2006年8月7日(月)「しんぶん赤旗」

主張

宮内「規制改革」

ワンマン社長の勝手がすぎる


 宮内義彦オリックス会長が議長を務める規制改革・民間開放推進会議(首相の諮問機関)が七月、二つの答申を相次いで発表しました。

 「労働契約法制及び労働時間法制の在り方に関する意見」と、「重点検討事項に関する中間答申」です。

 いずれも、国民の権利を踏みにじり、財界利権の拡大をねらった身勝手極まりない答申です。

わがままを丸出しに

 財界と米国の要求を受け、厚生労働省は解雇と残業を自由化する労働法制の大改悪をすすめようとしています。これを検討している労働政策審議会では、改悪に労働側の委員が強く反対しています。同時に経営側も残業代の割増率の限定的な引き上げにさえ反対して、今のところ、検討は宙に浮いた状態です。

 規制改革会議の「意見」は、この機をとらえて、財界・経営側の要求を改悪法案に丸ごと押し込もうと、独善的な議論を展開しています。

 例えば―。有期契約の労働者に正社員になるチャンスを与える必要はない。正社員と非正社員の均衡処遇には正社員の労働条件引き下げが必要だ。経営者が就業規則の届け出や周知を「失念」しても仕方がない。企業が採用しやすくするには一定期間は首切りを自由化する「アイデア」もある。出向・転籍命令は書面にしなくてもいい。残業代の割増率を上げたら企業は元の賃金を低く抑えることになる。残業規制の適用除外に本人同意は不要だ―。

 あげくは、執拗(しつよう)な退職の勧奨・強要の規制にすら反対し、労使紛争に国は口を出すなとのべています。

 ワンマン社長のわがまま丸出しです。目先の経営利益しか考えず、不払い残業と長時間・過密労働による健康被害、過労死・過労自殺をますます増やす反社会的な暴論です。

 こういうむちゃくちゃな経営者の存在それ自体が、規制緩和万能論の害悪を証明しています。

 「重点検討事項に関する中間答申」では、保育分野にまで市場原理を徹底する方針を打ち出しました。保育を必要とする子どもを優先する社会福祉から、利用者の支払い能力と施設側のもうけを優先する営利サービスに保育を変質させる内容です。

 日本経団連は、労働法制の改悪と保育の営利サービス化を一体のものとして「優先政策事項」に明記しています。人件費を抑え、使い勝手の良い労働力を調達するとともに、経営の都合で自在に配転するために「柔軟な保育サービス」が必要だという、骨の髄から、もうけ本位の主張です。

こんな会議は有害無益

 規制改革・民間開放推進会議の前身は一九九五年に設置された規制緩和小委員会にさかのぼります。規制緩和の最大の受益者である財界の代表が一貫して中心に座り、規制緩和・民営化の推進一色で染めてきた特異な「審議会」です。

 この「審議会」は官僚の既得権益を打破するという名目で規制緩和論を正当化していますが、実際に攻撃の標的にしてきたのは中小業者、労働者であり、立場の弱い国民です。

 とりわけ、宮内オリックス会長は、この十年来、座長・議長の座を占め続けてきました。許しがたいのは、宮内会長が財界利権の代表であるだけでなく、医療やタクシー、金融の規制緩和など、自分のつくった仕掛けで傘下グループのふところを肥やしてきたことです。

 こういう人物は議長をやるべきではないし、何より、財界利権を守り広げる道具である規制改革会議そのものが有害無益です。


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