2006年7月4日(火)「しんぶん赤旗」

隠されてきた住民虐殺

イラクで高まる米軍への抗議

これらは“過ち”でなく方針だ


 【カイロ=松本眞志】イラク駐留米軍が女性や老人を含む市民多数を殺害しながら、これを隠蔽(いんぺい)していたことで米国内外で批判が巻き起こっています。ベトナム戦争中の米兵による住民殺害の象徴的事例ともいえる「ソンミ事件」との類似性も指摘されています。イラクではこれらの住民虐殺事件が明らかになった当時から、イラク新政府の閣僚も含め政治家やジャーナリストたちは米占領軍の責任を強く告発してきました。

 イラク政府のラフィエ・アリサウィ外務担当国務相は「イラクの内閣は米国に対し、ハディサの被害者に対し公式の謝罪と補償を求める」と米国を強く非難。スンニ派のアドナン・アルドゥリミイ・イラク合意戦線代表は「米国は、抵抗グループがいるスンニ派地域の攻撃作戦を意図的に行った。ハディサとイスハキでの卑劣な軍事作戦に対し、イラク政府は公式に抗議すべきだ」と訴えました(汎アラブ紙アルハヤト六月四日付)。

 イラク女性解放協会の責任者ヤナル・ムハンマド氏は、中東通信社ミドル・イースト・オン・ライン六月三日付で、「占領のもとでは、安全で安心な生活は望めない。ハディサで起きたことは、占領軍あるいは武装グループの手によって、イラクのどの街でも起きていることだ。女性を含むイラクの全人民が団結して米軍の占領をやめさせる以外に問題解決の選択肢はない」と主張。

 イラク・イスラム聖職者協会のモハメド・バシャル・アルファイディ氏は、六月六日のカタールの衛星テレビ・アルジャジーラで、「イスハキとハディサで起きた事件にかんする占領軍の声明は、事件の事実をもみ消そうとする意図が明らかだった。これらは彼らが言うような、“過ち”ではなく、意図的な方針だ。米軍はイラク侵略以来、多くのウソを重ねてきた。われわれは占領軍によって行われた他の犯罪の情報をもっている」と語っています。

 イラクの著名なジャーナリスト、ニザル・アルサマラウィ氏は、六月六日に本紙のインタビューに応え、次のように米軍の犯罪を告発しています。

 「虐殺が明るみになったことは、ある意味では幸運といえるかもしれない。なぜなら、いまだに米軍によって行われた犯罪が隠されているからだ。米軍は街頭や作戦地域で無差別に銃を乱射し、意図的に多くの虐殺を行ってきた。イラクの米軍は、イラクで罪を犯しても現地政府が裁くことができない法的保護を受けている。そのことは、彼らがどのイラク人に対しても危害を加えることのできる青信号、つまり絶対的な権力を与えられていることを意味している」


 ソンミ村虐殺事件 ベトナム戦争中の一九六八年三月十六日、ベトナム中部ソンミ村で米軍が老人、女性、子どもを含む五百四人を殺害した事件。米政府は事件を覆い隠そうとし、明るみに出たのは一年半後。この事件で有罪判決を受けたのは小隊長のカリー中尉のみ(終身刑)。同中尉もその後、十年の刑に減刑され、七四年三月に仮釈放されました。


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