2006年8月12日(土)「しんぶん赤旗」

「南方占領地行政実施要領」とは?


 〈問い〉 インドネシア独立など、戦争には良い面もあったという議論に対して、それを否定する「南方占領地行政実施要領」という文書があると知りましたが、どんなものですか?(秋田・一読者)

 〈答え〉 日本がおこなったアジア太平洋戦争は、インドネシアなどアジアの独立に役だったという議論は、侵略戦争を合理化する人たちが以前から繰り返しているものです。

 日本政府は、戦争に際して、「新秩序」の建設や、「大東亜の解放」をさかんに宣伝しましたが、けっして、アジア諸国の独立を意図したからではありません。それをもっともよく示しているのが、開戦直前の1941年11月20日、大本営政府連絡会議がつくった「南方占領地行政実施要領」という決定です。

 これは、「方針」に「占領地ニ対シテハ差シ当リ軍政ヲ実施シ治安ノ恢復、重要国防資源ノ急速獲得及作戦軍ノ自活確保ニ資ス」として、対英米戦争遂行の大前提とされた石油やゴムなどの南方資源の獲得と、日本軍の食料等については現地調達を原則にしています。

 そして、この占領が民衆に重い負担となることを予想し、占領にあたっては、「民生ニ及ボサザルヲ得ザル重圧ハ之ヲ忍バシメ」と、民衆に反抗せず我慢するように宣伝することを説いています。

 さらに、独立運動にたいしては、「其ノ独立運動ノ如キハ過早ニ誘発セシムルコトヲ避クルモノトス」と、行き過ぎて民衆が独立運動にはしらないように念押しをしています。

 実際はどうだったでしょう。

 敗色が明らかになった日本は、かいらい政府を通じて戦争動員するためフィリピン、ビルマに「独立」を約束しますが、現在のマレーシアとインドネシアにはみせかけの「独立」さえ許さず、日本領土に編入、過酷な軍政をしきました。

 インドネシアにはいまも「ロームシャ(労務者)」「ヘイホ(兵補=日本軍の補助兵力)」という言葉があり、泰緬鉄道(タイ・ミャンマー間)建設などに連行され強制労働させられたロームシャの数だけで約30万人と推定されています。「慰安婦」にされた女性たちもいました。

 食料の強制供出で、住民に不満が高まり、反日蜂起も起きるなかで、オランダからの独立要求を無視できなくなり、日本の敗戦が明確になってから「独立準備委員会」(45年8月)を発足させます。「解放」史観の人たちは、ここを都合よく宣伝しますが、日本のポツダム宣言の受諾で、インドネシアは連合国のもとに引き渡されることになり、日本がおぜん立てした「独立」は結局、実現しませんでした。

 しかし、インドネシアにはオランダ統治時代からつづく独立を求める民族運動があり、日本の敗戦から2日後に自力で独立を宣言。その後、戻ってきたオランダとたたかい、独立を勝ち取ります。日本の意図や占領の実態を見て、決して「解放した」などとは言えません。(喜)

 〔2006・8・12(土)〕


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