2006年8月26日(土)「しんぶん赤旗」

改悪介護保険

10月から電動車いす取り上げ

病院にも行けない

共産党 継続利用を要求


 「介護予防」を名目に、介護保険利用者から介護ベッド・電動車いすが十月一日から取り上げられようとしています。日本共産党は各地で自治体独自の支援対策を求めるなど、継続して利用できるようにとりくんでいます。利用者の一人、K子さん(74)=北九州市在住=は二十五日までに、周囲の協力で電動車いすの継続利用が認められました。もしそうでなかったら、日常生活にたいへんな困難が及ぶところでした。(山本弘之)


 K子さんは、要支援2。腰の神経からくるしびれが左ひざをはじめ、肩から腰、足先まであります。台所に立つ間も、左腕で体を支えます。歩けるとはいっても、つえなしには外出もままなりません。

 夫のMさん(81)との二人暮らしで、夫は要介護2です。週三回ヘルパーを利用しています。

 家からいちばん近いバス停は、筑豊香月駅前。健康な人の足でも十数分かかります。K子さんはその距離でさえ、歩ききれません。

 買い物はもちろん、通院も電動車いす。市役所の出張所も電動車いすで約一時間かかります。

 ことしは八月に入ってから痛みがひどく、毎日病院に通っています。毎朝、八時すぎに自宅を出て、電動車いすで片道一時間。帰るのは十一時か十二時になります。

 K子さんが使っているのは、ハンドル式の電動車いすで、前後にかごがあります。「ふだんは四、五日分いっぺんに買うから、前も後ろも買い物でいっぱい。年寄りだからそんなに提げては二十メートルも歩けんとよ」

 午後一時十分、一番近くにあり、よく買い物するスーパーに出発。

 日よけ用に帽子、腕には日よけ手っ甲。バッグには、持病の心臓発作に備えてニトログリセリン錠、それに高血圧の薬が入っています。

 速度は時速一―六キロ。歩道に自動車が駐車していて車道を通るときもしばしば。歩道がないところでは、大型トラックが脇を走ると、思わず身がすくみます。

 K子さんは、歩道の一センチ足らずの段差もきついといいます。

 三十分かかってスーパーに到着。約一・八キロの道のりに三十分間かかりました。

 「友だちも買い物に来ていて顔を合わすことができる。ヘルパーを頼んでいるが、自分の意識がちゃんとして行動ができる間は、お買い物くらいは自分でしたい」

 帰りは、スーパーを午後二時十分に出て、自宅に着いたのは二時五十分すぎ。一回の買い物に約二時間。地方の街ではよくみられる買い物事情です。

 電動車いすを利用している人で、十月から利用できなくなるのは、全国で約十一万人、電動ベッドでは約二十七万人にのぼります。日常生活に不可欠であっても、十月からは、購入するか、全額自己負担でレンタルしなければ、利用できなくなります。昨年六月、自民、公明、民主各党がすすめた介護保険法改悪で、「軽度」(要介護1、要支援2、1)の人は利用できなくされたためです。


高くて買えぬ 市議らと相談

利用認めさせる

 K子さんは昨年六月、O(オー)脚がひどくなり、足を手術しました。腰から左足の裏までしびれて、痛みで夕方には涙がいつの間にか出てくるほど。たまらず病院に駆け込みました。

 腰からくる痛みを改善するには、左足の負担を減らす必要があると、O脚で曲がった足を手術でまっすぐに伸ばしました。いまも骨を固定する金具が入ったままです。

 十月一日からの電動車いすの貸し出しの打ち切りを知ったのは四月。ケアマネジャーから「半年はそのままだけど、その後はどうにかしないと大変よ」と。

 K子さんは、電動車いすが取り上げられたら、なんとか購入したいと考えました。新車で三十―三十五万円、中古でも十数万円します。

 「車(電動車いす)がなければ身動き取れない。買い物もできなければ、通院もできない。介護保険、医療費、ここまでしめあげられるとは…」

 しかし、とても購入できそうもないので、日本共産党市議やケアマネージャーと相談し、主治医の意見もつけて「移動の支援」として利用が認められるよう申請。二十五日までにサービス担当者会議で十月一日以降も利用が認められました。


画一的適用やめよ

共産党が政府要請、質問

 九州各県の日本共産党県委員会・地方議員団は七月に相次いで政府交渉し、厚生労働省に介護ベッド・電動車いす取り上げをやめるように求めました。

 厚生労働省老健局振興課福祉用具・住宅改修係長は、「軽度であっても日常生活範囲の移動の支援でも認められる。地域の実情に応じて裁量で決定ができ、介護保険としてサービスが利用できる」と回答(七月二十日)。日本共産党地方議員団が軽度であっても利用できる趣旨を自治体に通知し徹底するように求めたのに対し、「すでに一回通知しているが、実施前に再度通知するかは検討したい」と答え、八月十四日付で一律回収しないようにとする事務連絡を都道府県の担当者に送りました。

 北九州市議会で、「画一的な適用はやめるべきだ」と迫った原田里美市議は言います。

 「介護保険にしろ、自立支援法にしろ、苦しんでいる市民に行政は目を向けず、とにかく冷たい。十月一日の実施前に、緩和策をとるように改善させたい」


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