずいてくださいました。

 琵琶湖の東北に位置する滋賀県虎姫町。町議会は六月、「虎姫郵便局の郵便集配業務を廃止・統合せず、存続を求める意見書」を可決しました。そこには、「集配部門の廃止統合は町民サービスの低下とともに、地域経済やまちづくりにも大きく影響します」とあります。

共同の反撃を

 日本共産党が近畿各地でとりくんだ調査・懇談でも、「配達員が独り暮らしのお年寄りに声かけをしている」「一人で泣いている子どもを見つけ、保護者に連絡して喜ばれた」「道路の損壊状況を行政に伝えている」「駅から旅館に手荷物を運ぶサービスが観光客に喜ばれている」「地域との交流を重視しサッカー大会を開催している」など、安心して豊かに暮らせる地域社会づくりに、郵便局がその機能を生かして大きく貢献していることがわかりました。まさに地域共有の財産です。

 地域社会を破壊する攻撃に、地域から共同した反撃を! そして新しい政治を! その思いを胸にきょうも近畿を走ります。

 やました・よしき 46歳。活動地域=近畿〈京都をのぞく〉(滋賀、大阪、兵庫、奈良、和歌山)


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