2006年7月5日(水)「しんぶん赤旗」

06年 政治考

小泉政治に悲鳴 「地方ぐたぐた」

自民元支部長「離党悔いなし」

北海道空知にみる


 「数字はうそをつかない。景気は上向き」(自民党・武部勤幹事長)。九月の自民党総裁選を前に、同党幹部は五年余の小泉「改革」の「成果」を自画自賛しています。格差拡大にあえぐ地方の自民党関係者はこれをどうみているのか。全国でも経済の落ち込みがもっとも深刻な地域の一つ、北海道の空知地方を訪ねました。(小泉大介)


地図

 梅雨のない北海道にもかかわらず、六月下旬の空知地方は雨音に包まれていました。同地方は、道内の米どころで、旧産炭地も集中しています。

「仕事がない」

 「小泉首相の五年間で北海道はぐたぐた(疲れ切っている)だ。とにかく仕事がない。きついよ。独裁的に地方を切り捨てる自民党を辞めて後悔はなにもない」

 砂川市(人口約二万人)で三十年以上にわたり自民党の幹部を務め、砂川支部長をしたこともあるAさんはいいました。

 同市は衆院小選挙区の北海道10区。自民党本部は昨年の総選挙で、郵政民営化に反対した現職を公認せず、北海道とは縁もゆかりもない女性候補を「刺客」として送り込みました。結果は民主党が当選。Aさんはこれをきっかけに自民党を離党しました。全国では「大勝」した自民党も、北海道での当選は十二の小選挙区のうち四選挙区にとどまりました。

 「かつて社会党王国といわれた北海道で、私たちは自民党を大きくしようと体を張ってきた。それなのにこの仕打ちだ。裏切られた」

 Aさんの批判は、小泉純一郎首相の政治手法にとどまらず、「改革」の中身にもおよびました。

 「会社の売り上げが半分に落ち込んだ。私の時代はなんとかもったとしても、子どもや孫のことを考えたら…。小泉首相には地方をどうするかのビジョンがなにもない」

 この思いは自民党の一線で活動してきた多くの党員に共通したものです。元砂川市議のBさんは、自民党を離党するかどうかは「様子見」としながらいいました。「郵政民営化では、北海道の自治体の九割以上が反対の意見を上げました。10区で公認からもれた候補はその声を代弁しただけ。道民を無視して『刺客』を送り込んだ首相のやり方は考えられない」

 地元紙は、郵政民営化で道内の集配業務廃止は、すでに明らかになった百四十一局に加え、さらに二十局が対象になっているとし、「サービス低下は避けられないだろう」(北海道新聞六月二十六日付)と報じました。

「さらに減る」

 Bさんによれば、砂川では過去には五百人以上の自民党員がいましたが、現在は百六十人程度。それでも、道内では減少幅が比較的小さい方だといいます。北海道の自民党員は、昨年、ピーク時の五分の一近くになったと報じられました。

 九月の総裁選について、Bさんは断言しました。

 「小泉『改革』の中身は一言でいって弱肉強食。総裁選の候補者たちは格差問題について対策らしきものに触れていますが、自分たちが首相と一緒になって『改革』を進めてきたことへの反省が一切ありません。誰が首相になっても同じで、このままでは自民党員はさらに減るでしょう」

「首相は庶民の視点欠落」

「自民に幻滅」党員が激減

 自民党支持基盤の崩れはどうしておきているのか。公共事業と農業という、これまで北海道の経済をけん引してきた二本柱がともに、小泉「改革」のもとで立ち行かなくなっていることがみえてきます。

米価格が暴落

 完全失業率は全国平均4・3%に対し、北海道は5・3%と1ポイントも上回っています(二〇〇五年第四・四半期)。農業戸数は二〇〇〇年から〇五年までに約一万戸、農家人口は約五万人それぞれ減少しました。米の輸入自由化、市場原理導入により、ピーク時には一万八千円を超えた米の生産者価格が、いまは一万円をわずかに上回るところまで暴落しました。農政の対象を一部の大規模の「担い手」に限定する政策も小泉内閣のもとですすめられてきました。

 「政治の役割は、地方の悲鳴を吸い取り、早急に対策を講じることにあるはずだ」

 こういうのは、自民党砂川支部長で北谷組会長の北谷文夫さん(65)。昨年の総選挙では小泉首相が送りこんだ「刺客」を受け入れ支援しましたが、「改革」路線を全面的に認めているわけではありません。

 「北海道は公共事業費削減と予定価格の切り下げのダブルパンチにみまわれています。私の会社も五年間で売り上げが半分近くに落ち込みました。首相は自立せよというが、社会のはざまで生き、自殺まで考えている人々はどうすればいいのか」

 小泉「改革」は、関西空港二期工事や一部大都市の大型事業など大手ゼネコン向け公共工事は温存、拡大する一方で、中小企業向け事業をバッサリと削りました。道も苫小牧東部開発や石狩湾新港地域開発など、破たんが明白な大規模事業は推進しつづけています。

 北谷支部長は「ここではまだやらなければならない生活インフラ整備がある。介護施設など福祉関係の事業もそうです。ダムなどはやめても、生活関連の事業は確保しなければ。地方交付税だって、一律に減らすやりかたには納得できない」と強調します。

次々6社倒産

 砂川市の東方に位置する芦別市。

 かつて炭鉱で栄えた時期、七万五千人の人口を誇りましたが、現在は一万九千人を切っています。昨年から今年五月にかけ、土木建設業四社、造林・木材業二社が相次ぎ倒産し、季節雇用を含めた百五十人が仕事を失いました。昼間でも、駅前の中心街を歩く市民はわずかです。

 「芦別ではこの三年間で、自民党員が約百三十人から七十人にまで減りました。私自身、自民党に幻滅しており、できれば辞めたい気分です」

 自民党芦別支部のある幹部はいまの思いを二時間近くにわたり吐き出しました。

 「小泉『改革』には弱者、庶民の視点が欠落しています。強い者はより強くなり、弱い者はより弱くなる、これが政治というなら本当に情けないことです。多くの自民党員が小泉首相に対し、『なにをいい気になっているんだ』と思っている。その上、消費税を上げるような事態になれば、自民党がさらに先細りになることは避けられません」

 小泉「改革」が地方の疲弊と混乱を激化させるなか、政治の根本的転換がまったなしの課題となっています。


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