2006年7月16日(日)「しんぶん赤旗」

石綿肺

職歴ない住民も被害

大阪・泉南地域調査

シンポで弁護団報告


 アスベスト(石綿)工場が集中立地していた大阪府泉南地域で、アスベスト救済新法では救済対象とならない石綿肺の被害が、職歴のない住民にもでていることが十五日、東大阪生協病院、耳原総合病院などの検診結果からわかりました。同法の欠陥を裏付けるもので、同日午後、東京都内で開かれた「アスベスト健康被害対策シンポジウム」で、大阪じん肺アスベスト弁護団が報告。「行政による疫学調査や住民にも健康管理手帳制度の創設が必要になっている」と訴えました。

 昨年十一月、大阪府泉南市、阪南市で、町工場によるアスベスト健康被害を明らかにするために行ったアスベスト検診のとりくみを報告したのは、同弁護団の芦田如子弁護士。

 元アスベスト事業所労働者や住民計九十九人が受診。このうち八十三人(元労働者六十人)が胸部レントゲン撮影を受け、五十三人の肺になんらかの異常がみつかりました。受診者の平均年齢は男性約六十三歳、女性六十五歳。

 芦田さんは、石綿肺が元労働者の38・3%と高率で発生し、アスベスト作業の職歴のない人からも20%(疑い含む)など、被害の救済対策が必要だと指摘。住民の15%に、アスベストを吸いこんでできる胸膜肥厚斑の被害もあり、無料で検診が受けられる健康管理手帳のような制度の創設も必要だと強調しました。

 五月に大阪地裁に提訴、全国初の石綿被害に関する集団国家賠償訴訟となった泉南地区のアスベスト訴訟原告団の岡田陽子代表(50)=阪南市=は「父は六十六歳で肺がんで亡くなり、母も石綿肺。町工場に隣接する社宅に住んでいて、母は私をつれて仕事にいった。私は、アスベストの職歴がないのに、昨年、石綿肺と診断された。家族や地域住民への対策を放置してきた国に怒りを感じる。絶対許すことはできない」と、目に涙を浮かべながら訴えました。

 十四日に行った政府交渉を報告した「働くもののいのちと健康を守る全国センター」の今中正夫事務局長は「アスベスト救済新法は、国の責任を認めたものでないため、救済はすきまだらけ。認定基準もきびしすぎ、被害が救済されず、多くが放置されたままになっている」と批判。全国いっせいアスベスト110番など、被害者の相談・救済にとりくんでいくことを訴えました。


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