2006年7月14日(金)「しんぶん赤旗」

奨学金

返すに返せぬ

「無職」「低所得」で滞納急増


 日本学生支援機構(旧日本育英会)の奨学金制度の利用者のうち、返済を三カ月以上滞納している人が二〇〇一年度から急増し、〇五年度末時点で十八万五千人に達し、滞納額(延滞債権額)も千八百六十四億円に達することがわかりました。一年以上滞納している人も〇五年度末で、十四万二千人にのぼりました。小泉「改革」のもとで若年者の非正規雇用が拡大するなか、「返すに返せない現状」(日本学生支援機構労働組合)が浮き彫りになりました。


小泉「改革」直撃

 支援機構によると、滞納理由は、「無職・失業」が急増。〇一年度調査では滞納理由の六番目で、6・5%でしたが、〇五年度調査では20・3%で二番目になっています。若年層の低賃金を反映して、「低所得」と答えた人も〇一年度の19・1%から、〇五年度には22・1%になり、滞納理由のトップです。

 また、支援機構が〇四年度に返済を猶予した金額約六百四十四億円のうち失業などにより猶予が認められたのは約85%、二〇〇〇年度から金額で二倍以上に増加しました。生活保護を理由にした返済猶予も約二・五倍に増加しました。

 支援機構労組の藤井和子中央執行委員長は「借りた人たちは故意に返さないわけではない。実際には、返すに返せないのが現状だ。就職できないばかりか、就職できたとしてもアルバイトや派遣ばかりで、給料が低い。生活に手いっぱいなのが実態だ」と語りました。

 奨学金制度は、一九九九年度から有利子枠が大幅に拡大。滞納額は、それまで年間五十億円ほどの増加でしたが、小泉政権が発足した〇一年度以降は、毎年二百億円ほどの増加額にのぼっています。

 藤井氏は「無利子枠を拡大するのが本来の筋であるにもかかわらず、有利子枠を拡大し、3%に制限されている上限金利の制限を撤廃するという動きもある。まさに教育ローン化だ。これでは教育事業ではなく金融事業に変えられてしまう」と語ります。

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解説

返せない奨学金 ローン化が影響

 経済的理由で修学困難な学生などに与えられる奨学金は、欧米諸国では「給付制」が原則ですが、日本は「貸与制」となっており、大学卒業後に返還しなければなりません。しかも、大半が奨学金に利子がつく「有利子奨学金」。その割合は、一九九八年度に24・5%でしたが、二〇〇六年度で66%にもなるなど、「教育ローン」化しています。小泉政権は、〇三年の法改悪で奨学金制度の根幹をになってきた「日本育英会」を廃止し、独立行政法人・日本学生支援機構に改組、連帯保証人を二人たてられない奨学生から「保証料」を徴収するなどの制度改悪を行いました。支援機構による奨学金の貸与人員は、〇六年度予算で百九万二千人、事業費総額で七千九百九十九億円となっています。


奨学金延滞の理由

 日本学生支援機構がまとめた奨学金延滞の理由についての状況調査は次のとおり。

 2001年度(初めて延滞3年以上4年未満となった者/有効回答数3281件/割合%) 借入金の返済32・3、低所得19・1、家族の病気療養15・6、本人の病気療養12・5、親の債務返済7・6、無職・失業6・5など。

 2005年度(延滞12カ月から24カ月の者で直近3カ月入金なし/有効回答数1816件/割合%)

 低所得22・1、無職・失業20・3、借入金の返済11・8、延滞額の増加10・3、親の債務返済8・9、家族の病気療養7・4、本人の病気療養6・5、在学・留学6・3など。


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