2006年7月4日(火)「しんぶん赤旗」

共感よんだ長尾さん

住民犠牲 “体張って市民守る”

東大阪市長選


 人口約五十一万の大都市、東大阪市で、日本共産党員で、「明るい東大阪をつくる会」の長尾淳三前市長(54)が、二日投開票の市長選で当選し、四年ぶりに民主市政の復活を果たしました。共産党員首長は全国で七人目です。「明るい会」事務所は三日早朝から「新聞を見たら『長尾氏返り咲き』の見出しが飛び込んできて、うれしかった」など祝福の電話が鳴りっぱなしでした。(平岡 賢)


地図

 「いろいろといじめられるかもしれないが、市民のくらしがかかっています。ぜひがんばってください」など期待と注文も少なくありませんでした。

 立候補したのは、長尾氏と、現市長で自民・公明推薦の松見正宣氏(63)、自民党前大阪府議の西野茂氏(62)の三人。松見氏は八年前の市長選で長尾氏に敗れましたが、前回選挙で当選し、再選を狙っていました。

“格差と貧困” 怨嗟の声

写真

(写真)当選を決めて祝福を受ける長尾淳三氏=2日、東大阪市

 選挙の争点は、大きくいって二つ。「くらしをなんとかしてほしい」という市民の声にどうこたえるか。もう一つは、一期目の長尾市政が終結の道筋をつけたものの松見氏が復活させた同和行政をどうするか、です。

 くらしの問題では、六月に入って東大阪市でも住民税、国保料の値上げ通知が届けられ、「市民税が十倍になった」「年寄りは早く死ねというのですか」と悲鳴が上がりました。市役所や地域の行政窓口には、相談に訪れた市民が列をつくりました。

 いわば小泉「構造改革」による“格差と貧困”にたいする怒りが沸騰するなかでの選挙でした。

 長尾氏は、「こんなに市民が怨嗟(えんさ)の声をあげているときに、『改革』の名による住民犠牲の競い合いは許せない」「税金のムダづかいをやめ、市民のくらしを守る市役所にします」と主張。国保料・介護保険料の負担軽減や、公園・保育所の整備、コミュニティーバスの運行などを公約しました。

写真

(写真)長尾淳三さんの当選を報じる各紙地方版

 「生活と健康を守る会」のある女性(50)は「がんばったかいがありました。市民税が大幅に高くなることで市民の怒りが頂点に達していたと思います。四年後の再選をめざしてこれからがんばります」と話します。 これにたいして松見氏は、負担増とサービス削減で市民に痛みを押し付けてきた「行財政改革」の成果を自画自賛。「改革の流れを止めてはならない」と、小泉「構造改革」路線に沿った「集中改革プラン」で、施設利用料や保育料の値上げなど、いっそうの負担増を押しつけようとしました。

 その一方、二十四億円もかける上下水道局統合庁舎の建設計画については、反対や見直しを求める多くの声を無視しました。「改革継続」をうたう松見氏にたいし、西野氏のスローガンは「本物の改革を」。“松見氏のやり方は生ぬるい”とばかりに、より大規模な市民サービス削減を公約に掲げました。

 市民の中からも、「“あれも切ったこれも切った。もっと切るけど財政が大変だから我慢を”としか語れない候補者では、投票に行く気がしない」という声が伝わってきました。

 こうした中、悪政の横行にたいして「市長として体を張って市民を守る」という長尾氏の姿勢は市民の共感をよび、一般紙も「生活重視掲げ長尾氏」(「朝日」三日付)と、その姿勢を勝因にあげました。

「解同」いいなりただす

写真

(写真)市民の握手を受ける長尾淳三さん(左)=3日、東大阪市・近鉄瓢箪山駅前

 同和施策については、松見現市長が復活させた「解同」(部落解放同盟)いいなり市政で、利権あさりや市職員採用の不正が広がり、批判が高まっていました。しかし松見氏は「差別が続く限り、施策は当然」と開き直りました。西野氏は同和問題についてほとんど沈黙を通しました。

 「私がすすめた同和終結の流れを現市長は断ち切り復活させた」「同和行政を終結させ、公正な市政を再び」ときっぱり宣言する長尾氏との対照は鮮明でした。

小泉「改革」への審判

 谷藤久・党東大阪地区委員長は「いくらがまんを重ねても明日が見えてこない、今の政治に対する市民の不満、怒り、いらだちがあらわれたと思います。同時に長尾氏が『市民から与えられた市長としての権限を全面的に発揮して、今度こそ改革をやりとげる』という立場で訴えたことが市民の共感をよび、『もう一度長尾さんにまかせてみたい』という期待の広がりを生み出しました」といいます。

 こうした長尾氏への期待の高まりに危機感をもった松見陣営は最終盤、自民党の古賀誠元幹事長も投入して、「二度と共産市政をつくってはならない」と反共攻撃に躍起になりました。しかし、市民の市政刷新を求める流れを止めることはできませんでした。

 候補者カーのアナウンサーをした女性(56)は「告示後、日に日に反応が力強くなり、市民からの激励が『入れるよ』『頼むよ』『市政を変えて』という思いを込めたものになっていくのをびんびん感じました」と話します。

 長尾新市長は、「アンケートで市民が示してくれた争点を前面にたたかったことが、この間の国政選挙での基礎力量の差をはねかえして勝利につながったと思います。この勝利は、国の小泉『構造改革』に対する東大阪市民のノーの審判でもあります。一期目の四年間で得られた貴重な教訓を生かして、公約実行に徹します」と決意を語りました。


もどる
日本共産党ホーム「しんぶん赤旗」ご利用にあたって
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 TEL 03-3403-6111  FAX 03-5474-8358 Mail info@jcp.or.jp