2006年8月22日(火)「しんぶん赤旗」

駐車禁止の画一的取り締まり

業者が悲鳴

牛乳配達ができない

客激減で洋食店廃業


 改正道路交通法(道交法)により六月一日から、違法駐車の取り締まりが強化されました。理由のいかんを問わず、運転手が短時間、車を離れただけで、「放置車両」とする機械的な取り締まりが目立ちます。「これでは仕事ができない」。中小零細業者から悲鳴があがっています。(川田博子)


 東京都渋谷区内の牛乳販売店所長(54)はいいます。

仕事にならない

 「車を止めて五分をすぎれば、『違反』とされてしまう。精神的プレッシャーがすごい。時間をあせるあまり、事故が起きないか心配です」

 社員らと軽自動車二台とバイク四台を使い、各家庭、病院やスーパー、企業への配達をこなします。約千百件のうち九割近くが家庭への配達、加工乳やヨーグルトを玄関ドア前の牛乳受け箱まで届けます。

 「『この曜日にこの商品を』というお客さんが多く、配達先は毎日、変わります」と所長さん。六月一日以降は、それまでマンション入り口前に止めていた車を離れた空き地に止めたりしています。

 「百円の牛乳一本を届けるために百円、三百円のパーキングを利用するのでは割に合わない。高齢者の家庭が多いのですが、将来、配達を断ることも考えなければならないか、と思っています」と所長さん。「国は、業者の意見を聞いて、実情にあわせて取り締まりを実施すべきです。車を使わなければ仕事にならない。許可証を発行してほしい」と訴えます。

街の活気消える

 「味など自分の技量のせいなら、努力してみようとも思う。でも売り上げが減ったのは、法律が変わったから。どうしようもない」と語るのは洋食店店主(46)=千葉県松戸市=です。取り締まり強化が客の激減を招き、七月十六日に妻(39)と九年間営んできた洋食店を閉店・廃業しました。

 「本物のおいしいものを」と始めた店だけあって、周りにファミリーレストランができてもにぎわってきました。店前の道路は交通量が少なくて道幅も広く、駐車しても支障はほとんどありませんでした。しかし取り締まりの重点道路に指定され、六月一日以降、なじみ客の足も遠のきました。車の写真を撮る監視員の姿をみつけ、店をとんで出て行った客もいました。

 生活費は年額二百万円、年約五十万円の国保税は分納しています。中三と中二の娘がおり、これから教育費がますます必要となる―悩みぬいた末、別の仕事をしようと「廃業」を決意しました。

 夫婦の思いは同じです。「本当は続けたい。駐車場のあるファミリーレストランに人が集まり、小さい店はつぶれてしまう。一律的な取り締まりで街の活気が奪われるとしたら納得できません」


駐車禁止の画一的適用

全商連や共産党が改善要求

実態に即した運用/許可証の発行

 全国商工団体連合会(全商連)は全労連、建交労、日本医労連など六団体と七月二十八日に警察庁を訪問。中小零細業者や介護、福祉関係者などが困っている実態を示し、公共性・必要性の高い業務車両への弾力的・長期的な許可証の発行、業務車両への機械的な取り締まり禁止、無料駐車場増設―などを要請しています。牛乳や米穀など各業者団体に、共同のよびかけも行っています。

「多くの苦情」

 各都道府県商連・民商も、警視庁や県警などへ積極的に改善を要求しています。「苦情や相談が数えきれないくらい寄せられ、多くの問題が出てきているのも事実。各県警の対応が統一化されていない部分も明らかとなり、警察庁へ要望をあげている」(警視庁)、「駐車規制区域の見直しを検討する」(福岡県警)などの回答を得ています。

 日本共産党は道交法改正案に賛成しました。違法駐車取り締まりの民間委託には問題がありますが、ほかの改正内容の多くが交通事故防止対策上の改善措置であったことから、総合的に勘案したものです。

 七月末の警察庁への要請に同行し、法案審議にあたってきた吉井英勝衆院議員はいいます。

 「違法駐車は緊急車両の通行妨害、交通渋滞や交通事故などの弊害をもたらし、防止対策をとるのは当然です。交通安全や駐車場対策を置き去りにし、機械的・画一的に取り締まりを強化することは、住民の生活と営業に支障と負担をもたらします。警察は画一的な取り締まりを改め、地域住民や各種団体などの意見を十分聞き、実態に即した運用でトラブル解消に努める必要があります」

医療関係除外

 小池晃参院議員は政府に、これまで規制から除外されていた在宅診療や訪問介護などに使われる車両について、引き続き駐車禁止除外や駐車許可を行うよう求める質問主意書を提出。政府は答弁書で、これまで一定の駐車を認めていた車両には、六月一日以降も「同様の措置が講じられるものと考える」との見解を示しています。

 党東京都議団は六月上旬、警視庁に対し、(1)中小零細業者、地域商店街などの配達のための短時間駐車に配慮(2)医師の往診、介護事業で使用する自動車を駐車違反除外とする―などを要望。同庁は、医療・介護事業車両への駐車許可証の交付や商店の荷さばきにともなう路上駐車への駐車規制の緩和の検討を表明しました。各都道府県議団も都道府県商連と懇談したり、県警に申し入れをしています。


 駐車違反の取り締まり強化 運転者がいない車は、直ちに「放置車両」とみなされ、摘発されます。違反車両が見つかると、(1)デジタルカメラで証拠撮影(2)日時や場所などのデータを携帯端末へ登録(3)違反ステッカー(標章)を車に張ります。この間、約五分。ステッカーが張られるまでに運転者が戻らないと、違反が成立します。反則金は一万―一万八千円(普通車)。これまでと変わったのは、(1)短時間の放置駐車も取り締まりの対象に(2)運転者が反則金を納めない場合、車の所有者に違反金(反則金と同額)を請求できる(3)取り締まりを警察から民間に委託できる―点です。


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