2006年7月14日(金)「しんぶん赤旗」

宮内オリックス

2%手数料と投資の配当

規制緩和でもうけの仕組み


 集金窓口はオリックス、投資・運用は村上ファンド――。福井俊彦日本銀行総裁が、村上ファンド(前代表の村上世彰被告が証券取引法違反の罪で起訴)に投資していた問題で、オリックスと村上ファンドの一体ぶりが浮かび上がっています。福井総裁と村上ファンド側の契約書には、政府の「規制改革・民間開放推進会議」議長を務める宮内義彦オリックス会長の名前が記されていました。(「改革」利権取材班)


 「第1回アクティビスト投資事業組合第36号 組合契約書」。福井総裁の署名と印が押されています。村上ファンドに一千万円を投資していました。署名の日付は二〇〇一年三月二十七日です。署名の手前のページには、組合「第36号」の資産を運用管理するまとめ役(業務執行組合員)の名前がありました。

 ―オリックス株式会社 代表取締役 宮内義彦―

 村上ファンドへの投資は、オリックスとの契約だったのです。六月二十二日、国会で日本共産党の佐々木憲昭衆院議員にこの問題を指摘された福井総裁は「わたしが直接契約をした部分は、恐らくオリックスかなと思います」と認めました。

二重の“うまみ”

 組合「第36号」は事務所を東京・港区内においています。契約書にある住所を訪ねると該当地は「オリックス乾ビル」でした。同ビルには〇一年当時、オリックス本社が入っていました。現在も子会社四社が入っています。

 村上ファンド側が作成したファンド説明資料などによると、「第36号」のような小組合がほかにも多数ありました。小組合に出資された資金は「第1回統合アクティビスト投資事業組合」(オリックスが実質上のまとめ役)が集約。村上被告らが市場に投資していました(図参照)。まさに二人三脚の共同事業です。

 オリックス(業務執行組合員)の報酬について、契約書は募集手数料を「出資金額の2%相当額(消費税額、地方消費税を含む)」としています。契約は一口一千万円。つまり、申し込みを受けるだけで、一口につき二十万円が、出資金とは別に、オリックスの指定する銀行口座に振り込まれます。福井総裁の出資でも、二十万円がオリックスに渡っていたのです。さらにオリックス自体も、村上ファンドに投資していました。投資残高は約二百億円(三月末時点)と報じられています。

 村上ファンドの資金集めの窓口となってもうける、みずからもファンドに投資して配当を得る――。二重の“うまみ”がオリックスにはありました。

 両者の関係は村上ファンド発足当時から密接なものでした。村上被告は、一九九九年に旧通商産業省を退官し、ファンドの運営を開始。その際、村上ファンドの中核コンサルティング会社は、オリックス系会社を前身として設立されました。オリックスはさらに資金を拠出し、同社の主要株主となり、今年五月まで取締役を派遣してきました。

 両者の関係に詳しいジャーナリストは、こう見ています。

 「村上ファンドは、村上被告と宮内氏の共同事業というのが実態だと思います。オリックスから派遣された役員は、宮内氏直轄の社員です。オリックスでは、新規事業を立ち上げるときは、直轄社員が仕切ります。村上ファンドもオリックスの『ファンド部門』の役割を果たしたのではないでしょうか」

公的立場を利用

 宮内氏は、オリックスグループのトップとして経営を指揮するかたわら、政府の審議会に委員として参加。規制緩和委員会委員長や総合規制改革会議議長など、九六年から十年以上にわたり、一貫して規制緩和推進組織の中心を担っています。

 グループは規制緩和によって生まれた新ビジネスにも進出。100%子会社のオリックス・キャピタルが出資する医療ベンチャー会社「バイオマスター」、民間の指定確認検査機関「東京建築検査機構」など、多方面にわたっています。

 前出のジャーナリストは批判します。「規制緩和の旗振り役である宮内氏が規制緩和ビジネスで大もうけしている。公的立場を利用した巨大なインサイダー取引といわれてもしかたない」

図

 福井総裁と村上ファンド側の契約書 現在までに明らかになっている契約書は二つです。一九九九年九月二十日に福井総裁が署名した「MACJr.投資事業組合第3号」と、二〇〇一年三月二十七日に署名した「第1回アクティビスト投資事業組合第36号」。「MAC」を引き継ぐかたちで、「アクティビスト」の契約が行われました。


 オリックス 一九六四年創業。グループは連結会社百八十五社、関連会社八十四社にのぼります(二〇〇六年三月末現在)。本体のリース業に加えて、企業や個人向けローン、投資信託など幅広い分野に進出。総合金融企業に成長しました。宮内義彦会長は、一九七〇年に取締役、八〇年に社長、二〇〇〇年から現職。


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