2006年7月19日(水)「しんぶん赤旗」
18−34歳 7割 出産後も働きたい
両立阻む3つの壁
国民生活白書分析
「子どもを産んでも仕事を続けたい」と希望する女性は増えているのに、現実にはそれを阻む「壁」がいくつも存在する――。内閣府が発表した二〇〇六年版「国民生活白書」は、こう分析しています。(秋野幸子)
今年の「白書」の特徴は、「育児期」の女性のライフスタイルに焦点をあてたことです。
育児期の女性のライフコース(年齢を重ねるとともにたどる道筋)を(1)結婚・出産後も仕事を続ける「継続就業コース」(2)結婚・出産を機に退職し、子どもが大きくなったら再び働き始める「再就職コース」(3)結婚・出産を機に退職し、家事・育児などに専念し続ける「専業主婦コース」――に大別し、それぞれ立ち入って検討しています。
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十八―三十四歳の女性の理想は「再就職コース」が約四割で最も多く、「継続就業コース」が約三割。一九九二年までは最多だった「専業主婦コース」は二割に減少しました。(グラフ1)
しかし、希望どおり仕事を続けたり再就職できた女性は六割程度というのが実態です。
二十―三十四歳の既婚女性で「継続就業」を希望した人のうち、約四割は、いったん仕事を辞めてから再就職したり、そのまま専業主婦になったりと、出産・育児を機に離職しています。
白書は、その「壁」を三つあげています。
育休とりにくい
まず、育児休業がとりにくいという壁です。
出産前後の女性の就業状況では、育児休業を取得して仕事を続けた女性の割合は、七九年以前に結婚した女性では1・5%。九五年から九九年までに結婚した女性では11・0%に増えました。
出産を機に退職した女性は、同時期に28・5%から40・0%に増えています。育児休業の制度があっても利用しなかった人のうち、約半数は「職場の雰囲気や仕事の状況」を理由にあげています。
白書は「制度として整備されていても、実際に働く女性が容易に取得できる環境になければ、政策としての効果は限られたものとなってしまう」とのべています。
保育環境に問題
二つ目は、職場復帰後の保育環境が不十分という壁です。
日中、子どもを預ける保育園は、政府が「待機児童ゼロ作戦」などを打ち出してきたにもかかわらず、全国で約二万三千人(二〇〇五年)が入園待ちの状態です。
六歳以下の子を持つ共働き夫婦の育児分担の状況をみると、「ほとんど妻」が47・8%、「どちらかというと妻」が26・3%で、合わせて四分の三程度です。「どちらも同じくらい」は15・6%でした。その理由は「夫の仕事が忙しいから」が62・3%で一番多く、「妻の役割だと思うから」が26・1%でした。
厳しい労働環境
三つ目は、女性自身の労働環境の厳しさです。
出産前に仕事を辞めた理由には、トップの「自分で子育てしたかった」(53・6%)につづいて「両立の自信がなかった」(32・8%)、「就労・通勤時間の関係で子を持って働けない」(23・3%)があがっています。「いまのような働き方で子どもを育てられるのか」と出産後の負担を予想したり、実際の負担に耐えかねて離職する女性が多いと考えられると、白書は分析しています。
末子が三歳未満の子どもがいる人の働き方について希望と現状をみると、生活優先の働き方を希望する人が56・1%と半数を超えているのに対し、実際に生活を優先している人は15・6%にとどまっています。
白書は次のように記述します。「仕事か生活かどちらか一方のみを重視するのではなく、男女双方の働き方を育児など様々な家庭責任と両立可能なものとしない限り、女性が就業を継続できるようにならない」
30代労働力に変化
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日本の場合、女性の就業状況は、20代半ばと50代前後に2つのピークを持ち、30代がへこんだ「M字カーブ」になっているのが特徴です。「子育て世代」の労働力率が落ち込んでいることを示しています。
1987年と2002年を比べると、20代後半から30代前半の女性の労働力率が上がって、カーブの「くぼみ」が浅くなっています(グラフ2)。白書では、労働力率の上昇は、晩婚化や晩産化によって、独身者や結婚しても子どもを生まない女性の割合が増えたことによるもの、と指摘しています。



