2006年6月30日(金)「しんぶん赤旗」

主張

国公法弾圧事件

時代錯誤の不当判決に抗議


 二十一世紀のこの時代に、まだこんな判決が存在するのか!

 判決を聞き、思わず自らの耳を疑いました。国家公務員法弾圧堀越事件で、東京地裁が出した判決です。

 国家公務員から政治活動の自由を奪った憲法違反の法律をたてに、警備公安警察の筋書きに沿って、犯罪をでっち上げる。日本共産党や国民の活動への政治弾圧の拡大をねらう政権与党におもねった、時代錯誤の、とんでもない判決です。

当たり前の活動が

 社会保険庁の職員である堀越明男さんが「しんぶん赤旗」の号外を配布したのは、休日で、職場や職務とはまったく関係ない、自宅近くでのことです。国民のだれが見ても当たり前としかいいようのない活動が、違法な捜査を続けていた警備公安警察によって国公法違反事件とされ、裁判にかけられました。なぜ罪に問われるのか、堀越さんが公訴そのものの不当性を問い、裁判で争ったのは当然です。

 国家公務員から政治的自由を奪っている国家公務員法一〇二条や人事院規則は、終戦直後の一九四八年、連合国軍総司令部(GHQ)が公務員労働者を弾圧するため、国会審議も抜きに日本に押し付けた占領期の負の遺産です。

 日本国憲法は、思想・信条、集会・結社、言論・表現の自由をすべての国民に保障しています。国家公務員に限ってそれを認めないというのは、この憲法に違反します。いまだにこんな弾圧法規があること自体、許されることではありません。

 判決は、市民ならだれでもできる政党の機関紙号外の配布という言論表現活動を、国家公務員には許されない「政治的偏向の強い典型的な行為」と決めつけています。

 判決が全面的に依拠したのは、一九七四年の最高裁判決です。国公法を「合憲」としたこの最高裁判決は、憲法学会や法曹界から強い批判を受けました。そのため、判決は出されたものの、堀越さんが起訴されるまでの三十七年間、ただの一人も国公法違反で起訴されたものはありませんでした。今回の判決は、事実上「死に体」だった判例に新たな息を吹き込む点でも重大です。

 裁判を通じて浮き彫りになったのは、堀越さんの事件をきっかけに過去の弾圧法規を蔵から出そうと、異常な執念を燃やした公安警察の姿です。多数の公安警察官を動員し、堀越さんの日常生活を長期間にわたり尾行、違法な盗撮を繰り返しました。戦前の特高警察のような野蛮な人権侵害の捜査が横行しています。

 さすがに判決も、こうした捜査について「一部違法なところがなくはないが」といわざるを得ません。しかし判決は、「そのほかはすべて適法」と認めて有罪を認めたのです。警察の違法捜査を抑止する、裁判所としての責任を投げ捨てたものというしかありません。

世界の流れに反する

 国家公務員から政治活動の自由を奪った国公法は、国際社会のルールにも反しています。表現の自由を定めた国際自由権規約一九条、「(公務員は)他の労働者と同様に、結社の自由の正常な行使に不可欠な市民的及び政治的権利を有する」としたILO(国際労働機関)一五一号条約がそれです。国家公務員の市民としての政治活動の自由は当たり前というのが世界の流れです。

 世界に通用しない不当判決は許せません。堀越さんの無罪と市民的政治的自由拡大のために、大きな世論と運動をひろげることが重要です。


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