2006年8月19日(土)「しんぶん赤旗」

主張

放送改革

国民的な論議が求められる


 政府や財界主導の放送「改革」が、矢継ぎ早に打ち出されました。

 竹中総務相の私的な「通信・放送の在り方に関する懇談会」(竹中懇=座長は松原聡・東洋大学教授)の最終報告は与党案とすり合わせの上で、七月に発表された「経済財政運営の基本方針(骨太の方針)」に盛り込まれました。

 続いて「規制改革・民間開放推進会議」(議長は宮内義彦・オリックス会長)の中間答申が出されました。「骨太の方針」を踏まえて、まとめたとしています。

公共放送解体の恐れ

 「骨太の方針」と「規制改革会議」。これらが、放送と通信(インターネット)の融合の時代にあって放送をどう位置づけようとしているのか、とりわけ再生が望まれる公共放送NHKについてどのような構想を持っているのか見る必要があります。

 当初、竹中懇は“郵政の次は、NHK民営化”を議論するはずだったのが、小泉首相が否定的だったために出ばなをくじかれました。NHKがどうあるべきかという理念はなく、「政府与党合意に基づき、世界の状況を踏まえ、通信・放送分野の改革を推進する」としかありません。政府与党合意の具体的な施策は、受信料制度の見直しです。支払いの義務化をあげ、必要があれば罰則化も検討する、としています。

 受信料は、政治権力や大企業スポンサーに依存せず、国民が支える公共放送の財源としてのものです。それが義務化されれば、一方的に視聴者だけが支払いの責任をおしつけられることになります。公共放送の解体にもつながります。

 一方、「規制改革会議」の中間答申では、「民間にできることは民間に」の原則をNHKにも適用することをあからさまに述べています。公共放送として受信料収入で行うものは報道に限定し、芸能や音楽、スポーツ等は切り離すこと、としています。文化やスポーツに公共性はない、といわんばかりです。

 「より自由な事業展開を可能とする」(中間答申)という点では、「骨太の方針」も音楽や芸能等の制作部門を本体から分離して、関連子会社で対応すること、としています。

 「骨太の方針」にしろ、「規制改革会議」にしろ、照準は全国で地上波デジタル化が展開する二〇一一年に当てられています。デジタル化で通信と放送の乗り入れが技術的には自在になります。その時に「自由な事業展開」ができる条件を整えたいというわけです。

 「官から民へ」とばかりに、公共放送を崩して市場原理にゆだねれば、商業ベースに乗る番組ばかりがもてはやされ、多様な番組の提供ができなくなります。放送の画一化であり、情報格差を生むことにもなります。

民主主義社会の発展に

 これらに対して、NHK会長の諮問機関「デジタル時代のNHK懇談会」は六月に、「公共放送NHKに何を望むか」を発表しました。情報がますます大量に瞬時に行き交うデジタル時代にあっては、公共放送は「民主主義社会を維持・発展させるために不可欠」と位置づけ、公共放送を産業振興策のもとに置こうとする政府や財界のNHK「改革」に批判的立場を明らかにしています。

 総務省は受信料制度見直しのために放送法改定案を二〇〇七年の国会に提出し、〇八年度の導入をはかる意向です。公共放送は視聴者のものです。国民的な規模での論議を形成することが急がれます。


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