2006年6月30日(金)「しんぶん赤旗」

ビラ配布に不当判決

国公法弾圧堀越事件 表現の自由認めず

東京地裁


 休日に自宅近くで「しんぶん赤旗」号外などのビラを配り、国家公務員法と人事院規則が禁止する政治的行為をしたとして、同法違反に問われた社会保険庁職員の堀越明男さん(52)に対し、東京地裁(毛利晴光裁判長)は二十九日、罰金十万円、執行猶予二年の有罪判決を言い渡しました。弁護団は「憲法を踏みにじる不当判決」として同日、控訴することを表明しました。東京地裁に多数つめかけた市民からは「ビラをまくだけでなぜ犯罪になるのか」と怒りの声が次々とあがりました。

 同事件の公判で弁護側は国家公務員の政治的行為を一律、全面的に禁止した国公法と人事院規則の規定は表現の自由などを保障した憲法に違反すると主張。国公法を「合憲」として憲法学会などから強い批判をあびた一九七四年の猿払事件最高裁判決が見直されるかが注目されていました。

 しかし、毛利裁判長は、猿払最高裁判決を踏襲。堀越さんのビラ配布が職務と無関係で、行政の中立性を侵害していないことを認めながら、「公務員の政治的行為の弊害は、直接、具体的なものにとどまらず、累積的、波及的効果を考えざるをえない」との考えを採用しました。その上で具体的な根拠は示さずに「公務員の政治的行為が自由に放任されると、公務員の政治的中立性が損なわれ、公務の運営に党派的偏向を招くおそれがあり、行政の中立に対する国民の信頼が損なわれかねない」と仮定に仮定を重ね、それをもって政治的行為の禁止に「利益」があると断じました。

 その一方で、「政治的行為禁止で失われる利益は、国民の一部にすぎない公務員の自由な政治活動」、「予防的規制が合理的」などとし、「公務員の表現の自由を制約することにはなるが、合理的でやむを得ない範囲にとどまる」として、政治的行為の禁止は「憲法二一条に違反しない」などとしました。表現の自由の優越的地位をふまえて同禁止規定の合憲性を審査することは、否定しました。

 尾行、張り込み、ビデオによる盗撮などの公安警察の違法捜査についても、一部を除き「適法」と容認しました。


 猿払(さるふつ)事件 北海道猿払村の郵便局員が一九六七年の総選挙で、社会党候補者の選挙用ポスターを公営掲示板に張ったほか、百八十四枚の掲示を依頼して配布したことが、国家公務員法一〇二条一項、人事院規則一四の七に違反するとして起訴された事件。一、二審は無罪としましたが、最高裁は七四年、逆転有罪を言い渡しました。


有罪判決に抗議する

市田書記局長が談話

 日本共産党の市田忠義書記局長は二十九日、国公法弾圧堀越事件の判決について、「一市民としての政治活動を有罪としたことは、きわめて時代錯誤であり、政権与党におもねるもの」と抗議する談話を発表しました。

 談話は、「公務員の市民的政治的自由を確立するために、共同して世論と運動を大きく発展させ、無罪を勝ちとるために全力をあげる」としています。


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