2006年6月29日(木)「しんぶん赤旗」

主張

労働法制改悪

“反発”招く背景に米国の要求


 週五十時間以上働く労働者が、日本(28・1%)は、ドイツ(5・3%)やフランス(5・7%)の五倍です(内閣府の二〇〇六年版「国民生活白書」)。

 「ルールなき資本主義」の一端を示す労働実態です。命と健康を破壊し、仕事と家庭の両立に困難をもたらしている長時間労働の規制が強く求められています。

ただ働きを合法化

 ところが、政府は、労働法制を変えて逆に規制を緩めようとしています。厚生労働省が、今月の労働政策審議会労働条件分科会(労使、公益の三者で構成)に提示した、「労働契約法制及び労働時間法制の在り方について」(案)です。

 厚生労働省案(素案)の柱は二つです。一つは、労働基準法改定による「自律的労働にふさわしい制度の創設」です。一定以上の年収の人(製造従事者を除く)を労働時間規制から外して残業代の適用対象外にします。長時間労働とただ働きを合法化しようとしています。

 もう一つは、「労働契約法の新設」です。会社が定める就業規則を労働条件とし、その変更について、過半数の労働者でつくる組合と合意すればできるとしています。多くの意見を無視して労働条件を切り下げることを可能にするものです。また、裁判で解雇無効となっても企業が金銭で解雇できる仕組みの検討も、盛り込んでいます。

 安定した雇用とただ働きの根絶、労働条件の改善を願う労働者にとって、素案は、到底容認できるものではありません。労働組合がこぞって反対しています。

 厚生労働省が、自らの案をもとに七月中に「中間報告」としてまとめようとしていることにたいし、労働条件分科会では、労働側はもとより、使用者側(日本経団連)からも「断固反対」との意見がだされました。

 日本経団連は、「自律的労働制度」に相当する「ホワイトカラーエグゼンプション(労働時間等規制の適用除外)」制度の導入を強く求めてきました。それが盛り込まれている素案の早期のとりまとめに反対するのは、自律的労働以外の人の「残業代の割増引き上げなどいきなり出てきた」からです。

 素案には、一カ月に三十時間程度を超えて残業した場合の割増賃金の割増率を現行の一律25%から50%への引き上げが例示されています。厚生労働省は「時間外労働の抑制策」といいますが、労働者の九割にのぼる三十時間以内の残業を“抑制しない”と宣言しているに等しいものです。こんな実効性に乏しいものまで反対するところに財界の強欲さがあらわれています。

 同時に、財界の“想定外の反発”を招いてまで、とりまとめを急いだ理由が政府側にあります。

日米で労働法制を協議

 米国から、労働法制の見直しを強く迫られているからです。小泉首相とブッシュ大統領が五年前に合意して設置した日米協議機関「日米投資イニシアティブ」の二〇〇六年報告書が六月末に出される予定です。

 これにむけた昨年末と今年六月五日の日米実務者会合では、自律的労働制度と労働契約法、派遣労働の自由化が米国側の「関心」の柱でした。今年三月には、在日米国商工会議所が厚労省に対し、七月の中間報告で「労働契約法に解雇紛争の金銭賠償制度を定める」よう要望しています。

 米国企業のもうけ口拡大には、多少の無理をしても法制化を押し通す―労働法制改悪の企みをいよいよ許すわけにはいきません。


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