2006年8月9日(水)「しんぶん赤旗」

主張

朝鮮人の遺骨返還

戦争責任 言葉でなく行動で


 戦後六十一年もたつというのに、日本が朝鮮半島から強制連行し強制労働させるなかで犠牲になった民間人の遺骨調査が遅れています。

 韓国政府は、強制連行の被害補償を行うことを決めており、約二十万人の申請を審査するうえで、遺骨情報の提供を求めています。

 ようやく、この七日には日韓両政府が合同で、遺族への遺骨返還に向けた身元確認のための、初の実地調査を福岡県田川市の納骨堂で行いました。四人の遺骨を確認しました。

 一歩を踏み出したとはいえ、強制連行のうえ強制労働においやった責任は日本にあります。

手ぬるい政府の調査

 日本政府は、昨年九月、地方自治体、宗教法人、民間企業百二十五社にたいして、遺骨がどこにありどのように保存されているか、情報提供を要請しました。地方自治体から新たに七百八十六体、宗教団体から十五体の情報が寄せられました。政府はこれら八百一体の遺骨情報を韓国政府に報告しました。しかし、すでに韓国に提供した分とあわせても千六百六十九体にしかなりません。

 これは、韓国の二十万人もの申請状況からいってあまりにも少なすぎる数字です。

 朝鮮半島から強制連行した朝鮮人の数について、朝鮮を植民地支配するための統治機関・朝鮮総督府が百五十一万人と試算できる統計資料を出していることや公安調査庁の「朝鮮人労務者渡航状況調査表」(一九五三年)など公的資料があります。しかし、政府はそうした政府関係資料さえ調べもせず、九一年、九万八百四人の強制連行朝鮮人名簿を韓国政府に渡しただけです。それ以上は「データを持ち合わせていない」と言って調査要求を拒否しています(三月一日衆院予算委第五分科会)。百万人以上といわれる強制連行の全容をあきらかにしないのでは、植民地支配にたいする政府の謝罪表明も口先だけということになります。強制連行の全容を政府の責任であきらかにする必要があります。

 強制労働させた民間企業についての調査はもっとおざなりです。

 政府は、百二十五の民間企業にしか遺骨調査の協力を求めなかった理由について、九一年の調査のさい書類に残っていた「六百強」のうち存続するものと説明します。これは通用しない議論です。「六百強」は、四六年に政府が調査した十六県分のなかの数字です。強制労働が多い北海道はふくんでいません。当時、強制労働に関係した企業は数千社ともいわれます。全国調査であれば企業数がもっと増えるのは当然です。十六県分の数ですますのは、強制労働の誤りに口をつぐむ姿勢といわれても仕方がありません。

 福岡県の麻生鉱業は七つの炭鉱で朝鮮人を強制労働させた企業です。麻生外相が社長を務めた麻生セメントの前身です。ところが、麻生外相は実態調査を要求されても「何ともお答えのしようがない」と答弁するだけです(二〇〇五年二月六日)。

 朝鮮の人々に言語を絶する苦しみを与えたことに痛みを感じない小泉政権では、日韓関係の改善・強化が期待できないことは明白です。

大本にあるのは

 政府が自発的に強制労働問題の全容をあきらかにしようとしない大本には、武力を背景に朝鮮に押し付けた日韓併合条約を正当化する誤りがあります。植民地支配を正当化するのでは、遺骨返還という人道問題も解決できません。

 政府が「謝罪」を言葉でなく行動で示すよう求めます。


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